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たった一つの出来事が
「よ。朝は悪かったな、苗字サン!」
退屈な授業が終わって休み時間。ニカリと笑って、苗字サンの前の席に座って話しかければ、苗字サンは心底驚いたかのように目を見開いた。
朝会った相手がクラスメートでした、っつぅのはやっぱ、驚くよなぁ。
「俺、切原赤也。席離れてるから気付かなかったんだろうけど、俺、このクラスだから」
よろしくーって言って手を出したけど、苗字サンは訝しげな顔をしていた。あれ?外しちゃった?もしかしてこういうノリダメな人?
ひらひらと出した手を苗字サンの顔の前で降れば、苗字サンははっとしたように俺を見た。
「………苗字、名前……朝はすみませんでした」
座ったまま小さく頭を下げた苗字サンに、いーえ、と一言返した。
けど、そっから苗字サンは休み時間に入ってからずっと手に持っていた本に目を落として、俺の事は視界に入ってないかのよう。
―――………え。そういうタイプ、なの?
俺としては、仲良くなりたい。理由は別に大したもんじゃなくて、ただ単に気になったから。そんだけなら逆に無理に関わんなくてもいいんだけど、なんつうか……ほら、運命つか、直感的な?だって苗字サンに会ってから、そういうよくわかんない感じ多いしさ。
けど、俺がそう思ってたって、苗字サンには関係ないしわかんない事だ。さっきの授業中に受けた冷たい感じといい、今の無視……じゃないけど、なんか避けてる感じといい。あんま人間関係を好まない人なのかもしれない。もしくは人見知り激しいとか。
表情はあるみたいだから、興味とか感心とか、あるんだろうけど……
(どうすっかなぁ……)
頬を掻きながら悩む。後ろの方で男共が俺の苦戦状態をちゃかして笑ってるらしい。切原怖がられてるっての!転校生に何してんだよ!しつこいと嫌われんぞ!
うっせぇ!後方に向かって叫べば、元からふざけてた野郎共は更にどっと笑い出す。そんな俺等を見てクラス中の所々で笑いが起こる。いつも通りだけど、今はちょっと、つか絶対!邪魔しないで欲しいのが本音だ。
嫌な気させたかなぁなんてちょっと心配になって、ちらりと苗字サンを見てみれば、彼女はじっと俺を見ていた。
視線が、かち合う。
「………ごめん」
「……いえ」
なんとなくで口から出た謝罪の言葉。ふいっと逸らされる視線。
あぁもう……!
「あのさ!」
もう一度、彼女の視線が俺に向く。それだけでなんか達成した気分になって心ん中じゃガッツポーズ。
でも視線がとかそんなんじゃ話しかけた意味ない。あんまり話したくなかったけど……仕方ないか。それしか話題、ないもんな。
「それ、何読んでんの?」
それ、と指差したのは彼女が読んでる本。
俺は本なんかわかんないけど、苗字サンはずっと読んでるわけだし多分本、好きなんだと思う。そっから話題広げりゃいいかなんて安直に考えて、とりあえずで投げ掛けた。苗字サンは、渋々つか……いや、なんか嫌々みてぇ……そんな顔してる。
「洋書。多分、知らないと思う」
「うげ……洋書って、英語だろ?よく読めるよなー」
「………」
「……苗字サン?」
苗字サンは、再び口を噤んだ。今度は俺を見たまま。疑問を持って名前を呼べば、切原くんさ、ってぽつりと言葉を漏らした。
「…………勘違いしてるよ」
「え?」
ガタリ。苗字サンが席を立つ。俺は言われた言葉がよく理解出来なくて、ぽかんとした顔だったと思う。
そして苗字サンはそのまま、俺を見下ろす形で―――言う。
「私は、君が嫌いだよ」
パタン。言葉とは違って軽い音を立てて本が閉じた。苗字サンは本を片手に、教室から出てく。
授業開始まで、あと6分。
周りは俺達の会話なんて聞こえてなかったからか、ちらっと不思議そうに見ただけで、喧騒が止む事はなかった。
(――――何で、)
- 5 -
退屈な授業が終わって休み時間。ニカリと笑って、苗字サンの前の席に座って話しかければ、苗字サンは心底驚いたかのように目を見開いた。
朝会った相手がクラスメートでした、っつぅのはやっぱ、驚くよなぁ。
「俺、切原赤也。席離れてるから気付かなかったんだろうけど、俺、このクラスだから」
よろしくーって言って手を出したけど、苗字サンは訝しげな顔をしていた。あれ?外しちゃった?もしかしてこういうノリダメな人?
ひらひらと出した手を苗字サンの顔の前で降れば、苗字サンははっとしたように俺を見た。
「………苗字、名前……朝はすみませんでした」
座ったまま小さく頭を下げた苗字サンに、いーえ、と一言返した。
けど、そっから苗字サンは休み時間に入ってからずっと手に持っていた本に目を落として、俺の事は視界に入ってないかのよう。
―――………え。そういうタイプ、なの?
俺としては、仲良くなりたい。理由は別に大したもんじゃなくて、ただ単に気になったから。そんだけなら逆に無理に関わんなくてもいいんだけど、なんつうか……ほら、運命つか、直感的な?だって苗字サンに会ってから、そういうよくわかんない感じ多いしさ。
けど、俺がそう思ってたって、苗字サンには関係ないしわかんない事だ。さっきの授業中に受けた冷たい感じといい、今の無視……じゃないけど、なんか避けてる感じといい。あんま人間関係を好まない人なのかもしれない。もしくは人見知り激しいとか。
表情はあるみたいだから、興味とか感心とか、あるんだろうけど……
(どうすっかなぁ……)
頬を掻きながら悩む。後ろの方で男共が俺の苦戦状態をちゃかして笑ってるらしい。切原怖がられてるっての!転校生に何してんだよ!しつこいと嫌われんぞ!
うっせぇ!後方に向かって叫べば、元からふざけてた野郎共は更にどっと笑い出す。そんな俺等を見てクラス中の所々で笑いが起こる。いつも通りだけど、今はちょっと、つか絶対!邪魔しないで欲しいのが本音だ。
嫌な気させたかなぁなんてちょっと心配になって、ちらりと苗字サンを見てみれば、彼女はじっと俺を見ていた。
視線が、かち合う。
「………ごめん」
「……いえ」
なんとなくで口から出た謝罪の言葉。ふいっと逸らされる視線。
あぁもう……!
「あのさ!」
もう一度、彼女の視線が俺に向く。それだけでなんか達成した気分になって心ん中じゃガッツポーズ。
でも視線がとかそんなんじゃ話しかけた意味ない。あんまり話したくなかったけど……仕方ないか。それしか話題、ないもんな。
「それ、何読んでんの?」
それ、と指差したのは彼女が読んでる本。
俺は本なんかわかんないけど、苗字サンはずっと読んでるわけだし多分本、好きなんだと思う。そっから話題広げりゃいいかなんて安直に考えて、とりあえずで投げ掛けた。苗字サンは、渋々つか……いや、なんか嫌々みてぇ……そんな顔してる。
「洋書。多分、知らないと思う」
「うげ……洋書って、英語だろ?よく読めるよなー」
「………」
「……苗字サン?」
苗字サンは、再び口を噤んだ。今度は俺を見たまま。疑問を持って名前を呼べば、切原くんさ、ってぽつりと言葉を漏らした。
「…………勘違いしてるよ」
「え?」
ガタリ。苗字サンが席を立つ。俺は言われた言葉がよく理解出来なくて、ぽかんとした顔だったと思う。
そして苗字サンはそのまま、俺を見下ろす形で―――言う。
「私は、君が嫌いだよ」
パタン。言葉とは違って軽い音を立てて本が閉じた。苗字サンは本を片手に、教室から出てく。
授業開始まで、あと6分。
周りは俺達の会話なんて聞こえてなかったからか、ちらっと不思議そうに見ただけで、喧騒が止む事はなかった。
(――――何で、)