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手放しで与えられたなら(2/2)


「まず、さ」
「はい」
「海賊って、わかる?」
「私の世界では昔存在してましたね。今もいるらしいけど……よくわかんないです。物盗ったり、宝探したり、みたいな?」
「お。うん、まぁ、そんな感じ」

説明が若干省かれたからか、エースさんの顔が明るくなった。まずは価値観というか、世界観からだよね。

「こっちじゃ、海賊なんてざらにいる」
「ほう」
「戦いもするし、海軍にも追われるし。一応犯罪者、になる」
「海軍?政府とか?」
「そう。政府はわかんの?」
「はい。海軍も、一応」

まぁ詳細なんて知らないけど。
海賊なんていっぱいいて、戦いもあるし、物盗ったりもするのかな?政府とかにも追われて、それが海賊。
うん。読めてきたぞ。

「一個、聞いても?」
「おう」
「戦うって、どこまで?」

エースさんの表情が歪む。
どこまで、は勿論、どこまで戦えば勝ちか、だ。つまりは降参とか、ルールがあるのか。ただの喧嘩のレベルなのか。
そして―――どこまで、傷つけるのか。
引く気はないんだと、視線は一切逸らさずにエースさんを見る。ぎゅ、と口を結んだかと思えば、彼も負けじと見てきた。

「……意味なく、相手を傷つけたりは、しない」
「………」
「けど。……場合によっちゃ、殺す時も、ある」

海軍とか、海賊なら特に。エースさんはそう言った。ハッキリと。
殺すなんて、そんな言葉を使ったのは彼の覚悟の現れだろうか。だとしたらやっぱりそれなりの誇りというか、何かがあるんだろうな。
譲れない何か、が。

「戦闘狂とか、快楽的殺人者ではないんですね?」
「ん……戦闘狂は、あっかも。強い奴と戦うのは好きだし。けど、快楽的殺人者ではねェよ」

成る程。そんだけわかりゃ十分だ。
快楽殺人者なんてものだったら、即逃げる。元からそんな人達ではないとは思うけど、念のための保険。うむうむと脳内で自己完結していたけれど、エースさんとナースさんはこっちを見たままだ。
え。なんか言わなきゃなんない感じなのこれ?

「………えと」
「………」
「この空気は多分、何かしら嫌な展開をかもし出している気がしますが……別に海賊だからどうのとか、いいです」
「………命が危なくなっても?」
「知らない土地……海か。何もわからず、干からびて死ぬよりかはよかったんじゃないかと。まぁ、一期一会とか言うし」
「イチゴイチエ?」
「あ、私の国の古い言葉です」

なんとかなるでしょ、とへらりと笑った。エースさんはまたぽかんとした顔をしてから、笑った。ナースさんも、声には出さなかったけど、綺麗に笑う。

―――本当は、聞きたい事がもう一つあった。

だけど、これを聞くべき相手は彼じゃない。


「それでは改めまして」

二人共よろしくお願いします。今度は私が頭を下げた。ええ、よろしく、と、おう!という言葉がきこえてきた。
しかしエースさんはあ!と思い出したように声をあげて、慌て始めた。

「そうだ俺、お前を連れてくるように言われてたんだった!」
「へ?」
「宴!宴だよ!早くしねェとサッチに怒られちまう!」
「はい?」

意味がわからなく聞き返してもエースさんは無視。がしっと腕を引っ付かんで、走り出す。
……………あれこれって…デジャヴュ、みたいな…………

「みぎゃあああああああ!!!」
「何その鳴き声!?」

エースさんは突っ込んでくれるらしい。嬉しくない。
しかし、お二方と違って宙に浮かばないのだけは好感が持てそうだ。足は回らないけど。


―――そいや、ナースさんとエースさんじゃ、呼び名が似てる。

名前、聞かなくちゃ。

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