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空へ飛びにいく
ひとり、ぼっち………だ。
―――それに慣れたかというと、イエスと答えた。そう、答えられてた。なのに今の私にはその言葉は重く感じて、……事実はイエス。なのに私は、否定したがる。ノーなんだと。それは違う、ひとりじゃない。慣れてなんかいない、って……そう、どこかで訴える自分に、気付いてしまった。
逃げて、きたのに。
………マルコさんと、エースさん。サッチさんにイゾウさん、それからジョズさんにビスタおじさまにハルタさんと………見知った顔は、島で見つけた。
でもそれと同時に目に入った光景に、……逃げ出して、しまったんだと。
そんな事実にすら、私はあいつらの船から小さな、一人しか乗れないような小舟を奪ってくら気付いた。海に流れて、まずはどれだけ時間がかかっても、元いた島に戻って、あの男の子がちゃんと逃げたか確認しようって。そんな、嘘の事実に動かされて。
きゅうって、痛いくらいに胸が締め付けられた気がした。潮風がキツイのか、目も痛い。船が進むにつれ、海水とぶつかって船に一滴一滴、水が飛んでくる。
―――それが何か、なんてものもわかってるのに、受け入れようとしない。
「………せんちょ、…さん………ッ」
私を受け入れてくれた、何故か安心する其の人が頭に浮かんだ。寛容で、暖かくて、崇高なる、船員さんたちの、トップ。
その姿が頭に過って、尚更胸が痛かった。手で抑えるのじゃ、もう足りなくて。両手で胸を抑えたあとに膝を立てて縮こまった。
まるで、卵みたいだ。
(……出会わなければ、よかった…)
―――あの何もない、一面の青の中で。
人生はこんなものなんだと、私は有り得ない出来事に遭遇して、それこそ神隠しにでもあったかのように……消えて、しまうんだと。
諦めていればよかったんだ。ずっと、とじ込もっていればよかったんだ。
(あの深い青に……沈めば、よかったんだ)
痛いことが辛い。自分が泣いてるのが、辛い。
出会ったことが、辛い。
戦いを見て、怖くて逃げ出しただなんて。そんなこと、そんな、……船員の人を傷つけることを。
思う、くらいなら。
いっそ、最初から、
――バサバサ!大きな羽ばたき音が聞こえてきて、目元をごしごしと服の袖で拭いてから顔をあげた。暗いところから一転したからか、月の眩しさにすら目を瞑った。しかし、そのあとまたすぐ影が差して、月が隠れる。
「君………このあいだの…、」
高い位置から、日が眩しくならないようにと心掛けているのか、徐々に降下してきた。
宴の日を越えた朝に、出会った青い鳥。
「………わ!ちょ、ちょっと待ってっ!!」
舟にそのまま降り立とうとしたその鳥に、ぶんぶんと両手を降ってダメだとアピール。当然ながら鳥くんは意味がわからないらしく首を傾げたが、それでもほんの少し、舟から離れてくれた。
「これ、一人しか乗れないみたいなんだ。きっと君が乗ったら、沈む」
言葉伝われ、寧ろ伝える、なみに目で訴えてみたら、ホントに伝わったのか鳥くんはぶんぶんと首を縦に降った。あれ、デジャヴュ………いやそういえば、この子あの時も私の言葉理解したな。それでそん時も、首ぶんぶんしてた気がする。
ごめんね、と一言いえば、鳥くんは舟の後ろ側に回った。うん、まぁ、どっちが前でどっちが後ろかはわかんないんだけどね。
なんて思う間に、スイーと、進む舟。
「………へ?あ、足?足で押してんの!?それ!」
うおおおおい!!なんて驚き過ぎて心臓がばくばくいい始めた。これがゆったりと進めてるならまだしも、案外早い。とても足で支えて羽バッサバッサ方式とは思えない速さである。別の意味で涙でるよこれ、風痛い……!ドライアイになる!
「ねぇ、ちょ、……待…ってよっ!」
触れたら、あまりの勢いにつつかれそうな気がしたから、舟にしがみつきながらも後ろを振り返って鳥くんに訴える。しかし鳥くんはチラリと私を見ただけで、止まる気はないらしかった。
………いや確かにさ、かるーく足が触れてるだけだから沈まないよ?体重はかからないけどさ……あぁもうなんなのそのしたり顔!いやいっそドヤ顔かこれは!なんでもいいけど!!
「これ、…どこッ向かってるのッ!?」
「………」
「ねぇッ!私、あそこへは……あの船には、…戻れないのッ!!」
バサバサとうるさいくらいに鳴る羽ばたきに負けないくらい大声を出せば、ピタリと、鳥くんが止まった。
同時に、私も止まった。
なんで?とでも言いたげに、鳥くんの目が揺らいだ。真っ直ぐ私を見てるはずなのに、何故かそれは、遠くを見ているような気さえ、した。
―――動揺したのは、私も同じなのに。
「………帰って、いいのかなって……」
「……」
「いや、そう言うのもおかしいとは思うんだけどさ……私の家なわけじゃないし。居候、だからさ。…勝手に居なくなって、ふらって帰るなん、………」
こてりと、鳥くんが首を傾げた。その目はまだ、さっきよりはマシだけど……それでも、揺らいでる。
鳥くんも、鳥くんの目に写る、私も。
「………違う」
「?」
「ホントはそれが理由じゃないんだ」
戻れない。
そう自分で言ったことに驚いた。戻るつもりだったのかと。戻りたかったのかと。
そしてそれは、叶わないと。
それだけ言って黙りこんでしまった。その沈黙はまるで、イゾウさんの……ワノ国と日本の話をした時の沈黙みたいだななんて、よくわからないけど思った。冷たくも見えるし緊張はするのに、それでもどこか暖かくて、居心地の良い……決して、辛くない沈黙。
こんな話を鳥くんにしても、無駄なのにね。何を、やってるんだろうね。
「鳥くん、ごめ………ぴょッ!?」
バシャァアン!!大きな水しぶきと音。それから突然感じる冷たさに、また違う意味で動揺した。
「欲しいもんを欲しいって言って何が悪い」
帰って、こいよい
その声に、がばりと勢いよく顔を上げれば、鳥くんが舟に乗って月をバックに私を見下ろしていた。唖然としながらもなんとか頭をフル回転させれば、直前の記憶が頭の中でゆったりとフラッシュバックされる。
―――蹴り落とされ、た……?
キョロキョロと辺りを見回しても、当然ながら変化はない。私と鳥くん。一人と一匹。
決して、二人ではない。
「――………あづさ!!」
またしても反射的に音のある方を見れば、物凄い勢いの……な、なんだろう。舟?え?海上スキー並みなんだけどスピードが。え?……でもよくよく耳を澄まして、ついでに目も凝らせば、それが誰かはすぐにわかった。
もう一度、鳥くんを見る。その青に。瞳に。―――マルコさんが、重なるなんて。
揺らいでいた目は、ただ真っ直ぐしてた。
「あづさ!」
「エースさ、」
「帰んぞ!」
「へ?」
「舟に紐結んで引っ張るから、捕まってろ!」
「いやまず引き上げて下さい!」
さっきまでのシビアさはどこに。勢いに負けて、というか流されて、水の中でばしゃばしゃともがきながら、差し出されたエースさんの手を握った。――――ら。
おちた。
「みぎゃあああああ!!ちょ、落ちてどうすんですかエースさん!!」
「やばい…力入んね……」
「何しに来たんですか貴方っ!」
うわあもう!なんてやけくそになりながら、とりあえずエースさんの脇の下に腕をいれて支える。ただし問題なのが、その状態ならなんとか沈まないけど、舟にあがれない。上がれたとしても、今私が空いた片腕で持ってるのは、私が乗ってた舟だ。つまりは一人用。二人乗り不可。
どうしようか、と鳥くんに視線を向けたところで、鳥くんもわたわたばさばさと忙しなく慌ててるだけである。助けにならない。それから、流石にこの姿にはマルコさんは重な、……らないな……多分。
夜の冷たい水に浸かりながらうんうん唸っていれば、また新たな轟音と水しぶき。そして、顔を見せたその人は、
「………何やってんの、お前ら…」
―――優しい笑顔の、リーゼントさんでした。
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―――それに慣れたかというと、イエスと答えた。そう、答えられてた。なのに今の私にはその言葉は重く感じて、……事実はイエス。なのに私は、否定したがる。ノーなんだと。それは違う、ひとりじゃない。慣れてなんかいない、って……そう、どこかで訴える自分に、気付いてしまった。
逃げて、きたのに。
………マルコさんと、エースさん。サッチさんにイゾウさん、それからジョズさんにビスタおじさまにハルタさんと………見知った顔は、島で見つけた。
でもそれと同時に目に入った光景に、……逃げ出して、しまったんだと。
そんな事実にすら、私はあいつらの船から小さな、一人しか乗れないような小舟を奪ってくら気付いた。海に流れて、まずはどれだけ時間がかかっても、元いた島に戻って、あの男の子がちゃんと逃げたか確認しようって。そんな、嘘の事実に動かされて。
きゅうって、痛いくらいに胸が締め付けられた気がした。潮風がキツイのか、目も痛い。船が進むにつれ、海水とぶつかって船に一滴一滴、水が飛んでくる。
―――それが何か、なんてものもわかってるのに、受け入れようとしない。
「………せんちょ、…さん………ッ」
私を受け入れてくれた、何故か安心する其の人が頭に浮かんだ。寛容で、暖かくて、崇高なる、船員さんたちの、トップ。
その姿が頭に過って、尚更胸が痛かった。手で抑えるのじゃ、もう足りなくて。両手で胸を抑えたあとに膝を立てて縮こまった。
まるで、卵みたいだ。
(……出会わなければ、よかった…)
―――あの何もない、一面の青の中で。
人生はこんなものなんだと、私は有り得ない出来事に遭遇して、それこそ神隠しにでもあったかのように……消えて、しまうんだと。
諦めていればよかったんだ。ずっと、とじ込もっていればよかったんだ。
(あの深い青に……沈めば、よかったんだ)
痛いことが辛い。自分が泣いてるのが、辛い。
出会ったことが、辛い。
戦いを見て、怖くて逃げ出しただなんて。そんなこと、そんな、……船員の人を傷つけることを。
思う、くらいなら。
いっそ、最初から、
――バサバサ!大きな羽ばたき音が聞こえてきて、目元をごしごしと服の袖で拭いてから顔をあげた。暗いところから一転したからか、月の眩しさにすら目を瞑った。しかし、そのあとまたすぐ影が差して、月が隠れる。
「君………このあいだの…、」
高い位置から、日が眩しくならないようにと心掛けているのか、徐々に降下してきた。
宴の日を越えた朝に、出会った青い鳥。
「………わ!ちょ、ちょっと待ってっ!!」
舟にそのまま降り立とうとしたその鳥に、ぶんぶんと両手を降ってダメだとアピール。当然ながら鳥くんは意味がわからないらしく首を傾げたが、それでもほんの少し、舟から離れてくれた。
「これ、一人しか乗れないみたいなんだ。きっと君が乗ったら、沈む」
言葉伝われ、寧ろ伝える、なみに目で訴えてみたら、ホントに伝わったのか鳥くんはぶんぶんと首を縦に降った。あれ、デジャヴュ………いやそういえば、この子あの時も私の言葉理解したな。それでそん時も、首ぶんぶんしてた気がする。
ごめんね、と一言いえば、鳥くんは舟の後ろ側に回った。うん、まぁ、どっちが前でどっちが後ろかはわかんないんだけどね。
なんて思う間に、スイーと、進む舟。
「………へ?あ、足?足で押してんの!?それ!」
うおおおおい!!なんて驚き過ぎて心臓がばくばくいい始めた。これがゆったりと進めてるならまだしも、案外早い。とても足で支えて羽バッサバッサ方式とは思えない速さである。別の意味で涙でるよこれ、風痛い……!ドライアイになる!
「ねぇ、ちょ、……待…ってよっ!」
触れたら、あまりの勢いにつつかれそうな気がしたから、舟にしがみつきながらも後ろを振り返って鳥くんに訴える。しかし鳥くんはチラリと私を見ただけで、止まる気はないらしかった。
………いや確かにさ、かるーく足が触れてるだけだから沈まないよ?体重はかからないけどさ……あぁもうなんなのそのしたり顔!いやいっそドヤ顔かこれは!なんでもいいけど!!
「これ、…どこッ向かってるのッ!?」
「………」
「ねぇッ!私、あそこへは……あの船には、…戻れないのッ!!」
バサバサとうるさいくらいに鳴る羽ばたきに負けないくらい大声を出せば、ピタリと、鳥くんが止まった。
同時に、私も止まった。
なんで?とでも言いたげに、鳥くんの目が揺らいだ。真っ直ぐ私を見てるはずなのに、何故かそれは、遠くを見ているような気さえ、した。
―――動揺したのは、私も同じなのに。
「………帰って、いいのかなって……」
「……」
「いや、そう言うのもおかしいとは思うんだけどさ……私の家なわけじゃないし。居候、だからさ。…勝手に居なくなって、ふらって帰るなん、………」
こてりと、鳥くんが首を傾げた。その目はまだ、さっきよりはマシだけど……それでも、揺らいでる。
鳥くんも、鳥くんの目に写る、私も。
「………違う」
「?」
「ホントはそれが理由じゃないんだ」
戻れない。
そう自分で言ったことに驚いた。戻るつもりだったのかと。戻りたかったのかと。
そしてそれは、叶わないと。
それだけ言って黙りこんでしまった。その沈黙はまるで、イゾウさんの……ワノ国と日本の話をした時の沈黙みたいだななんて、よくわからないけど思った。冷たくも見えるし緊張はするのに、それでもどこか暖かくて、居心地の良い……決して、辛くない沈黙。
こんな話を鳥くんにしても、無駄なのにね。何を、やってるんだろうね。
「鳥くん、ごめ………ぴょッ!?」
バシャァアン!!大きな水しぶきと音。それから突然感じる冷たさに、また違う意味で動揺した。
「欲しいもんを欲しいって言って何が悪い」
帰って、こいよい
その声に、がばりと勢いよく顔を上げれば、鳥くんが舟に乗って月をバックに私を見下ろしていた。唖然としながらもなんとか頭をフル回転させれば、直前の記憶が頭の中でゆったりとフラッシュバックされる。
―――蹴り落とされ、た……?
キョロキョロと辺りを見回しても、当然ながら変化はない。私と鳥くん。一人と一匹。
決して、二人ではない。
「――………あづさ!!」
またしても反射的に音のある方を見れば、物凄い勢いの……な、なんだろう。舟?え?海上スキー並みなんだけどスピードが。え?……でもよくよく耳を澄まして、ついでに目も凝らせば、それが誰かはすぐにわかった。
もう一度、鳥くんを見る。その青に。瞳に。―――マルコさんが、重なるなんて。
揺らいでいた目は、ただ真っ直ぐしてた。
「あづさ!」
「エースさ、」
「帰んぞ!」
「へ?」
「舟に紐結んで引っ張るから、捕まってろ!」
「いやまず引き上げて下さい!」
さっきまでのシビアさはどこに。勢いに負けて、というか流されて、水の中でばしゃばしゃともがきながら、差し出されたエースさんの手を握った。――――ら。
おちた。
「みぎゃあああああ!!ちょ、落ちてどうすんですかエースさん!!」
「やばい…力入んね……」
「何しに来たんですか貴方っ!」
うわあもう!なんてやけくそになりながら、とりあえずエースさんの脇の下に腕をいれて支える。ただし問題なのが、その状態ならなんとか沈まないけど、舟にあがれない。上がれたとしても、今私が空いた片腕で持ってるのは、私が乗ってた舟だ。つまりは一人用。二人乗り不可。
どうしようか、と鳥くんに視線を向けたところで、鳥くんもわたわたばさばさと忙しなく慌ててるだけである。助けにならない。それから、流石にこの姿にはマルコさんは重な、……らないな……多分。
夜の冷たい水に浸かりながらうんうん唸っていれば、また新たな轟音と水しぶき。そして、顔を見せたその人は、
「………何やってんの、お前ら…」
―――優しい笑顔の、リーゼントさんでした。