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道しるべなんかどこにもなく
スペードとクローバーの10が二枚。ハートとクローバーのジャックが二枚。私の番。パス。ハートとダイヤのエースが二枚。パス。パス。
「あっがりー!!」
「えっ」
「……………じゃあ次俺の番ね。八切り。でもってクローバーのエースで上がり」
「………えええええ…!?」
私の右隣ではしゃぐエースさんに、左隣でエースさんを睨み付けてるみづめ君。
それから、理解する間もなくあっさり負けた私。残りの手札はたった一枚。しかも大貧民、もしくは大富豪と呼ばれるこのゲームでは割と強いはずの、2が残ってる。
敗因は簡単だ。みづめ君とエースさんが、途中から二枚ずつしか出さなくなった。
つまりは私の不可抗力。みづめ君達から見たらきっと、私の戦略ミス。
「もう一回」
「へへっ、何度やってもおれには勝てねェって」
「うるさいな。次は俺が勝つ」
「みづめ君みづめ君、私は?」
「姉さんは端から眼中にない」
「酷い!」
「悪い、おれお前ら二人とも眼中にねェな」
「………勝つのが当然ってこと?上等だよ天パ!!」
「はぁ!?」
ダンッ!とみづめ君が荒々しくトランプの山に手をついてから、また荒々しく、けれど折れない程度の加減はしてカードを集めてシャッフルする。
あんまりそんなこと言っちゃダメだよ、ともう今更としか言えないような注意をみづめ君にして、彼はむすっとしながら「……気を付ける」と言った。……どうやら気を付けるだけであって、直す気はないようです。彼の返事はそんなもん。
(……風呂上がりにちょっと遊ぶ程度、だったのになぁ)
―――エースさんは、家にこもり過ぎて暇らしい。
たまに買い物に付き合ってもらったりはしてるけど、それがまた何日も続けば暇だと思う。ついでにみづめ君も、私が一応ストップをかけてしまうからエースさんには大分不満が溜まっているらしい。私はすごくハラハラしてる。でもエースさんは、そんなみづめ君を適度にからかうのが楽しいらしい。
まぁ、そんなことは置いておいて。
暇だというなら少し遊んでみるか―――という軽い気持ちで、
数日前から、お風呂上がりにはトランプで遊んでいる。
「私がルール教えたのになぁ……」
「あづさは頭悪いわけじゃねェと思うけど、こういうゲームには向かないな」
「私いない方が二人楽しめる感じですか……」
「いや、姉さんはいるべきだね」
「えええー?」
「おう。いかにあづさを陥れて利用しつつみづめの裏をかけるか、が一番面白ぇ勝ち方だからな!」
「エースさんそれフォローじゃない」
「俺もそれはエースと同意見」
「二人してドエスか!」
ああああ、と声に出して体育座りの足の間に顔を埋める。この二人はホントに仲が良いんだか悪いんだかよくわからない。今も顔を上げずとも、みづめ君もエースさんも楽しそうな顔をしてるのが目に浮かぶ。ははは、なんてこった。
次こそは一泡噴かせてやろう、と心の中でガッツポーズ。
やれるものならやってみろと、二人が笑った気がした。
「…………………あ。」
次、中々いい手札なんじゃないか?
****
ハートの7。ダイヤの8。八切り。私の番。クローバーの9。ハートの10。クラブのキング。……………あれ?
「…………」
「? 何、どうしたの」
「……これ、私の番だよね?」
「そうだな」
「………私あと一枚なんですけど」
「…………………え?」
「…………………は?」
トランプの山の一番上はクラブのキング。私の手札は一枚。キングより強いカード。
エースさんとみづめ君が目をぱちくりさせる。私もぱちくりである。嬉しいとかそんな気持ちはなくて、ただ自分でも驚いた。
勝てそうだ。ここ十五戦くらい二位に付け入る隙もないくらいの圧倒的最下位だった私が、である。
…………上がりか!!
「…………スペードの、エースぅ!」
「………………嘘ぉ!?」
「うわっ、なんで!?さっき強いカードは全部出したんじゃなかったの?」
「なんか一枚重なってて気付かなかったみたい」
「マジかよ!?」
ばぁああん!!とそれはそれは思いっきり叩きつけた私のカードが、トランプの山の頂点を飾る。それを見た二人は前のめりで確認してから、信じられないと言わんばかりで見てきた。
すまんが現実だ。
あああああ、とさっきの私のようにエースさんが項垂れる。連勝一位を最下位に阻まれたショックを受けるエースさんと違い、みづめ君はきょとんとした後、溜め息をついただけだった。……私になら負けてもいいってか。
自分でも紛れだろうとは思っているけど、ちょっとそれはそれで悔しい。悔しかったので、じゃあ二人はビリ争いだね、と声をかけてみた。
ピシリ。
………空気が、固まった。
「…………俺姉さんとワンツートップだから」
「バカいえ、おれとあづさでツートップだろ」
………それはそれで、まずかったようです。
能力よろしく、エースさんの目がメラメラと燃えている気がした。それを本人にも言いそうになったけど、考えてみれば私はエースさんが悪魔の実の能力者だと知らないことになっている気がする。教えてもらった記憶は、ない。
ならこれはいいか、と改めて二人を見れば、先程までとはまた違う表情でいきいきとしている。男の子は勝負ごとが好きなんでしょうかね。
エースさんもみづめ君も、一回り以上歳は離れてるのに―――
まるで、子供みたいだ。
なんだろう。
こういう光景は、あたたかい。
「………あ。そいやさ、あづさ」
「はい?」
「さっきの、いいな。
スペードのエースっての」
「………あ…」
そのあったかい雰囲気のまま。
あったかい笑顔で、エースさんは言った。
エース、は。
トランプでもあるけど、エースさんの名前で。
スペードは確か―――『ポートガス・D・エース』が立ち上げた、海賊団。
「そうやって、呼び捨てで呼んでくれりゃいいのにな」
にかりと。
太陽みたいにあたたかい人が。
太陽みたいに、笑った。
―――いつか、ね…
きっと。―――いつか
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「あっがりー!!」
「えっ」
「……………じゃあ次俺の番ね。八切り。でもってクローバーのエースで上がり」
「………えええええ…!?」
私の右隣ではしゃぐエースさんに、左隣でエースさんを睨み付けてるみづめ君。
それから、理解する間もなくあっさり負けた私。残りの手札はたった一枚。しかも大貧民、もしくは大富豪と呼ばれるこのゲームでは割と強いはずの、2が残ってる。
敗因は簡単だ。みづめ君とエースさんが、途中から二枚ずつしか出さなくなった。
つまりは私の不可抗力。みづめ君達から見たらきっと、私の戦略ミス。
「もう一回」
「へへっ、何度やってもおれには勝てねェって」
「うるさいな。次は俺が勝つ」
「みづめ君みづめ君、私は?」
「姉さんは端から眼中にない」
「酷い!」
「悪い、おれお前ら二人とも眼中にねェな」
「………勝つのが当然ってこと?上等だよ天パ!!」
「はぁ!?」
ダンッ!とみづめ君が荒々しくトランプの山に手をついてから、また荒々しく、けれど折れない程度の加減はしてカードを集めてシャッフルする。
あんまりそんなこと言っちゃダメだよ、ともう今更としか言えないような注意をみづめ君にして、彼はむすっとしながら「……気を付ける」と言った。……どうやら気を付けるだけであって、直す気はないようです。彼の返事はそんなもん。
(……風呂上がりにちょっと遊ぶ程度、だったのになぁ)
―――エースさんは、家にこもり過ぎて暇らしい。
たまに買い物に付き合ってもらったりはしてるけど、それがまた何日も続けば暇だと思う。ついでにみづめ君も、私が一応ストップをかけてしまうからエースさんには大分不満が溜まっているらしい。私はすごくハラハラしてる。でもエースさんは、そんなみづめ君を適度にからかうのが楽しいらしい。
まぁ、そんなことは置いておいて。
暇だというなら少し遊んでみるか―――という軽い気持ちで、
数日前から、お風呂上がりにはトランプで遊んでいる。
「私がルール教えたのになぁ……」
「あづさは頭悪いわけじゃねェと思うけど、こういうゲームには向かないな」
「私いない方が二人楽しめる感じですか……」
「いや、姉さんはいるべきだね」
「えええー?」
「おう。いかにあづさを陥れて利用しつつみづめの裏をかけるか、が一番面白ぇ勝ち方だからな!」
「エースさんそれフォローじゃない」
「俺もそれはエースと同意見」
「二人してドエスか!」
ああああ、と声に出して体育座りの足の間に顔を埋める。この二人はホントに仲が良いんだか悪いんだかよくわからない。今も顔を上げずとも、みづめ君もエースさんも楽しそうな顔をしてるのが目に浮かぶ。ははは、なんてこった。
次こそは一泡噴かせてやろう、と心の中でガッツポーズ。
やれるものならやってみろと、二人が笑った気がした。
「…………………あ。」
次、中々いい手札なんじゃないか?
****
ハートの7。ダイヤの8。八切り。私の番。クローバーの9。ハートの10。クラブのキング。……………あれ?
「…………」
「? 何、どうしたの」
「……これ、私の番だよね?」
「そうだな」
「………私あと一枚なんですけど」
「…………………え?」
「…………………は?」
トランプの山の一番上はクラブのキング。私の手札は一枚。キングより強いカード。
エースさんとみづめ君が目をぱちくりさせる。私もぱちくりである。嬉しいとかそんな気持ちはなくて、ただ自分でも驚いた。
勝てそうだ。ここ十五戦くらい二位に付け入る隙もないくらいの圧倒的最下位だった私が、である。
…………上がりか!!
「…………スペードの、エースぅ!」
「………………嘘ぉ!?」
「うわっ、なんで!?さっき強いカードは全部出したんじゃなかったの?」
「なんか一枚重なってて気付かなかったみたい」
「マジかよ!?」
ばぁああん!!とそれはそれは思いっきり叩きつけた私のカードが、トランプの山の頂点を飾る。それを見た二人は前のめりで確認してから、信じられないと言わんばかりで見てきた。
すまんが現実だ。
あああああ、とさっきの私のようにエースさんが項垂れる。連勝一位を最下位に阻まれたショックを受けるエースさんと違い、みづめ君はきょとんとした後、溜め息をついただけだった。……私になら負けてもいいってか。
自分でも紛れだろうとは思っているけど、ちょっとそれはそれで悔しい。悔しかったので、じゃあ二人はビリ争いだね、と声をかけてみた。
ピシリ。
………空気が、固まった。
「…………俺姉さんとワンツートップだから」
「バカいえ、おれとあづさでツートップだろ」
………それはそれで、まずかったようです。
能力よろしく、エースさんの目がメラメラと燃えている気がした。それを本人にも言いそうになったけど、考えてみれば私はエースさんが悪魔の実の能力者だと知らないことになっている気がする。教えてもらった記憶は、ない。
ならこれはいいか、と改めて二人を見れば、先程までとはまた違う表情でいきいきとしている。男の子は勝負ごとが好きなんでしょうかね。
エースさんもみづめ君も、一回り以上歳は離れてるのに―――
まるで、子供みたいだ。
なんだろう。
こういう光景は、あたたかい。
「………あ。そいやさ、あづさ」
「はい?」
「さっきの、いいな。
スペードのエースっての」
「………あ…」
そのあったかい雰囲気のまま。
あったかい笑顔で、エースさんは言った。
エース、は。
トランプでもあるけど、エースさんの名前で。
スペードは確か―――『ポートガス・D・エース』が立ち上げた、海賊団。
「そうやって、呼び捨てで呼んでくれりゃいいのにな」
にかりと。
太陽みたいにあたたかい人が。
太陽みたいに、笑った。
―――いつか、ね…
きっと。―――いつか