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木枯らし責めし


「何をしているんだ、お前は」


今日はお休みだ。そして初めて、リヴァイさんを外に連れ出す日だ。
寒くなってくるとどうにもお布団が恋しい。お休みということもあって、いつも通りまったりゆったり寝ていたら、早朝にリヴァイさんに叩き起こされた。勿論、ただでは起きなかったけれど、私が支給した綿棒を床にこすりつけながら、「汚ぇ。起きろ。掃除しろ」とか言うものだから、姑かと、本気で思ったくらいだ。その綿棒へし折ってやろうかなと思うくらいには、むかっときた。ほんとに。

まぁ、そのあと本当に綿棒をへし折って二度寝したのだけど。

起きてからはぼんやりしていたけど、朝食を食べ終る頃には頭も冴えてきた。リヴァイさんは私の行動を怒っているのか、食事中はずっと睨み付けてきていた。とりあえず、新しい綿棒を渡しておいた。
そして、ご飯を片付けて、着替えて、あらかた外に出かける準備を終えて、冒頭に戻る。


「なにって、サイズ測ってるんですよ」

言いながら、手に持っていた三十センチ定規をリヴァイさんの真横に立てる。
なにせ今から服を買いに行くのだから。なんとなくでも、わかってた方がいいに決まってる。

「ちょっと、頭抑えますよ」
「潰すなよ」
「大丈夫です。でも禿げたらごめんなさい」
「……」
「ちょ、いたい!」

小指が蹴られた!地味に痛い!
小人とはいえ三十路。髪の毛の話題はデリケートだったらしい。思ったより威力があったから、今度からは気をつけることにしよう…。
抑えつけても本当に禿げさせないように、慎重に頭のてっぺんと定規のメモリを指で照らし合わせる。数値はなんともわかりにくい。

「16ですね。微妙」
「微妙とはどういう意味だ、おい」
「どうせなら15センチの方が区切り良かったなって」
「……待て。センチ?」
「ん?センチですよ。長さの単位。リヴァイさんは16センチ」

僅かに口を開きながら、リヴァイさんが私を見た。目もちょっとだけ、開かれてる気がする。


「馬鹿言え。俺は160センチだ」


……んんん?
今度は私が、ちょっとだけ目を見開いた。あ、このパターン知ってるぞ、と思いながらも、やっぱりいつかと同じように、受け流すことはできなかった。

「えええ、そんな馬鹿な。私でも160無いのに」
「でも俺は160センチだった」
「160ミリの間違いではなく?」
「なんだそれ。俺は小鳥か」
「まぁ、私には限りなくそんな感じですよ」
「……間違いじゃねぇ」

ぽつり、とリヴァイさんが呟いて考え出した。こうなってしまうと、私は蚊帳の外だ。
リヴァイさんが16センチなら、私との差は9倍くらい違うのか。そんでリヴァイさんの言う通り、リヴァイさんが160センチなら、私は15か16メートルくらいなんだろうか。でかい。それは確かに、でかい。ビルの高さくらいだよなぁと思ったら、踏んづけられちゃうなって思った。

「で、なんかわかりました?」
「いいや…ただ、お前が言った通り、本当に俺が小人なのかもしれないな…」
「ちっちゃくなっちゃった!ってやつですか」
「……あ?」
「あ、通じない。じゃあ違うや」

しかも逆だった。でっかくなっちゃった!だ。
リヴァイさんのことは、相変わらずよくわからないなぁと思いながら、今のところさして困ったこともないから、結局どうでもよくなった。
非現実を解明する力なんて私にはないし、別にリヴァイさんを不気味だとも、思わないもん。

「じゃ、リヴァイさんこっちのポケットの部分に入ってて下さいね。出ちゃだめですよ。でっかい声で話すのもだめですよ」
「わかった」
「あとこれ、一応。何かあった時のために」
「……いいのか」
「おうち帰ってきたら、また預かりますよ」

鞄の側面にあるポケットにリヴァイさんを入れながら、リヴァイさんから没収していたかっこいい装備と武器を渡す。
こんなにちっちゃいんだ。もしはぐれてしまったら、私が責任取れるわけじゃない。武器と言われると怖いけど、この人が自分で自分の身を守れるのはこれしかないのだと思うと、仕方ない気がする。


リヴァイさんがなにを考えているかなんてわからないけど、それについて私が口を挟んでもしょうがないことはわかってる。
そんなことより、今日は何を買うか考える方が、私は断然楽しいのです。
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