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傷付けるほどに現れる
「………なんなの、お前」
「………」
「何したの」
―――帰ってくるなり、みづめはすぐにそう言った。恐ろしいまでに洞察力がいいのか、それともやっぱり姉が好きな故か……なんにせよ、おれとあづさの間に何かあったらしいことはわかったらしい。
あづさは、部屋に行ったきりだったけど、さっきチラリと見てみたら寝てた。そういえばおれの世界に居た時も、すんげえシリアス場面に寝てた気がする。もしかしたら寝ないとやってけないのかもしれねぇな。泣いたら寝るだなんて、ガキみてぇ。
「…………悪ぃ」
「………」
「全面的に、おれが悪いんだ」
ゆっくり知っていこうと思ってたはずなのに、無理だった。
抱えてんのはあづさだけの問題じゃない。みづめにだって関係あるはずで、そしてみづめはおれに触れられないようにしていた。最初から、コイツはおれが悪影響だと言ってきた。それでも家に置くと言ったのはあづさだけど、あづさを責められるわけがない。
「………俺は、何したのって聞いたんだけど」
おれの懺悔なんか、興味がないらしい。
きっとみづめの中では、おれが悪いことは確定してたんだろうな。
「……電話でちまって。あづさはそれを誤魔化したかったんだろうけど、探るようなことしちまった」
「……だろうね」
みづめは、半ば嘲笑うかのように言った。ただそれはまるで……おれにではなく、自分に。自嘲したように見えた。
―――なんか、もやもやする。
違う……やっぱりみづめはおれにではなく、みづめ自身に嗤ったんだ。しかもそれは、自分があづさを守れなかったからじゃない。自分がおれを避けきれなかったことにじゃない。もっと違う何かだ。
………なんだ?
「なに、それで?」
「……?」
「エースは、何をどこまで知ったの」
――みづめはまた、自嘲のようにわらった。
あづさは触れられるのを拒んだように思えたけど、みづめは寧ろ逆。まるで触れられたいかのような………触れられて、傷付けられたいような。
――あぁ、自嘲ではなく、自虐なのかもしれない。自暴自棄とも言える。どうしようもない気持ちを、どこかにぶつけたいけど出来ない。否定されるようにしてるくせに、それでいて………表情には、傷付きたくないと、出てる。
十歳のガキが、なんて顔してんだよ。
「……みづめ」
おれが……ルフィと出会った時と。
今のコイツの歳は、一緒だ。
なんて顔してんだなんて、おれが言えたもんじゃないかもしれない。十歳のおれを、周りは同じように見てただろうか。……いや…おれは同情される立場じゃ、なかった。
みづめには、あづさが全てなんだ。
おれにとってのサボやルフィ。オヤジ。クルーのみんな……きっと、おれがそれぞれに抱いてる気持ちを全部、コイツはあづさに向けてる。
だとしたら、こんなにも自虐的に笑うだろうか。愛する家族を傷付けられたら、こんなすんなりとしてるだろうか。自業自得だとか、そんな言葉で片付けられるもんかよ。
「……みづめ」
―――おれは、お前らのことは何もしらない。
電話は叫ばれただけで、何か理解出来るような内容でもなかった。
そう言えば、ぐらりと、一瞬みづめの目に動揺が走った。その顔はさっきのあづさとよく似ていて、姉弟だなぁなんて考える。
「お前さ……何でも上手くいくわけねぇんだから」
無難な言葉しか、投げかけてやれねぇけど。
「あづさもお前も……一人で抱えてないで、頼れよ」
そんなツラい顔してんのに。
ぎゅっと、みづめが唇を噛んだ。
互いが互いのために、一人で抱えようとする。
おれが言えたことじゃないんだ。この姉弟がやってることと似たようなことを、おれはしてる。
不謹慎かもしれない。おれの方がツラいとか、コイツ等の方がツラいとか、同じだとか比べるつもりはない。比べられるわけがない。
でもさ。……なんとなく。なんとなくだけど。
――おれを受け入れた時のオヤジは、こんな気持ちだったのかと思った。
「俺……やっぱアンタ、嫌い」
「はは……おれは結構好きだな」
否定されんのが怖いのは、おれもお前も一緒。
コイツの何が嫌だったか……おれを否定するからじゃない。それが理由じゃなかったんだ。
自暴自棄に突っ走って、傷付きたくなくて、傷付きたくて、愛されたくて、守りたくて。
十歳ってのは、みんなそうなのかな。
- 20 -
「………」
「何したの」
―――帰ってくるなり、みづめはすぐにそう言った。恐ろしいまでに洞察力がいいのか、それともやっぱり姉が好きな故か……なんにせよ、おれとあづさの間に何かあったらしいことはわかったらしい。
あづさは、部屋に行ったきりだったけど、さっきチラリと見てみたら寝てた。そういえばおれの世界に居た時も、すんげえシリアス場面に寝てた気がする。もしかしたら寝ないとやってけないのかもしれねぇな。泣いたら寝るだなんて、ガキみてぇ。
「…………悪ぃ」
「………」
「全面的に、おれが悪いんだ」
ゆっくり知っていこうと思ってたはずなのに、無理だった。
抱えてんのはあづさだけの問題じゃない。みづめにだって関係あるはずで、そしてみづめはおれに触れられないようにしていた。最初から、コイツはおれが悪影響だと言ってきた。それでも家に置くと言ったのはあづさだけど、あづさを責められるわけがない。
「………俺は、何したのって聞いたんだけど」
おれの懺悔なんか、興味がないらしい。
きっとみづめの中では、おれが悪いことは確定してたんだろうな。
「……電話でちまって。あづさはそれを誤魔化したかったんだろうけど、探るようなことしちまった」
「……だろうね」
みづめは、半ば嘲笑うかのように言った。ただそれはまるで……おれにではなく、自分に。自嘲したように見えた。
―――なんか、もやもやする。
違う……やっぱりみづめはおれにではなく、みづめ自身に嗤ったんだ。しかもそれは、自分があづさを守れなかったからじゃない。自分がおれを避けきれなかったことにじゃない。もっと違う何かだ。
………なんだ?
「なに、それで?」
「……?」
「エースは、何をどこまで知ったの」
――みづめはまた、自嘲のようにわらった。
あづさは触れられるのを拒んだように思えたけど、みづめは寧ろ逆。まるで触れられたいかのような………触れられて、傷付けられたいような。
――あぁ、自嘲ではなく、自虐なのかもしれない。自暴自棄とも言える。どうしようもない気持ちを、どこかにぶつけたいけど出来ない。否定されるようにしてるくせに、それでいて………表情には、傷付きたくないと、出てる。
十歳のガキが、なんて顔してんだよ。
「……みづめ」
おれが……ルフィと出会った時と。
今のコイツの歳は、一緒だ。
なんて顔してんだなんて、おれが言えたもんじゃないかもしれない。十歳のおれを、周りは同じように見てただろうか。……いや…おれは同情される立場じゃ、なかった。
みづめには、あづさが全てなんだ。
おれにとってのサボやルフィ。オヤジ。クルーのみんな……きっと、おれがそれぞれに抱いてる気持ちを全部、コイツはあづさに向けてる。
だとしたら、こんなにも自虐的に笑うだろうか。愛する家族を傷付けられたら、こんなすんなりとしてるだろうか。自業自得だとか、そんな言葉で片付けられるもんかよ。
「……みづめ」
―――おれは、お前らのことは何もしらない。
電話は叫ばれただけで、何か理解出来るような内容でもなかった。
そう言えば、ぐらりと、一瞬みづめの目に動揺が走った。その顔はさっきのあづさとよく似ていて、姉弟だなぁなんて考える。
「お前さ……何でも上手くいくわけねぇんだから」
無難な言葉しか、投げかけてやれねぇけど。
「あづさもお前も……一人で抱えてないで、頼れよ」
そんなツラい顔してんのに。
ぎゅっと、みづめが唇を噛んだ。
互いが互いのために、一人で抱えようとする。
おれが言えたことじゃないんだ。この姉弟がやってることと似たようなことを、おれはしてる。
不謹慎かもしれない。おれの方がツラいとか、コイツ等の方がツラいとか、同じだとか比べるつもりはない。比べられるわけがない。
でもさ。……なんとなく。なんとなくだけど。
――おれを受け入れた時のオヤジは、こんな気持ちだったのかと思った。
「俺……やっぱアンタ、嫌い」
「はは……おれは結構好きだな」
否定されんのが怖いのは、おれもお前も一緒。
コイツの何が嫌だったか……おれを否定するからじゃない。それが理由じゃなかったんだ。
自暴自棄に突っ走って、傷付きたくなくて、傷付きたくて、愛されたくて、守りたくて。
十歳ってのは、みんなそうなのかな。