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目的は違えど旅は道ずれ(2/2)


メイン食べたらデザートでしょ!とそこはやっぱり私も女の子の端くれ。みづめ君が太るよとか横で言ってきたけど、がっつりデザートも頂きました。そんなこと言いつつみづめ君もちょこちょこ食べてたけどね。エースさんは言わずもがな。

私たちにとっては大満足、エースさんにとってもそこそこ満足して店を後にした。帰宅後はお風呂入ってぐだぐだして、今は寝る前の歯磨きを終えてエースさんとベランダでたそがれてみちゃったりしてる。
ちなみにみづめ君は疲れたのか既に寝ました。


「エースさん、こっちだとあんまり寝ませんね」
「んー?」
「向こうだとしょっちゅう寝てたじゃないですか。食事中とか」
「んー…まぁ……」

言葉の歯切れの悪さに首を傾げる。
何気なくいったつもりだったんだけど、あまりよくない話題だったのかな。


「――気ぃ張ってるからだと思う」

「………え?」


唐突に言われた言葉に反応出来ず、言葉に詰まる。
エースさんはにかりと笑ったあと、「んな固い話じゃねーよ」と言って頭に手を置いてきた。
……そういうの、癖……なのだろうか。

「違う世界だろ。ルールもいまいちよくわかってねェし、完全にくつろぐのも難しい。だからと言って眠れないわけでもねぇぞ。食欲もあるし」
「寧ろエースさんから食欲が抜けたら相当ヤバいでしょう」
「まぁな」

はは、とまた軽く笑ったあと、でも、とエースさんは続けた。

「いちばんの理由は、ちょっと違う」
「………と言いますと?」
「わからねぇ?」

にんまりと、至極嬉しいと言わんばかりに不敵に笑うエースさんに、何故だか懐かしさを感じた。何処かで見たことのある笑みだと思うのに、思い出せない。
そこまで言われてしまえば私もちょっと悔しいわけで、真面目に頭をフル回転させる。エースさんがあんまり寝ない理由……理由…………お腹空きすぎて?いやまさかそんな…。

暫くうんうん唸った後、降参と言わんばかりに両手を上げて首を横に降れば、エースさんはまた嬉しそうに笑った。「忘れてねぇか」……うん?


「―――海賊だぜ、おれは」


………あ。
思わず声が出て、同時にほんの少し恥ずかしくなった。
エースさんはしたり顔である。

確かにエースさんは海賊なわけで、ちょっと前まで広い海でスリリングな航海をしてたわけで。
自分の見たことのないものばかりで、それ以前に異世界なのだから自分の世界の人間は誰も見たことがない。スリルは向こうほどではなくとも、それでも見るもの全てが新しいなら十分だろう。
知らない土地で知らないものばかりで発見がある―――それはつまり、冒険なのだろう。

「……やられましたね」
「忘れてんなよ」
「いーえ。忘れてないけど発想がなかったんですよ。……エースさんも大概、プラス思考ですね」
「プラス思考っつーか、これは最早……なんつーの?海賊の性、みたいなさ」
「なるほど」

それは良かった、と笑ってしまえば、エースさんも笑った。
懐かしさを感じたのは、向こうの世界で見てきた、海賊であるエースさんの顔、だからだろうか。

――…冒険、したいんだろうな。

少しだけ羨ましく思って俯いてしまえば、エースさんがそれを見逃すはずもない。
一気に真面目な顔をされてしまった。
いけないなとわかっていても、別に行きたいわけじゃなく羨ましいだけなのだから、私にとってはまだ許容範囲なのに。

「……いつでも来ていいぞ」
「………」
「なんならみづめごとでも。あいつあづさ大好きだからな!」

焦る気はないと、前に言っていた気もするけど、言わずとも雰囲気で伝わってくる。
別にエースさんは私に強制してるわけじゃない。希望を言っている、だけで。

でも、


「――それでも私は、行きませんけどね」

にたりと、さっきのエースさんに負けないくらい不敵に笑って見せれば、エースさんも強情、と言って笑った。
こんな空気が調度いいと思う。
こんな空気で、いたいと思う。

――私は、もう行かないから。


「……そうだ、エースさん」
「なに?」

これはほんの少しのルール違反。
行けないから。止められないから。どうしようもないから。
それでも放っておけるわけでも、ないから。


「――向こうに帰ったら、出来るだけサッチさんから離れないでいて下さい」

「……は?」


頼みますよ、とそのまま言い逃げでベランダを出て自分の部屋へ。

ばくばくとうるさいくらいに心臓が鳴ったけど、それでも後悔はしてない。前々から気になってたことだし、決まった未来と言えど、私はあの人たちを登場人物として見てたわけじゃない。生きてて、存在してる……生身の人間として見てたわけだから。



――影響だとか考えたところで無駄なんだよ。
私は元から知ってて向こうに行ったわけじゃないし、聞かれても困るわけだし。

その時点でもう、私はイレギュラーでしょ?
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