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合わせた貝のように



ぽかーんとした間抜け面でつっ立っていれば、視線の先の人に不思議そうな顔をされたので慌てて顔を振る。第一印象がどうのって考えたばっかじゃないか自分!
そろそろと近付いていけば、えっと……三人だな。三人いる内の一人がとてもニコやかだった。あとの二人は未だに不思議そうに見てきている。やっちまった。

「お嬢さん、遠慮せずお座り」
「あ、はい」

一人だけニコやかだったおじさんに言われて、空いてるスペースに正座で座りこむ。右側に着物の方。左側にニコやかおじさん。いや、おじさまのほうがしっくり来るな。おじさまにしよう。そして私の正面にはこれまた図体の大きい方。この船大きい人多いよね。いや、この人は船長さんほどじゃないけどね。おじさまだって私からしたら大きい大きい。

「五番隊隊長。ビスタだ」
「三番隊隊長、ジョズ。よろしくな」
「十六番隊隊長。イゾウ」

立て続けに紹介され一人一人と握手。見た目の割に良い方々だ。やはり船長さん素晴らしい。これは感謝どころの話じゃないぞ。
そして隊長さんであるハルタさんに連れて来られた事と、この人達の見た目を考えてやはり隊長さんらしい。器がでかいよ隊長さん。いや、というか思ったんだけど隊長って何人いるの?何番隊あるの?

「崖っぷち女子高生、笹谷あづさです」
「崖っぷち?」

後ろから声がしたのにびっくりして振り向けば、ケーキが乗ったお皿を持ったハルタさんがいた。
ハルタさんもしかしてそのケーキはあれですか、私がさっきガン見してお腹ぐうぐう言わせてたあのでっかいケーキの欠片ですか。何それ羨ましい。
あまりにもケーキを見ていたからか、ハルタさんがはい、って言ってケーキをくれた。そしてそのまま私の左隣。えと…ビスタ、おじさま!の隣に座る。

「崖っぷちって、何が?」
「あ、意味はないです。会う人会う人肩書きがあるので、私も何か言おうかと思って」
「ジョシコウセイ、というのは?」
「私の世界には教育機関があって、えっと……女子の、生徒、かな」

まさか女子高生を知らないなんて……いや薄々そうじゃないかとは思ったよ?異世界ですから。異文化ですから。しかもこの海賊船に乗っている方々を見たらですね、とてもじゃないけど学校とか義務教育があるとは思えないというかなんというかげふんげふん。
彼等はそれでも私の世界、というものに興味が出たらしい。けど上手く答えられる自信はなかったので、とりあえずケーキ食べといた。私話す気ないですよアピール。え……でもこのケーキ、上手いぞ………!

「そういやァ、ハルタ。あいつらは?」
「あぁ。マルコは報告書回収だからサッチに任せたら、サッチは料理作らなきゃでエースに任せちゃって、でもエースは報告書まだだからマルコに追いかけ回され、みたいな」
「ぶは!何やってんだかねィ」
「マルコが客人をほっとくのは珍しいと思ったが……」

そういう事か、と三人が笑った。なんとも和やかな空気だ。
そして私はケーキを食べながらイゾウさんガン見である。ぶは、って。あなたそんな綺麗なお顔をして豪快にお笑いになりますね。ギャップが素晴らしい。

「俺の顔に何かついてるかィ?」
「男の人ですよね?」
「え」

目が合って話しかけられたので思っている事を正直に言った。周りの方爆笑。
え?まさか女だった?二者択一の50%を私は外したのか!

「え。いやまさかこんな綺麗な人が女な訳ないでしょう?」
「逆じゃないのかね?」
「逆違う。合ってます」
「綺麗だとよ、イゾウ」
「………まァ、いいんだけど…さ」

男で合ってるよ、と困った顔して言われた。よし私合ってた素晴らしい。
ビスタさんとハルタさんは何が楽しかったのか爆笑である。特にハルタさん。ジョズさんも困った顔しながら、でもどっか楽しそうに見守ってる。ここのグループの人達は、愉快だね。

「あづさちゃん、お酒強い?弱いのもあるから探そうか?」
「え。いやまず未成ね、………私の世界の法律じゃ二十歳にならないと呑んじゃいけないので」
「え?あづさちゃん何歳?」

一通り笑い終わったハルタさんにお酒の話題が出たので、出来るだけわかりやすく法律をちょろっと。何歳って言われてもあの、……何歳に見えてたんですか。

「18」
「18!?え、エースって何歳だっけ?」
「20くらいだったな」
「エースより年下!?」

びっくりされてびっくりする。そうか、エースさんは二十歳か。年上さんだったよ。
年下の女の子に助けられやがって、とイゾウさんが大爆笑。いやだからギャップが………他の人も笑い過ぎじゃないのか。エースさんが可哀想過ぎる。がんばれ。

18、なんです。
崖っぷち女子高生。意味、わかるでしょ?

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