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好きになれない(2/2)
――結局、奢らせてしまった。
それ男としてどうなの、とか思ったけど、知らない内に苗字サンが会計してた。念のため安さでファーストフード選んどいてよかった……。
もそもそとハンバーガー食って、無理に会話はしようとしなかった。
食い終わってもやっぱり最低限しか話さずに駅に向かう。それが一番良いし、それしか、出来ないと思った。今日一日ずっと。
「…ごめん」
ぽつりと漏らしたはずだけど、苗字サンは反応して俺を見てきた。何が、と目で訴えてる。
まさか反応が返ってくるとは思ってなかったから、ちょっと一瞬息が詰まる。でも、言い出した言葉は撤回出来ない。
「追い掛け回して、ごめん」
ちょっと控えるから、普通に過ごしていーぜ、と付け足した。真剣に言ったら不機嫌になりそうな気がしたから、後半だけは笑って誤魔化しといた。
苗字サンは、真顔のまま。
「……切原くんは、切原くんだ」
「え?」
「嫌いだけど、無視してごめん」
ふいと逸らされた視線。身長差と帽子で表情はわからないけど、そんだけでも十分だ。
――真っ直ぐだから、無視は嫌だったんだろうな。そうさせてたの、俺だけど。
丁度駅も見えてきて、後は横断歩道を渡るだけ。じゃあ、と手を上げれば、今日はありがとうと真顔のまま言って、苗字サンは歩いてしまった。
せめて駅に入るところまでは見送ろうと思って、その場で突っ立ったまま信号待ちしてる苗字サンの背中を見る。当然ながら、振り返ってはくれなかった。
その距離が妙にもどかしくて、お互い立ち止まってんのに離れてる事が虚しくて。その内信号が青になったら、俺と違って苗字サンは歩き出して更に離れるんだと思ったら―――なんとなく、虚しかった。
信号が青に変わる。苗字サンは歩き出して、やっぱり俺は止まったまま。
けど。
――視界の端に、嫌なもんが見えた。
「! 苗字サンッ!!」
縮まる距離。
突き飛ばす体。
―――クラクションの音が、周りの喚声が、遠い。
「――赤也ッ!」
何かの映像と、重なった気がした。
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それ男としてどうなの、とか思ったけど、知らない内に苗字サンが会計してた。念のため安さでファーストフード選んどいてよかった……。
もそもそとハンバーガー食って、無理に会話はしようとしなかった。
食い終わってもやっぱり最低限しか話さずに駅に向かう。それが一番良いし、それしか、出来ないと思った。今日一日ずっと。
「…ごめん」
ぽつりと漏らしたはずだけど、苗字サンは反応して俺を見てきた。何が、と目で訴えてる。
まさか反応が返ってくるとは思ってなかったから、ちょっと一瞬息が詰まる。でも、言い出した言葉は撤回出来ない。
「追い掛け回して、ごめん」
ちょっと控えるから、普通に過ごしていーぜ、と付け足した。真剣に言ったら不機嫌になりそうな気がしたから、後半だけは笑って誤魔化しといた。
苗字サンは、真顔のまま。
「……切原くんは、切原くんだ」
「え?」
「嫌いだけど、無視してごめん」
ふいと逸らされた視線。身長差と帽子で表情はわからないけど、そんだけでも十分だ。
――真っ直ぐだから、無視は嫌だったんだろうな。そうさせてたの、俺だけど。
丁度駅も見えてきて、後は横断歩道を渡るだけ。じゃあ、と手を上げれば、今日はありがとうと真顔のまま言って、苗字サンは歩いてしまった。
せめて駅に入るところまでは見送ろうと思って、その場で突っ立ったまま信号待ちしてる苗字サンの背中を見る。当然ながら、振り返ってはくれなかった。
その距離が妙にもどかしくて、お互い立ち止まってんのに離れてる事が虚しくて。その内信号が青になったら、俺と違って苗字サンは歩き出して更に離れるんだと思ったら―――なんとなく、虚しかった。
信号が青に変わる。苗字サンは歩き出して、やっぱり俺は止まったまま。
けど。
――視界の端に、嫌なもんが見えた。
「! 苗字サンッ!!」
縮まる距離。
突き飛ばす体。
―――クラクションの音が、周りの喚声が、遠い。
「――赤也ッ!」
何かの映像と、重なった気がした。