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前のめりなこの姿勢


もきゅもきゅ。みづめ君が用意してくれたご飯を食べる。今日はロールキャベツです。うま。

「……あ、そうだみづめ君」
「ん?」
「授業参観、私行く」

かちゃん。
みづめ君が持っていたスプーンがお皿に落ちる。何故スプーンかというと、私が最初にみづめ君に作ったのはオムライスだからです。
その卵にはケチャップで堂々とオムライスって書かれている。オムライスにオムライスって書けちゃうみづめ君のセンスにお姉ちゃん脱帽。

「く、来るの…?姉さんが?……何で?」
「……そんなに嫌か君は…」
「いや、そんな嫌ってわけじゃないけど………何で?今まで、来なかったのに」

――正確には、最近、だけどね。
みづめ君が一年生の時は、私も学校サボって見に行った。別に心配してだとか、懇談会がどうのとかじゃない。寧ろ心配したのは……私じゃ、ない。
行けと言われたから行った。その時も、そして、今回も。

思わず苦笑して返せば、みづめ君は一気に不快そうな顔になってしまった。理由を察しちゃったんだろうね。……誤魔化せない私が、悪いんだけど。
勿論内容は言うまでもなく、私にかかってきた電話だ。更に言うならその内みづめ君に伝えるのは授業参観の話だけで、電話の内容は教えない。昔からそう。みづめ君が何を聞いてきても私は答えない。それは私の意思でそうしてるだけで、みづめ君もそれをわかってる。……だから尚更、みづめ君は不愉快なんだ。

もきゅもきゅもきゅ。先ほどより更に、みづめ君の食が進む。
出てくる答えはわかってるし、今彼が何を考えているかはわかっているつもりだ。それでも一切視線を逸らさずにみづめ君を見た。

「……いいよ」

案の定、みづめ君が折れた。

「俺がどうこうできる問題じゃないんでしょ」
「お姉ちゃんが来て嬉しいと」
「そういう意味じゃないよバカじゃないの」
「あは」

へらへらといつもみたいに誤魔化してみるが、この誤魔化しはみづめ君には効かない。
比較的食べるのが早い私は既にあと一口でロールキャベツを食べ終わる。食べ終わったら当然流し台に持ってくわけだけど、それすらせずにもう一度、不機嫌そうな弟に目を向ける。

「聞いていい?」
「ん?」

「一瞬戸惑ったのは、最近の隠し事と関係あるのかな?」


かちゃん。再びみづめ君の手が止まる。
外面貼り付けて誤魔化して装ったって、私の前では無駄。なんで、って顔してるよ。気付かれてないと思ってたんでしょ?

「あ、別に強制はしてないからね。言いたくないならそれでいいし。気になっただけだから」


お節介だなと思っても気になってしまうのは、姉の性だろうか。

―――最初に疑問が沸いたのは、学校に行きはじめてから。
みづめ君が一切家事をやらせてくれなかった。最初は病人だから。次は病み上がりなんだから。なら、今は?今日の夕飯ですら、私が久々に手をつけた家事だ。向こうに行くまでは、毎日私がやっていた家事。
みづめ君自身が、自分がやっていることに手を借りたくないタイプの子だからそれもあるかと思った。けど、どうもそうにも見えない。

確信は―――今の会話、だ。

戸惑いは何も、嫌なのは何も、私の行動に対してだけじゃない。
目が、揺らいでた。


「……姉さん、」
「あ、一応言っとくけど、隠したいなら私行かなくてもいいよ?そこそこ大丈夫っていうならちょっと買い物手伝って欲しかっただけだし」
「買い物?」
「スーパー。明日はお一人様一品が多いんだよね〜」

言及は、しないよ。
遠回しに伝えれば、みづめ君はまたも不愉快そうにため息を吐いた。

―――それでも言わないってことは、本当に隠したいってこと。


「……放課後、校門に居てね」
「え。マジかありがとう!」


もきゅ。
みづめ君が、最後の一口を口に入れた。
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