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何を思おうと


バタァン!!

激しい音が廊下中に響き渡る。


―――くそ…また逃げられた。

ダン!横にあった壁を思いっきり殴る。木製だったからかそれもまた良い音がして、周りは若干遠巻きだ。
ふらふらと女子トイレのドアの横に座り込む。女子の邪魔になる事は知ってっけど、ここから離れたらあいつが――苗字サンが逃げるのが、わかってっから。
引くわけには、いかない。

「………あのな、切原」
「うっせぇ」

通りかかったらしい田原は、見てられなかったんだろう。見かねて止めようとしたのがあからさまだったから、先手を打つ。

―――何でこんな事してんのか。
事の始まりは、呼び出した次の日。

告白まがい、つか…もろに告白だけどさ。
やっぱり納得いかなくて、言ってる意味もわかんなくて。もう言いたいもんぶちまけちゃったら痛いとか怖いとかもなくなったから。つうか、なんてーの?踏ん切りついた、みたいな。
だからこそ、今度は呼び出しは口答で。しかも教室。堂々と話しがある!と言っては嫌です。のやり取りを繰り返した。
そして二日前から、休み時間になったら逃げ出し追い掛け、が始まった。

「お前、女子トイレまで入られたら諦めろよ」
「無理」

田原ともこんなやり取りは一日一回はしてる気がする。
一応、授業開始のチャイムが鳴れば諦めるし、移動教室でもそれに間に合うようにしてる。苗字サンも俺の後に出てきてんのか、ギリギリの所で間に合ってる。
でも、それじゃぁ。

平行線、なんだ。


「………なぁ、田原」
「ん?」
「次、英語だよな」

追い掛けっこみたいな事が続いてからは、時間割はちゃんと暗記してる。それは田原も知ってる事だ。そしてこいつは今、不思議そうにしながらも肯定した。

俺が嫌いな教科。

夢の中で、サボった教科。


「―――次、出ないわ」
「…は?」
「ここ、動かねぇ」

田原は目を見開いた。そりゃそうだよな、こんな事のためにサボるなんて。先輩達に怒られるって、わかってんのに。自分でも馬鹿だと思う。

それでも、退かない。

「……ノート、とっとく」

ほどほどにな、と田原は言った。さんきゅーとだけ返して、俺はしっかりと座り直した。
持つべきものは頭良くて理解ある友達だな。

「そういう事だから」
「………」
「今日は、逃がさない」

多分、聞こえるってのは知ってる。邪魔にならないようにドアの近くの隅っこにいるんだとか、クラスの女子に聞いた。
持久戦っスよ、苗字サン。

「……君は、」

馬鹿だね。


小さな声が、聞こえた気がした。
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