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摘まみ上げて運んでよ


追ってきたんだ。
探してたんだ。
やっと会えた。

普通ならきっと、随分嬉しい言葉なんだと思う。現に私は、そんなことが起きないかと、願ったこともある。かなり我が儘な願い事。……叶わないことが前提の、願い事。
会うのが遅かった。いや、会うべきではなかったし、どっちにしろ結果は変わらないから遅いも早いもないかもしれない。寧ろ、良かったのかもしれない。こっちに帰ってきた直後ならどうしていいか少なからず悩んだはず。今なら、……ちゃんと、自分の状況を再確認した今なら、迷うこともない。

「どうやって………は、いいか…。帰る方法はわかってるんですか?」
「いや、わかンね。あづさならなんか知ってるかと思って。………あ、それが目的で会いに来た訳じゃねェけど」

ひしひしと、胸の辺りが苦しくなった。

「………行くあては?」
「ねェ。……ちょっと面倒見てくれてる奴はいるんだけどな」

エースさんが困ったように笑った。面倒見てくれたっていっても、流石に引き取ってまではくれないらしい。―――さて、どうするべきか。
向こうで世話になった恩もある。これ以上揺るがない自信もある。生活費もなんとか…………エースさんに、食欲を抑えて貰えさえすればなんとかなるはず。漫画みたいに食い逃げ常習犯とかになられたら困るけど、エースさんにお腹いっぱい食べさせたら破綻するもんね。
となると……

「私、お手伝いしましょうか?」
「お、いいのか?」
「出来ることは少ないかもしれませんが……向こうで世話になりましたから。それにちょっとくらいは、助けになれるはず」
「ん。悪ぃな」

これはもう、一種の義務にも等しい。
けれど、何か考える前にまずは……みづめ君と合流しなきゃな。連絡来てないけど、多分うろうろしてたら会えるはず。もしくはみづめ君も探してくれるはずだ。
………見つけられなかったら、きっと迷子放送されるはず。みづめ君そういう子だもの。もう既に何度か呼び出されてるもの。あぁ、勿論迷子は私で引き取り人がみづめ君としてね!

「すみません、ちょっと移動していいですか?」
「おう。……あぁ、そうだ。あづさ」
「はい?」

真っ直ぐな目と、かち合う。


「―――笹谷みづめって、あづさの弟?」




****





「……気のせいじゃなかった…」
「え?」
「いや、何でもない」

はぁ、と溜め息吐いたみづめ君を見て直感した。
みづめ君の隠し事は、エースさんだ。

エースさんに弟?と聞かれたことには流石に驚いた。家族の話はあまりしてなかったはずだし、してても名前なんか出した憶えもない。必死に絞り出した声で何で、とだけ漏らせば、あぁやっぱりと言われただけだった。
それを問い詰めようかと思った時に、案の定みづめ君からの迷子コール。仕方なく話を切り上げて迎えに行けば――――成る程、合点がいく。

「エースさんがさっき言ってたのは、みづめ君のことですか…」
「おう」
「は?何、なんの話?」

どういう経緯か知らないけど、エースさんはみづめ君に多少なりとも面倒見て貰っていた。
みづめ君は、私に言えない隠し事をしていた。
今顔を合わせた時、みづめ君は顔を歪めた。

「エースさん、わかってたなら言えば良かったじゃないですか」
「言った、最初に。笹谷あづさっつう女を探してるって」
「そんなの言ったとは言わない。教えろとも言われた憶えはないし」
「あー……成る程な。確かに言ってねェけど……」

しれっとした態度で、みづめ君がエースさんを見た。
……あぁ、うん………多分、多分だけどみづめ君…、

「それで、姉さん」
「ん?」
「どうする気なの、………エース、…さん」

外面放棄に名前呼び。さん付けしたのは私の前だからか。
珍しいなぁ、みづめ君がここまでおおっぴらに人に嫌悪するのは久々に見たかもしれない。理由は多分私絡みかな。それが隠して私に会わせなかった本当の理由ってとこ?
そんなみづめ君に言うのは少し気が引けるっちゃ引けるけど…。


「しばらく一緒に住んで貰おうかと」
「…………え?」
「…………は?」


きょとんとした間抜け顔が二つ並ぶ。
嫌いでも仲良くなくても、ごめんね。
これは私の責任だから、放棄は出来ないでしょ?

「言ったじゃないですか、エースさん」

―――それに、大丈夫だよ。

「お手伝いします、って」



みづめ君の直感は―――今回ばかりは、当たらない。

当たらせないよ。
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