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歩く術ならいくらでも
―――マルコが、言っていた。
あづさの目は、生きる意思が感じられないと。
けれどどこか惹かれるような雰囲気が、あいつにはあると。
「姉さん、あまり期待しないで聞くけど、この問題わかる?」
「おいおいみづめ君よ……いくら私がちゃらんぽらんだからって、小学生の問題を解けないわけがないでしょうに!」
「ふーん?」
あづさといくつか質問を投げ合って、この世界でのルールも少しは教わったところで、みづめが風呂から上がった。それもやっぱり不機嫌で、しかもアイツ眼鏡外すと目付き悪く見える。本人にそのまま、印象変わるなって言ったら、だからしてるんだよと返された。………成る程、こういうとこにみんな騙されんのか。
あんまりあづさと話し過ぎるとみづめが気分よくねェだろうから、そっからはみづめに譲る。素直じゃないしかわいくねェけど、些細なとこで、行動や言葉の端々に、あづさへの配慮を感じる。なんだかんだいって仲良いみたいだし、良い姉弟だと、思う。
「………小学生の問題、だけど?」
「………速さとか時間とか距離とかはね、高校の、しかも文系になると使わないわけであってね……何年もやってないと人はどんどん忘れていっちゃうわけで…」
「で?」
「ごめんなさいわからない」
みづめが冷たい視線を送った。あづさも笑顔がひきつった。
……………仲良い、はず。
ぐるぐるぐるぐる。
こっちにくる直前まで、マルコやイゾウと話してた内容が頭の中を駆け回る。気になる。割と大事な内容な気がする。あくまで勘だけど。
でも勘が当たりやすいのも事実。今までの経験でそれがわかってるからまた複雑で、悩む。ぐるぐるする。けど本人に確かめるのは気が引けた。……人のこと言えたもんじゃ、ないから。
(自分で見極めてやろうと、思ってたんだけどな……)
はぁ、と溜め息を吐く。それによる変化は何もない。
目を瞑ったって落ち着かせようとしたって、やっぱり気になるもんは気になる。
―――なんでだろうな。
最初にそういったのは、イゾウだった。
「――なんでって、何が」
「あのガキのことだよい」
「あづさが助けた?」
「あぁ」
イマイチ意味がわからず先を促せば、マルコが考え深そうに答えた。
「今となっちゃ真意はわからねェが……なんでアイツ、助けたと思う?」
「追われてたからだろ?」
「あの子、そんなことするタイプだと思うかィ?異世界から来た居候っつう、立場で」
あ、と思わず声が漏れた。
あづさの無事だとか、元の世界がどうとか、そんなんばかり考えてて他のことには気が回らなかった。考えてみれば、少し変かもしれない。
短い付き合い、というのにはまさに短すぎるくらいの短期間。けど、それでもあづさの人柄を知るには十分だった。知らない部分だってたくさんあるだろうし、何考えてんのかわかんねェこともある。
だけどアイツはいつも、嘘がなかったから。
「……事情が、あったってことか」
「あぁ。おれ達に迷惑掛けずになんとかしようとしたかったなら、それも出来たはずだろい?そんなに頭は悪くないみたいだしねい」
「聞けば、あづさがあの坊主に協力し始めたのは詳しい話を聞いてからだとかなんとか……らしいなァ」
確かめる術はなかった。確かめる意味も、なかった。
けれど、もしそうなら。……そうだと、したら。
少しは合点がいくと、マルコは言った。
―――現に、それを裏付けそうなものはあった。
予想がどこまで当たってるのかは知らない。知っていいものかと言われたら、あんまよくねェんじゃないかと思う。
向こうでも色んな人間がいるし、色んな事情を持った奴がいる。おれ達海賊なんてやつらは、特に色々あるかもしれねェ。
おれも、そうだから。
(……もう少し)
もう少し、知ってからだ。
この世界のことを。
あづさのことを。
「みづめそれ、何やってんだ?」
「エースには関係ない」
「年上には敬意!」
「………エース、…さん」
結果を出すのは、そっからでいい。
どうせ帰り方など、まだわからないのだから。- 14 -
あづさの目は、生きる意思が感じられないと。
けれどどこか惹かれるような雰囲気が、あいつにはあると。
「姉さん、あまり期待しないで聞くけど、この問題わかる?」
「おいおいみづめ君よ……いくら私がちゃらんぽらんだからって、小学生の問題を解けないわけがないでしょうに!」
「ふーん?」
あづさといくつか質問を投げ合って、この世界でのルールも少しは教わったところで、みづめが風呂から上がった。それもやっぱり不機嫌で、しかもアイツ眼鏡外すと目付き悪く見える。本人にそのまま、印象変わるなって言ったら、だからしてるんだよと返された。………成る程、こういうとこにみんな騙されんのか。
あんまりあづさと話し過ぎるとみづめが気分よくねェだろうから、そっからはみづめに譲る。素直じゃないしかわいくねェけど、些細なとこで、行動や言葉の端々に、あづさへの配慮を感じる。なんだかんだいって仲良いみたいだし、良い姉弟だと、思う。
「………小学生の問題、だけど?」
「………速さとか時間とか距離とかはね、高校の、しかも文系になると使わないわけであってね……何年もやってないと人はどんどん忘れていっちゃうわけで…」
「で?」
「ごめんなさいわからない」
みづめが冷たい視線を送った。あづさも笑顔がひきつった。
……………仲良い、はず。
ぐるぐるぐるぐる。
こっちにくる直前まで、マルコやイゾウと話してた内容が頭の中を駆け回る。気になる。割と大事な内容な気がする。あくまで勘だけど。
でも勘が当たりやすいのも事実。今までの経験でそれがわかってるからまた複雑で、悩む。ぐるぐるする。けど本人に確かめるのは気が引けた。……人のこと言えたもんじゃ、ないから。
(自分で見極めてやろうと、思ってたんだけどな……)
はぁ、と溜め息を吐く。それによる変化は何もない。
目を瞑ったって落ち着かせようとしたって、やっぱり気になるもんは気になる。
―――なんでだろうな。
最初にそういったのは、イゾウだった。
「――なんでって、何が」
「あのガキのことだよい」
「あづさが助けた?」
「あぁ」
イマイチ意味がわからず先を促せば、マルコが考え深そうに答えた。
「今となっちゃ真意はわからねェが……なんでアイツ、助けたと思う?」
「追われてたからだろ?」
「あの子、そんなことするタイプだと思うかィ?異世界から来た居候っつう、立場で」
あ、と思わず声が漏れた。
あづさの無事だとか、元の世界がどうとか、そんなんばかり考えてて他のことには気が回らなかった。考えてみれば、少し変かもしれない。
短い付き合い、というのにはまさに短すぎるくらいの短期間。けど、それでもあづさの人柄を知るには十分だった。知らない部分だってたくさんあるだろうし、何考えてんのかわかんねェこともある。
だけどアイツはいつも、嘘がなかったから。
「……事情が、あったってことか」
「あぁ。おれ達に迷惑掛けずになんとかしようとしたかったなら、それも出来たはずだろい?そんなに頭は悪くないみたいだしねい」
「聞けば、あづさがあの坊主に協力し始めたのは詳しい話を聞いてからだとかなんとか……らしいなァ」
確かめる術はなかった。確かめる意味も、なかった。
けれど、もしそうなら。……そうだと、したら。
少しは合点がいくと、マルコは言った。
―――現に、それを裏付けそうなものはあった。
予想がどこまで当たってるのかは知らない。知っていいものかと言われたら、あんまよくねェんじゃないかと思う。
向こうでも色んな人間がいるし、色んな事情を持った奴がいる。おれ達海賊なんてやつらは、特に色々あるかもしれねェ。
おれも、そうだから。
(……もう少し)
もう少し、知ってからだ。
この世界のことを。
あづさのことを。
「みづめそれ、何やってんだ?」
「エースには関係ない」
「年上には敬意!」
「………エース、…さん」
結果を出すのは、そっからでいい。
どうせ帰り方など、まだわからないのだから。