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線路を辿った先(1/2)


午前中は学校に電話だけして、そこから全部寝た。よっちゃんには学校休むねと昨日のうちからメールしてたから大丈夫なはず。寝てるくらいなら学校行けよって話だけど、午後から早退して制服のまま授業参観はきつかったから休んだ。………そろそろ単位がヤバい気がしてきた。

と、いうわけで。


「さぁ帰りますよみづめ君!」
「……お姉ちゃん、僕まだ帰る準備してないから待ってて貰っていい?」

午後から参加した授業参観を無事に終え、相変わらずのニコニコ天使のようで超良い人モードなみづめ君に手を振る。みづめ君は笑顔でかわいらしく且つ爽やかに言葉を返したが、そして周りも「きゃ!」みたいなことになってるけど私からしたら全くよくない。明らかにみづめ君は不機嫌MAXです。多分今の内心は、「何でこのまだ人がたくさんいる状況でのうのうと、しかもバカ丸出しで話しかけてくんの何なの姉さん」………だと思う。

言っておくけど私はこれでも配慮したつもりだ。服装もジャージで行こうとしたのをなんとか抑えて、清潔感有りそうな服チョイスしたし。さっきの言葉もいつもよりはおしとやかに言った、………つもり。
それでもダメだとか言うなら、それは最早根本的に私の性格と雰囲気が合わないか、もしくはみづめ君と違って外面モードなんかないからだと思う。そればっかりは諦めて欲しい。

「ごめんね待たせて!帰ろっか」
「はーい」

どっちが子供かわからないような会話をしながら、みづめ君が先生やクラスメイトに手を振るのに合わせて私も頭を下げる。先生が笑顔で頭を下げ返してくれた。
校舎を出て暫く歩いて。そこまで来てやっとみづめ君の雰囲気がいつものようなツンツン状態になったので、私もそれに気を緩ませておしとやかの「お」の字もないくらい雑に歩く。隣からの視線が痛い。

「……姉さん、スーパーじゃなくてあっちのデパート行こうよ。確認したらあっちの方が安かったし」
「え、ホント?んじゃそうしようかなぁ」

―――隠し事は、無理に追及しない。
さっきから学校を離れるごとにみづめ君の空気がそわそわしてる気がする。今の別れ道はピーク。
きっとこの先に何かあるんだろうし、だからこそ授業参観も、それから言葉にも態度にも出してないけど、買い物も嫌なんだろうね。けどそれでもついて来てくれるのは、自分で対処したいからのはず。
なら私は、乗ってあげなきゃだよね。

悪いことはしてないって、信じてるから。

横にいる弟の頭を撫でてみたら、きょとんとした顔で見上げてきた。ランドセルを背負ってるからか、隣にいると尚更身長差がわかるからか………どうにも、あどけなさを感じる。

(……やんなっちゃうなぁ)

もう隠し事を回避したからか、さっきまでのそわそわは一切ない。私を見る顔には悪気なんてなさそうに見える。
こういう顔の方が、よっぽど天使だと思うんだよね、みづめ君は。
そしてそんな弟を愛しく感じる私は、もしかしたらブラコンかもしれない。……多分そんなこと言ったらみづめ君にバカじゃないの、とか言われそうだけど。何だかんだで姉思いな彼は、ちょっとは照れてくれることを期待した。


―――私に言えない隠し事なんて、初めてだったのにね。

問い詰めなかったのは、それで良かったのか……失敗だったのか。


知るのはもっと、先の話。
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