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引っ掻き回される運命
本、というものを特別読む人間ではない。
かといって読まないわけじゃないし、寧ろ本は好きだ。いっぱい読んだり、頻繁に読んだりしないだけで、本というものには悪い印象は持ってない。
……けれど。
「なぁんか……気分乗らないなぁ」
新刊コーナーをざっと眺めて、目当ての本を発見した。特別本好きというわけでもない私が、唯一といっていいほどチェックしてる作者が出した本だ。しかも、シリーズ最終巻。前巻がかなり気になるところで終わっていたし、一体どんな風に物語が終るのかはとても気になるところだ。いつもなら、気持ち悪いぐらいうきうきして本を手に取るというのに。
―――駄目だ。
全く興味が、沸かない。
きっと、最終巻だからだと思う。終わってしまうからだと思う。
私みたいに。
相変わらず未練がましいなぁなんて、自分で自分に呆れてしまう。何より本、ということに引っ掛かってる私がいる。だって本は、………本によって、私はこっちの世界に戻って来れたから。
また本を開くのが、嫌なのかもしれない。はぁ、と溜め息を吐いて、そのまま深呼吸。みづめ君に会う前になんとかしておかなきゃ、と意気込んで無理矢理気合いを入れた。
私の治療法はいたってシンプルで―――気合い、だ。
「よし……じゃあまずは、あの無駄に高い位置にある本を取ることから始めようか」
何故新刊のくせにあんな面倒な位置にあるのか。そして近くには何故段ボールが積まれているのか。
これ絶対倒したら終るよね、みたいな具合なんだけど回避しながら本を取らなきゃなのか。なんて不親切な本屋だ。品揃えいいから好きだけど。
ざっと見たところ、まさかの踏み台すらない感じ。いや、あるといえばある。遠くに。ぶっちゃけめんどくさいし、まぁいつもなら安全のため取りにいくけど、今はそんな気分じゃないというわけで。更にいうならちょっと挑戦したい年頃というか。
ぐ、っと足に力を入れて背伸び。精一杯手を伸ばしてみるが届きそうにない。
手足が震える。これやり過ぎたら攣るんじゃないかな、って具合に結構キテる。ヤバいこれは。体のバランスはかなり悪いし、多分この均衡を崩した瞬間終る。しかし、届かない。
「え…ちょ、……うわ!」
がくん!と一気に力が抜ける。恐らく通りかかった人にどこかしらぶつかったのだろう。片足を浮かせた状態で伸びていた私は、それだけでバランスを崩す。………ヤバいんじゃないか、これ。
「ちょ…ちょっと、たん、」
ま、と言うところで、それは言葉になる前に消えた。視界にはもう、段ボールしか写ってない。
―――駄目だ、とてもじゃないが、避けられない。
このままいったら顔面じゃないか、とか随分冷静な解析をして、ぎゅっとキツく目を瞑った。
次にくるであろう衝撃に備えて―――、
「――――あづさッ!」
へ、と間抜けな声が無意識に出て、声の主を確認しようとする前に、みぞおちの辺りに圧迫感を感じた。
「みぎゃぁあああああああああ!!??」
どすん、と。およそ女の子の尻餅に相応しくないような音が聞こえた。目の前にはほんの少し揺れてる段ボール。……ぶつからなかったらしい。
その事実に少なからずほっとしていれば、ぎゅう、っと。先ほどより更に強くなるお腹への圧迫感。多分、誰かに抱きしめられてるんだと思う。
いや。………誰かに、っていうのは、語弊があるかもしれない。私はこの声を、知ってる。この腕の暖かさを、知ってる。
ドクドクドク。久しぶりに感じる血の気が引くくらいの緊張。―――あり得ない。そんな訳ないと、どこか冷静な私がいる。でも間違えるはずがないと、訴える私もいる。
首の辺りにかすかに触れる、柔らかな毛先がくすぐったい。そんな風に、くすぐったいくらい跳ねた髪の持ち主だって連想できる。
―――振り返ってはいけないと、わかってるのに。
逆らえない。
「やっと見つけた…」
―――あぁ、
嘘、でしょ…?
「エー、ス……さん…」
焦がれたはずの存在が―――ツライ
- 10 -
かといって読まないわけじゃないし、寧ろ本は好きだ。いっぱい読んだり、頻繁に読んだりしないだけで、本というものには悪い印象は持ってない。
……けれど。
「なぁんか……気分乗らないなぁ」
新刊コーナーをざっと眺めて、目当ての本を発見した。特別本好きというわけでもない私が、唯一といっていいほどチェックしてる作者が出した本だ。しかも、シリーズ最終巻。前巻がかなり気になるところで終わっていたし、一体どんな風に物語が終るのかはとても気になるところだ。いつもなら、気持ち悪いぐらいうきうきして本を手に取るというのに。
―――駄目だ。
全く興味が、沸かない。
きっと、最終巻だからだと思う。終わってしまうからだと思う。
私みたいに。
相変わらず未練がましいなぁなんて、自分で自分に呆れてしまう。何より本、ということに引っ掛かってる私がいる。だって本は、………本によって、私はこっちの世界に戻って来れたから。
また本を開くのが、嫌なのかもしれない。はぁ、と溜め息を吐いて、そのまま深呼吸。みづめ君に会う前になんとかしておかなきゃ、と意気込んで無理矢理気合いを入れた。
私の治療法はいたってシンプルで―――気合い、だ。
「よし……じゃあまずは、あの無駄に高い位置にある本を取ることから始めようか」
何故新刊のくせにあんな面倒な位置にあるのか。そして近くには何故段ボールが積まれているのか。
これ絶対倒したら終るよね、みたいな具合なんだけど回避しながら本を取らなきゃなのか。なんて不親切な本屋だ。品揃えいいから好きだけど。
ざっと見たところ、まさかの踏み台すらない感じ。いや、あるといえばある。遠くに。ぶっちゃけめんどくさいし、まぁいつもなら安全のため取りにいくけど、今はそんな気分じゃないというわけで。更にいうならちょっと挑戦したい年頃というか。
ぐ、っと足に力を入れて背伸び。精一杯手を伸ばしてみるが届きそうにない。
手足が震える。これやり過ぎたら攣るんじゃないかな、って具合に結構キテる。ヤバいこれは。体のバランスはかなり悪いし、多分この均衡を崩した瞬間終る。しかし、届かない。
「え…ちょ、……うわ!」
がくん!と一気に力が抜ける。恐らく通りかかった人にどこかしらぶつかったのだろう。片足を浮かせた状態で伸びていた私は、それだけでバランスを崩す。………ヤバいんじゃないか、これ。
「ちょ…ちょっと、たん、」
ま、と言うところで、それは言葉になる前に消えた。視界にはもう、段ボールしか写ってない。
―――駄目だ、とてもじゃないが、避けられない。
このままいったら顔面じゃないか、とか随分冷静な解析をして、ぎゅっとキツく目を瞑った。
次にくるであろう衝撃に備えて―――、
「――――あづさッ!」
へ、と間抜けな声が無意識に出て、声の主を確認しようとする前に、みぞおちの辺りに圧迫感を感じた。
「みぎゃぁあああああああああ!!??」
どすん、と。およそ女の子の尻餅に相応しくないような音が聞こえた。目の前にはほんの少し揺れてる段ボール。……ぶつからなかったらしい。
その事実に少なからずほっとしていれば、ぎゅう、っと。先ほどより更に強くなるお腹への圧迫感。多分、誰かに抱きしめられてるんだと思う。
いや。………誰かに、っていうのは、語弊があるかもしれない。私はこの声を、知ってる。この腕の暖かさを、知ってる。
ドクドクドク。久しぶりに感じる血の気が引くくらいの緊張。―――あり得ない。そんな訳ないと、どこか冷静な私がいる。でも間違えるはずがないと、訴える私もいる。
首の辺りにかすかに触れる、柔らかな毛先がくすぐったい。そんな風に、くすぐったいくらい跳ねた髪の持ち主だって連想できる。
―――振り返ってはいけないと、わかってるのに。
逆らえない。
「やっと見つけた…」
―――あぁ、
嘘、でしょ…?
「エー、ス……さん…」
焦がれたはずの存在が―――ツライ