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ずっと持ってって
――実はちゃんとサッチさんの手伝いをするのは今日が初めてである。
じゃあ今まで何をしてたのか。あのね、予想以上に準備を始める時間が早い上に手際が良いんだよ。良いっていうか、良すぎるんだよもう。シュパパパパ!って感じ。ほらあの…よくテレビでやってるさ、コックさんのあれだよ。あれを倍速にした感じ。つまりはこれじゃ手伝えないわっ!ってツッコミだくなる速さ。マッハと言ってもいい。
しかし今日は、さっきまで部屋で一緒にぐだぐたしていたので、お手伝いが間に合ったわけである。私はマッハで出来ないから迷惑かなと思ったけど、マッハでやるのは最後で良いらしい。サッチさんもあれは超頑張っていたらしい。あれか!と声に出して笑うくらい頑張ってたらしい。良かった普通の人で……!
「サッチさん、野菜全部剥けましたよー」
「お。さんきゅー」
サッチさんに、何番だっけ……よく憶えてないけど、とりあえずサッチさんの隊の人達。にも、ちょこちょこ手伝って頂いた野菜を渡した。あいつら普段は手伝わねェくせに……とか言って隊員?船員?さんを、苦笑して見てた。
……サッチさんて、良いお兄さんって感じだよね。
「あづさちゃんさ、魚捌ける?」
「魚?向こうでは捌けましたけど……」
こっちではどうだろう?首を傾げれば、じゃあとりあえずやってみよっか、と包丁を渡された。サッチさんも一緒に捌くらしく、隣り合わせで並ぶ。
差し出された魚は――滅茶苦茶でかかった。
はっはっは!そんなんじゃ驚かないんだからな私は!船員さんが釣りしてるのだってチラホラ見たことあるし、宴とか今までご飯食べた時にあれちょっと違うぞこれ的なものは見てきたんだ!青い鳥だって見たんだからな!大丈夫だからな!!
「……あづさちゃん、魚嫌い?」
顔ひきつってるけど、と言われて咄嗟に口をきゅっと結ぶ。そんな私を見て何が楽しかったのかサッチさん爆笑。私全く楽しくない。何なんですかコノヤロウ。人の顔見て笑うとか良くないんですよ全く!
「魚自体は好きです」
「うんうん。何が嫌なの?」
「………死んだ魚の目」
「ぶはっ!」
またベタだなァ!とか言ってサッチさん爆笑。あああああ、もう!!笑うとか笑うとか、別にいいじゃないか!それに私嫌いな訳じゃないし!ちょーっと嫌なだけだし!!違うんだからな!
自然と自分がむすっとした顔になるのがわかったけど、敢えて止めなかった。何故ならそれでサッチさんが笑わなくなるから。……多分きっと。
「……笑い過ぎです」
「ほい!」
「みぎゃぁぁぁああああああああああああ!!!!」
ずい!と魚の位置をずらして目を向けられた。がっちり魚と私の目がアイコンタクトしちゃって、濁ったあの独特な目がこっちを向く。サッチさんマジちょっとサッチさん!良いお兄さんとか思った自分ちょっともう…!!
じりじりと後ろに下がっていく私を見て、サッチさんは更に爆笑である。この人何でこんなに爆笑してるの。ツボ浅いの?サディストなの?私サディストは受け付けてないんでちょっと遠慮しますけど!
あぁおかしい、とついには目の端の涙を拭うくらい笑いに笑いまくったサッチさんは、良い加減満足したらしい。魚をまたずらして、私とのアイコンタクトはぶっつんされた。それにほっとしていれば、サッチさんは戻っておいでと手招きしてくる。……仕方ない、戻るか。
「ごめんねー」
「……いえ別に全く」
「あはは!魚、目以外は大丈夫なんだよな?食べれる?」
「食べれますよ」
ちょっと冷たい言い方になったかなぁと、若干申し訳なさを感じたけど、サッチさんはまるで気にしてる様子はなかった。寧ろご機嫌に魚をもう一匹取り出して、捌こうとしてる。
おっつ……!
あわあわと包丁をちゃんと握れば、慌て無くていいぜーと言われた。それに大丈夫ですよーと返して私も捌き始める。
「手際良いー!」
「捌き方合ってます?」
「合ってる合ってる!」
もう料理できる奴全然いなくてさーやんなっちゃうわ。
はぁ、と大袈裟に溜め息つくサッチさんに笑いを溢せば、サッチさんもまた笑ってくれた。
「食うなら魚より肉派?」
「私は肉ですねー。魚も好きだけど」
「ふーん。肉料理なら何好き?」
「肉料理かぁ……鳥肉使ってるのとか」
「鳥…!」
えっ、とこっちを見て固まるサッチさんに、私もえっ、と固まる。
と…鳥、駄目、な、感じ……?
「…………鳥」
「……鳥、です」
「鳥………」
複雑そうな顔をしたサッチさんは、いや、何でもないって言って別の話題を出してきた。私的には全く何でもなくない。え?鳥ってそもそも食用じゃなかったり?そんな展開?え?
こっちの食材でうまいもんはねーとか言ってサッチさんはひたすら話していく。仕方なしに私も鳥肉については聞かない方向でいたら、その時の一瞬の間はないかのように準備は終った。
「サッチ、サッチ!今日飯何!?」
「魚」
「えっ、肉じゃねェの!?」
「肉は飽きたよい」
そろそろとエースさんとマルコさんが顔を出してきた。様子見らしい。そういえば肉料理が多かったなぁ、海の上にいるのに。今気付いた。
サッチさんが皿に料理を乗っけているのを横目に、私はマルコさんとエースさんの所に駆け寄った。
気になったら、追及する派です。
「あの、マルコさんエースさん」
「どした?」
「もしかして、こっちじゃ鳥って食べれない感じですか?」
「? いや、食えるけど」
「あれ…」
エースさんと顔をあわせて首を傾げた。サッチさんが固まりました、と一応事の経緯を話せば、全部聞いたエースさんは爆笑し始めた。
「え?え?」
「ぶはっ!あづさ…っだ、大丈夫…!食えっから、鳥!」
「え?はい…え!?」
「大丈夫、大丈夫…っ…俺も好きだぜ、鳥!」
「…………エース」
「ぶはっ!」
ぎゃはぎゃはと爆笑するエースさん。何故か固まった上にエースさんを牽制するマルコさん。そしてエースさんに気づいて顔を覗かせたサッチさん。
はい先生………私、ついていけてません。
「どしたの?」
「あの……さっきの、私が鳥肉が好きだって話を二人にしたら………」
「えっ!」
ばっ!と、サッチさんがマルコさんを見た。そして徐々に徐々に、しかし確実に顔が歪んで―――
「マルコ……っ!」
笑い始めました。
口に手を当て、またしてもばっと体を捻って。さながら少女マンガのよう。何ですかあなたは乙女ですか。
ええええええええええええ、と最早私はどうしようもない。話についていけないとかそういう次元じゃない気がするんだ、これ。絶対なんか違うよこれ。そうだな、例えば………クラスの男子がからかって遊んでるような……。
「………サッチ、エース」
ぷたり。二人の動きが止まった。
あぁ……流石私。やはり空気は読めてるみたいだ、すごい私。誉めてあげよう。
うんうんと一人納得して頷いている間にも、マルコさんはどんどん空気が重くなる。エースさんとサッチさんは怖がって弁解を始………どもって弁解になってなかった。
何も知らなくてごめんなさい。今の内にマルコさんにそう呟けば、マルコさんは不機嫌な顔に無理矢理笑顔を張り付けてこっちを見た。わぁ怖い。
「……悪ぃ、あづさ。ちょっと飯運んできてくれるかい?」
「はい」
ごめんなさいエースさんサッチさん。見捨てます。
ちらりと目だけで謝れば、伝わったらしい。えええ、って顔したエースさんと目が合いました。
鳥肉がどうのは、マルコさんをからかうNGワードだったわけか。
―――その後、後ろから悲鳴が聞こえました。
(ごめんマルコマジごめん不意討ちだったんだ)(だっておれ達はまずあんな話題出さねェもん!なぁ!?)(話題じゃねェ。笑ったことに対してだよい、エース)(ちょ、馬鹿エース…!マルコちょっと待ッ………マルコぉぉぉおおおおお!!??)
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じゃあ今まで何をしてたのか。あのね、予想以上に準備を始める時間が早い上に手際が良いんだよ。良いっていうか、良すぎるんだよもう。シュパパパパ!って感じ。ほらあの…よくテレビでやってるさ、コックさんのあれだよ。あれを倍速にした感じ。つまりはこれじゃ手伝えないわっ!ってツッコミだくなる速さ。マッハと言ってもいい。
しかし今日は、さっきまで部屋で一緒にぐだぐたしていたので、お手伝いが間に合ったわけである。私はマッハで出来ないから迷惑かなと思ったけど、マッハでやるのは最後で良いらしい。サッチさんもあれは超頑張っていたらしい。あれか!と声に出して笑うくらい頑張ってたらしい。良かった普通の人で……!
「サッチさん、野菜全部剥けましたよー」
「お。さんきゅー」
サッチさんに、何番だっけ……よく憶えてないけど、とりあえずサッチさんの隊の人達。にも、ちょこちょこ手伝って頂いた野菜を渡した。あいつら普段は手伝わねェくせに……とか言って隊員?船員?さんを、苦笑して見てた。
……サッチさんて、良いお兄さんって感じだよね。
「あづさちゃんさ、魚捌ける?」
「魚?向こうでは捌けましたけど……」
こっちではどうだろう?首を傾げれば、じゃあとりあえずやってみよっか、と包丁を渡された。サッチさんも一緒に捌くらしく、隣り合わせで並ぶ。
差し出された魚は――滅茶苦茶でかかった。
はっはっは!そんなんじゃ驚かないんだからな私は!船員さんが釣りしてるのだってチラホラ見たことあるし、宴とか今までご飯食べた時にあれちょっと違うぞこれ的なものは見てきたんだ!青い鳥だって見たんだからな!大丈夫だからな!!
「……あづさちゃん、魚嫌い?」
顔ひきつってるけど、と言われて咄嗟に口をきゅっと結ぶ。そんな私を見て何が楽しかったのかサッチさん爆笑。私全く楽しくない。何なんですかコノヤロウ。人の顔見て笑うとか良くないんですよ全く!
「魚自体は好きです」
「うんうん。何が嫌なの?」
「………死んだ魚の目」
「ぶはっ!」
またベタだなァ!とか言ってサッチさん爆笑。あああああ、もう!!笑うとか笑うとか、別にいいじゃないか!それに私嫌いな訳じゃないし!ちょーっと嫌なだけだし!!違うんだからな!
自然と自分がむすっとした顔になるのがわかったけど、敢えて止めなかった。何故ならそれでサッチさんが笑わなくなるから。……多分きっと。
「……笑い過ぎです」
「ほい!」
「みぎゃぁぁぁああああああああああああ!!!!」
ずい!と魚の位置をずらして目を向けられた。がっちり魚と私の目がアイコンタクトしちゃって、濁ったあの独特な目がこっちを向く。サッチさんマジちょっとサッチさん!良いお兄さんとか思った自分ちょっともう…!!
じりじりと後ろに下がっていく私を見て、サッチさんは更に爆笑である。この人何でこんなに爆笑してるの。ツボ浅いの?サディストなの?私サディストは受け付けてないんでちょっと遠慮しますけど!
あぁおかしい、とついには目の端の涙を拭うくらい笑いに笑いまくったサッチさんは、良い加減満足したらしい。魚をまたずらして、私とのアイコンタクトはぶっつんされた。それにほっとしていれば、サッチさんは戻っておいでと手招きしてくる。……仕方ない、戻るか。
「ごめんねー」
「……いえ別に全く」
「あはは!魚、目以外は大丈夫なんだよな?食べれる?」
「食べれますよ」
ちょっと冷たい言い方になったかなぁと、若干申し訳なさを感じたけど、サッチさんはまるで気にしてる様子はなかった。寧ろご機嫌に魚をもう一匹取り出して、捌こうとしてる。
おっつ……!
あわあわと包丁をちゃんと握れば、慌て無くていいぜーと言われた。それに大丈夫ですよーと返して私も捌き始める。
「手際良いー!」
「捌き方合ってます?」
「合ってる合ってる!」
もう料理できる奴全然いなくてさーやんなっちゃうわ。
はぁ、と大袈裟に溜め息つくサッチさんに笑いを溢せば、サッチさんもまた笑ってくれた。
「食うなら魚より肉派?」
「私は肉ですねー。魚も好きだけど」
「ふーん。肉料理なら何好き?」
「肉料理かぁ……鳥肉使ってるのとか」
「鳥…!」
えっ、とこっちを見て固まるサッチさんに、私もえっ、と固まる。
と…鳥、駄目、な、感じ……?
「…………鳥」
「……鳥、です」
「鳥………」
複雑そうな顔をしたサッチさんは、いや、何でもないって言って別の話題を出してきた。私的には全く何でもなくない。え?鳥ってそもそも食用じゃなかったり?そんな展開?え?
こっちの食材でうまいもんはねーとか言ってサッチさんはひたすら話していく。仕方なしに私も鳥肉については聞かない方向でいたら、その時の一瞬の間はないかのように準備は終った。
「サッチ、サッチ!今日飯何!?」
「魚」
「えっ、肉じゃねェの!?」
「肉は飽きたよい」
そろそろとエースさんとマルコさんが顔を出してきた。様子見らしい。そういえば肉料理が多かったなぁ、海の上にいるのに。今気付いた。
サッチさんが皿に料理を乗っけているのを横目に、私はマルコさんとエースさんの所に駆け寄った。
気になったら、追及する派です。
「あの、マルコさんエースさん」
「どした?」
「もしかして、こっちじゃ鳥って食べれない感じですか?」
「? いや、食えるけど」
「あれ…」
エースさんと顔をあわせて首を傾げた。サッチさんが固まりました、と一応事の経緯を話せば、全部聞いたエースさんは爆笑し始めた。
「え?え?」
「ぶはっ!あづさ…っだ、大丈夫…!食えっから、鳥!」
「え?はい…え!?」
「大丈夫、大丈夫…っ…俺も好きだぜ、鳥!」
「…………エース」
「ぶはっ!」
ぎゃはぎゃはと爆笑するエースさん。何故か固まった上にエースさんを牽制するマルコさん。そしてエースさんに気づいて顔を覗かせたサッチさん。
はい先生………私、ついていけてません。
「どしたの?」
「あの……さっきの、私が鳥肉が好きだって話を二人にしたら………」
「えっ!」
ばっ!と、サッチさんがマルコさんを見た。そして徐々に徐々に、しかし確実に顔が歪んで―――
「マルコ……っ!」
笑い始めました。
口に手を当て、またしてもばっと体を捻って。さながら少女マンガのよう。何ですかあなたは乙女ですか。
ええええええええええええ、と最早私はどうしようもない。話についていけないとかそういう次元じゃない気がするんだ、これ。絶対なんか違うよこれ。そうだな、例えば………クラスの男子がからかって遊んでるような……。
「………サッチ、エース」
ぷたり。二人の動きが止まった。
あぁ……流石私。やはり空気は読めてるみたいだ、すごい私。誉めてあげよう。
うんうんと一人納得して頷いている間にも、マルコさんはどんどん空気が重くなる。エースさんとサッチさんは怖がって弁解を始………どもって弁解になってなかった。
何も知らなくてごめんなさい。今の内にマルコさんにそう呟けば、マルコさんは不機嫌な顔に無理矢理笑顔を張り付けてこっちを見た。わぁ怖い。
「……悪ぃ、あづさ。ちょっと飯運んできてくれるかい?」
「はい」
ごめんなさいエースさんサッチさん。見捨てます。
ちらりと目だけで謝れば、伝わったらしい。えええ、って顔したエースさんと目が合いました。
鳥肉がどうのは、マルコさんをからかうNGワードだったわけか。
―――その後、後ろから悲鳴が聞こえました。
(ごめんマルコマジごめん不意討ちだったんだ)(だっておれ達はまずあんな話題出さねェもん!なぁ!?)(話題じゃねェ。笑ったことに対してだよい、エース)(ちょ、馬鹿エース…!マルコちょっと待ッ………マルコぉぉぉおおおおお!!??)