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冬ざれ憂い
いやはや、冬に暖房をつけ、炬燵もある部屋でぬくぬくするのは、とても幸せなことである。
最近、小さな同居人ができた。
最初は小人だと思っていたその人は、リヴァイという名前の人で、ちっちゃい割に三十路で、人間を食べる巨人と戦う兵士だと言うのだから、随分数奇な巡り合わせをしたなぁと思った。勿論最初からその状況を飲み込めたわけがなく、途中からはお互い半信半疑。どっちが合ってる合ってない論争を静かに繰り広げたわけだけど、まぁ、話の終わりに関しては、ちっちゃくてもやはりリヴァイさんが大人だったと言えよう。
そんなこんなで、理由はともかくとして。リヴァイさんは、およそ世界が違うのかもしれない、なんてすっとんきょうな結論をつけて私と生活している。その結論については、小人自体が珍しくて仕方ない私には、何も言えないかなと思っている。
「リヴァイさん、みかん食べますか?」
「いらねぇ。あれを食うと服が汚れる」
「えー、じゃあ粒に分けたげますよ」
「きたねぇ、やめろ。剥くな」
「えー」
おいしいのに、と文句を垂れると、それは認める、と返ってきた。なら食べればいいのにと思ったけど、ダメなのだ。一緒に生活してみて段々と気づいてきたが、リヴァイさんはちょっぴし潔癖症気味だ。神経質、なのかもしれない。おかげで私はしょっちゅう除菌して、しょっちゅう掃除するようになってしまった。リヴァイさんと暮らすのは思ったより楽しいけれど、まるで小姑みたいだなって、時々思う。
「…もう冬か」
頭の中で悪態ついていたら、ぽつり、と落とされる言葉。
これだけ暖かくしておいて何を、と言いたくなったけれど、リヴァイさんの視線を辿れば、枯れた木。
冬を越すために飛んでいく鳥。
…なんだかなぁ。
「リヴァイさん、明日、お出かけしましょうよ」
「…あ?」
「外出たことないじゃないですか。せっかくだし、息抜きに。色々買ってあげるから、買い物しましょう」
「寒いから出たくないんじゃなかったか」
「それはそれです」
ね、ね、と急かすと、すごく嫌そうな顔をしながら、「…どうやって行くんだよ」とちょっと乗ってきた。調子に乗って、鞄に詰めて?と答えれば、すごくすごく、睨み付けられた。…半分は、本気だったんだけどなぁ。
「服とか食器とか、必要じゃないんですか」
そろそろ毎日洗濯するにも、限界が来ていることだろう。潔癖症気味だとするんなら、尚更。
どうですか、我慢するんですか、と追い討ちをかければ、またすごく嫌そうな顔をして――そのうちため息を吐き出して――、
「…連れていくなら、デザインは俺が選んでいいんだろうな?」
折れた。
勿論!と元気よく返事して、だらしなく頬を緩める。
にへにへしながらみかんの残りを食べる私に、リヴァイさんはまたため息を吐いて、武器の代わりにしている綿棒で私の手をつついた。
それ、かわいらしいだけなんですけどね。
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最近、小さな同居人ができた。
最初は小人だと思っていたその人は、リヴァイという名前の人で、ちっちゃい割に三十路で、人間を食べる巨人と戦う兵士だと言うのだから、随分数奇な巡り合わせをしたなぁと思った。勿論最初からその状況を飲み込めたわけがなく、途中からはお互い半信半疑。どっちが合ってる合ってない論争を静かに繰り広げたわけだけど、まぁ、話の終わりに関しては、ちっちゃくてもやはりリヴァイさんが大人だったと言えよう。
そんなこんなで、理由はともかくとして。リヴァイさんは、およそ世界が違うのかもしれない、なんてすっとんきょうな結論をつけて私と生活している。その結論については、小人自体が珍しくて仕方ない私には、何も言えないかなと思っている。
「リヴァイさん、みかん食べますか?」
「いらねぇ。あれを食うと服が汚れる」
「えー、じゃあ粒に分けたげますよ」
「きたねぇ、やめろ。剥くな」
「えー」
おいしいのに、と文句を垂れると、それは認める、と返ってきた。なら食べればいいのにと思ったけど、ダメなのだ。一緒に生活してみて段々と気づいてきたが、リヴァイさんはちょっぴし潔癖症気味だ。神経質、なのかもしれない。おかげで私はしょっちゅう除菌して、しょっちゅう掃除するようになってしまった。リヴァイさんと暮らすのは思ったより楽しいけれど、まるで小姑みたいだなって、時々思う。
「…もう冬か」
頭の中で悪態ついていたら、ぽつり、と落とされる言葉。
これだけ暖かくしておいて何を、と言いたくなったけれど、リヴァイさんの視線を辿れば、枯れた木。
冬を越すために飛んでいく鳥。
…なんだかなぁ。
「リヴァイさん、明日、お出かけしましょうよ」
「…あ?」
「外出たことないじゃないですか。せっかくだし、息抜きに。色々買ってあげるから、買い物しましょう」
「寒いから出たくないんじゃなかったか」
「それはそれです」
ね、ね、と急かすと、すごく嫌そうな顔をしながら、「…どうやって行くんだよ」とちょっと乗ってきた。調子に乗って、鞄に詰めて?と答えれば、すごくすごく、睨み付けられた。…半分は、本気だったんだけどなぁ。
「服とか食器とか、必要じゃないんですか」
そろそろ毎日洗濯するにも、限界が来ていることだろう。潔癖症気味だとするんなら、尚更。
どうですか、我慢するんですか、と追い討ちをかければ、またすごく嫌そうな顔をして――そのうちため息を吐き出して――、
「…連れていくなら、デザインは俺が選んでいいんだろうな?」
折れた。
勿論!と元気よく返事して、だらしなく頬を緩める。
にへにへしながらみかんの残りを食べる私に、リヴァイさんはまたため息を吐いて、武器の代わりにしている綿棒で私の手をつついた。
それ、かわいらしいだけなんですけどね。