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宿主のこいつを、悪く思ってはいないのだ。
「じゃーんっ!」
「…あ?」
いつも愉快そうにしているこいつが、今日はまた機嫌よく帰ってきた。
なんかまた下らねぇ幸せでも噛み締めてきたのかと思いきや、差し出されたのはでかい箱。
俺に買ってきたらしい。
「リヴァイさん、お家です」
「は?」
「おうち!いえ!いえーい!」
「落ち着け」
きゃっきゃと騒ぐ暦に半ば諦めつつ、わかる範囲で話を聞く。
――前々から欲しかった。一目惚れ。楽しそう。マイホーム。
そこまで聞いて、それ以上の理解はあきらめた。けれど察するに、どうやらこの箱は「家」で、俺を住まわせる気らしい。恐らく、この間行った玩具屋で買ったことも予測できた。
じっくりと、箱を観察する。相変わらず文字は読めない。箱にある絵を見てみる。
…うさぎやらリスやらが、家で生活してる絵だった。
…おまえ。
これは。
もしや、
(――ペットか何かと、勘違いしてるんじゃねぇだろうな…)
こいつが俺を食わないというのは、実証されつつある。俺としては、もはや世界自体が違うのでは、とまで思っている。
けれど。
だからといってペット扱いされても、良い気持ちはしない。
「開けますよー」
「……」
「とりあえずねー、家と、食器棚だけ買ってみたんですけど…これで食器の管理は困らないし」
「そうだな…」
はいどーぞ!
と、上機嫌な暦が、箱から出した家を俺に向ける。
大きくはない。元々のサイズと俺のサイズが合っていないのだろう。しかし、家、にするには少し小さく感じたが、部屋にするぐらいなら、丁度良いと思った。
半分壁がないが。
「どうですか?やっぱり小さいですかね?」
「いや…悪くない。空いてる部分を壁に向ければ、部屋にできるな」
「あ、成る程」
「あとドアの部分は壊していいか?」
「なんで!?」
そりゃあ、邪魔だからに決まっている。
しかし流石に買ったばかりのものを壊すのは抵抗があるらしい。眉を八の字にして見る姿があまりにも悲痛だったので、ドアの撤去はあきらめた。
……このままこの小さな家に隠るのは、悪い話じゃない。
暦は割と楽しみながら俺を住まわせているようだが、それもいつまで続くかわからない。いつ帰れるかわからない状態なのだから、あまり俺に関わることも、俺のために金を使うのも、よしておいた方がいいと思っている。既に買ったものは別として。
だからお互い干渉しない意味でも、この家は便利かもしれない。
そう、わかっては……いるのだが。
「……暦よ」
「はい?」
「俺はお前の、ペットじゃねぇ」
「そりゃそうですよ」
「こんなもん買っても見返りはないぞ」
「期待もしてませんが…」
「……寝るのは籠のままでいいか?」
じっと暦を見つめる。きょとりとしたアホ面をしたあとに、あっさりと、いいですよ、なんて答えが帰ってきた。
…そりゃあ、そうか。
俺には意味のある問いかけだったが、多分、こいつは他意を感じてないんだろうな。
「家は、」
「?はい」
「どこの世界にいても、狭いとこより、外がいい」
「ベランダですか?」
「違う」
「んー、おもちゃの家のベッドより、籠ってことですか?」
「……もうめんどくさくなってきた」
「えええ」
上手く言葉が浮かばない。
何を言いたかったのか、自分でもよくわからなくなってきた。こいつと話していると、ペースが乱れてしまうのだ。
そうだ。でも、まとめるのなら、
つまり。
「何かしなくたって、俺は今のままでも満足してる」
だいたい、こんな感じだろう。
ふへ、と一気に気が抜けて、ふにゃふにゃ緩んだ顔が視界に写ってきた。
そんな顔を見て、なんとなくすっきりした気分になって頷いて。
そこではたと、気づいた。
悪い気はしない。
だがいま、気づいてしまった。
…俺も大概、ほだされてんじゃねぇか……。
それすらいいと思える
後日→
- 12 -
「じゃーんっ!」
「…あ?」
いつも愉快そうにしているこいつが、今日はまた機嫌よく帰ってきた。
なんかまた下らねぇ幸せでも噛み締めてきたのかと思いきや、差し出されたのはでかい箱。
俺に買ってきたらしい。
「リヴァイさん、お家です」
「は?」
「おうち!いえ!いえーい!」
「落ち着け」
きゃっきゃと騒ぐ暦に半ば諦めつつ、わかる範囲で話を聞く。
――前々から欲しかった。一目惚れ。楽しそう。マイホーム。
そこまで聞いて、それ以上の理解はあきらめた。けれど察するに、どうやらこの箱は「家」で、俺を住まわせる気らしい。恐らく、この間行った玩具屋で買ったことも予測できた。
じっくりと、箱を観察する。相変わらず文字は読めない。箱にある絵を見てみる。
…うさぎやらリスやらが、家で生活してる絵だった。
…おまえ。
これは。
もしや、
(――ペットか何かと、勘違いしてるんじゃねぇだろうな…)
こいつが俺を食わないというのは、実証されつつある。俺としては、もはや世界自体が違うのでは、とまで思っている。
けれど。
だからといってペット扱いされても、良い気持ちはしない。
「開けますよー」
「……」
「とりあえずねー、家と、食器棚だけ買ってみたんですけど…これで食器の管理は困らないし」
「そうだな…」
はいどーぞ!
と、上機嫌な暦が、箱から出した家を俺に向ける。
大きくはない。元々のサイズと俺のサイズが合っていないのだろう。しかし、家、にするには少し小さく感じたが、部屋にするぐらいなら、丁度良いと思った。
半分壁がないが。
「どうですか?やっぱり小さいですかね?」
「いや…悪くない。空いてる部分を壁に向ければ、部屋にできるな」
「あ、成る程」
「あとドアの部分は壊していいか?」
「なんで!?」
そりゃあ、邪魔だからに決まっている。
しかし流石に買ったばかりのものを壊すのは抵抗があるらしい。眉を八の字にして見る姿があまりにも悲痛だったので、ドアの撤去はあきらめた。
……このままこの小さな家に隠るのは、悪い話じゃない。
暦は割と楽しみながら俺を住まわせているようだが、それもいつまで続くかわからない。いつ帰れるかわからない状態なのだから、あまり俺に関わることも、俺のために金を使うのも、よしておいた方がいいと思っている。既に買ったものは別として。
だからお互い干渉しない意味でも、この家は便利かもしれない。
そう、わかっては……いるのだが。
「……暦よ」
「はい?」
「俺はお前の、ペットじゃねぇ」
「そりゃそうですよ」
「こんなもん買っても見返りはないぞ」
「期待もしてませんが…」
「……寝るのは籠のままでいいか?」
じっと暦を見つめる。きょとりとしたアホ面をしたあとに、あっさりと、いいですよ、なんて答えが帰ってきた。
…そりゃあ、そうか。
俺には意味のある問いかけだったが、多分、こいつは他意を感じてないんだろうな。
「家は、」
「?はい」
「どこの世界にいても、狭いとこより、外がいい」
「ベランダですか?」
「違う」
「んー、おもちゃの家のベッドより、籠ってことですか?」
「……もうめんどくさくなってきた」
「えええ」
上手く言葉が浮かばない。
何を言いたかったのか、自分でもよくわからなくなってきた。こいつと話していると、ペースが乱れてしまうのだ。
そうだ。でも、まとめるのなら、
つまり。
「何かしなくたって、俺は今のままでも満足してる」
だいたい、こんな感じだろう。
ふへ、と一気に気が抜けて、ふにゃふにゃ緩んだ顔が視界に写ってきた。
そんな顔を見て、なんとなくすっきりした気分になって頷いて。
そこではたと、気づいた。
悪い気はしない。
だがいま、気づいてしまった。
…俺も大概、ほだされてんじゃねぇか……。
それすらいいと思える
後日→