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交錯の道が繋がるものか
―――例え、ば。
姉さんが嫌いかと言われたら、違うって言う。
姉さんに嫌いかって言われたら、どうだろうねって言う。
素直じゃない、とかいう言葉は慣れた。まぁ、そんな言葉を言うのは姉さんだけなんだけど。他のやつらがそんなこと言うわけない。だって俺、イイ子だからね。
猫被り、とも姉さんは言う。でもそれを否定しようとは思わない。実際に猫被ってるから。しかも、わざと。当然でしょ?だって俺がイイ子にしてたら、姉さんの負担が減るんだから。
―――つまるところ、俺は姉さんが好きだ。
別に恋愛感情ってわけじゃない。単なる家族愛だ。……それにしちゃ重い気がするから、重度のシスコンってとこかな。
素直じゃない。猫被ってる。
姉さんがそう言う度に、姉さんは俺のことをわかってるんだって。姉さんだけが、本当の俺をわかってくれてるんだって、思える。俺にはそれで十分なんだ。他人が嫌いってわけじゃない。だけど、俺をずっと守ってくれてたのは姉さんだ。それこそ、自分を犠牲にしてでも。
だから俺は――姉さんが、大事だ。
だから、
「………何度も、言うけど」
「………」
「俺、アンタ好きじゃないよ」
目の前にいるやつ―――姉さんの、知り合いらしい男、は。
はぁ、と溜め息をついて、知ってると返してきた。
アンタに俺の、何がわかるの。
―――コイツと出会ったのは数日前。学校の帰り道に人だかりが出来ていたから、覗き込んでみたら居た。
どうやら喧嘩みたいだったけど、俺としては大迷惑。その道を通らなきゃ家には帰れないし、でも俺はすぐにでも姉さんのところに帰りたかった。なんせ姉さんは風邪だし、……帰ってきた、ばかりだったから。
だから俺は、言い放った。自分でなんとか出来るって、思ってたから。
―――何してるの、兄さん、と。
は?と言う言葉が数人の口から聞こえた。俺はそれをガン無視して、きょとんとした野郎供を見ながら、喧嘩の被害者側の男の手を掴んだ。
場の空気が一気に固まったところで、また爆弾を落とす。
――早く帰ろう?僕、お腹空いちゃった。
――あ、そうだ。さっきそこで警察の人に会ったんだ!ほら、この間僕、お財布落としちゃったでしょ?見つかったんだって!
――お礼、言いに行こう?……まだ近くに、いると思うから。
無邪気にそう言えば、加害者組の三人は一目散に逃げていった。ついでに、人だかりもね。
これで俺も進める。人助けもしたんだし、メリットしかないよね。大成功。
大丈夫?と、まだまだ解けない外面を振り撒いた時に、言ったんだ―――ソイツは、
「―――お前、すんげえ裏表あんな」
回想じゃない、直接耳に入ってきた言葉にハッとする。
――そう。この言葉、だ。あの時俺を打ち砕いた、言葉。
(コイツは……また同じことを、言うのか……ッ)
ふつふつと沸いてくる嫌悪感。俺の二面性を知ってるのは姉さんだけでいいのに。姉さんだけ、なのに。……何で会ったばかりのお前に言われなきゃならない。
……あの助けてやった日から、どうにもコイツは俺に付きまとってくる。理由を聞けば、探してる人がいるとか。そしてそれが、――なんとなく、俺に似てるらしい。
その言葉に、一気に不安になった俺は、更にソイツの探し人の特徴を問いただした。不安になったのは違う意味だった。別に姉さんのことを連想したわけでも、なかったのに。
―――笹谷あづさって、知らねェ?
――ソイツが言ったのは、俺が予想したのとは違う、だけど、確実に俺が知ってる人物だった。
「……お前があづさとどういう関係か知らねェけど、おれは別に怪しいモンじゃねェし、危害も加えねェって」
「異世界から来たとか言ってる時点でおかしい。上半身半裸とか更に怪しい。だいたい身分も証明できないんだろ?衣服と食料は俺が用意してやってるんだ。家族の目を盗んでまで、ね」
感謝しろ。そう言って、姉さんにバレないようこっそり洗濯した――ソイツの、オレンジの帽子を投げつけた。
「……お前さ、裏表激しーけど、結局良いやつだよな」
「馬鹿じゃないの」
「怒んなよ!……まァ、明日も待ってっからさ。じゃあな、みづめ」
結局良いやつ。それも、姉さんが言う言葉だ。
アンタに何がわかる。姉さんの知り合いだろうと何だろうと、俺はアンタを認めない。姉さんに会わせない。アンタを姉さんに――会わせていいとは、思えない。
「明日こそ消えてよ、エース」
直感は悪くない方なんだ。
アンタは俺にも、姉さんにも――良くない存在、だ。
- 5 -
姉さんが嫌いかと言われたら、違うって言う。
姉さんに嫌いかって言われたら、どうだろうねって言う。
素直じゃない、とかいう言葉は慣れた。まぁ、そんな言葉を言うのは姉さんだけなんだけど。他のやつらがそんなこと言うわけない。だって俺、イイ子だからね。
猫被り、とも姉さんは言う。でもそれを否定しようとは思わない。実際に猫被ってるから。しかも、わざと。当然でしょ?だって俺がイイ子にしてたら、姉さんの負担が減るんだから。
―――つまるところ、俺は姉さんが好きだ。
別に恋愛感情ってわけじゃない。単なる家族愛だ。……それにしちゃ重い気がするから、重度のシスコンってとこかな。
素直じゃない。猫被ってる。
姉さんがそう言う度に、姉さんは俺のことをわかってるんだって。姉さんだけが、本当の俺をわかってくれてるんだって、思える。俺にはそれで十分なんだ。他人が嫌いってわけじゃない。だけど、俺をずっと守ってくれてたのは姉さんだ。それこそ、自分を犠牲にしてでも。
だから俺は――姉さんが、大事だ。
だから、
「………何度も、言うけど」
「………」
「俺、アンタ好きじゃないよ」
目の前にいるやつ―――姉さんの、知り合いらしい男、は。
はぁ、と溜め息をついて、知ってると返してきた。
アンタに俺の、何がわかるの。
―――コイツと出会ったのは数日前。学校の帰り道に人だかりが出来ていたから、覗き込んでみたら居た。
どうやら喧嘩みたいだったけど、俺としては大迷惑。その道を通らなきゃ家には帰れないし、でも俺はすぐにでも姉さんのところに帰りたかった。なんせ姉さんは風邪だし、……帰ってきた、ばかりだったから。
だから俺は、言い放った。自分でなんとか出来るって、思ってたから。
―――何してるの、兄さん、と。
は?と言う言葉が数人の口から聞こえた。俺はそれをガン無視して、きょとんとした野郎供を見ながら、喧嘩の被害者側の男の手を掴んだ。
場の空気が一気に固まったところで、また爆弾を落とす。
――早く帰ろう?僕、お腹空いちゃった。
――あ、そうだ。さっきそこで警察の人に会ったんだ!ほら、この間僕、お財布落としちゃったでしょ?見つかったんだって!
――お礼、言いに行こう?……まだ近くに、いると思うから。
無邪気にそう言えば、加害者組の三人は一目散に逃げていった。ついでに、人だかりもね。
これで俺も進める。人助けもしたんだし、メリットしかないよね。大成功。
大丈夫?と、まだまだ解けない外面を振り撒いた時に、言ったんだ―――ソイツは、
「―――お前、すんげえ裏表あんな」
回想じゃない、直接耳に入ってきた言葉にハッとする。
――そう。この言葉、だ。あの時俺を打ち砕いた、言葉。
(コイツは……また同じことを、言うのか……ッ)
ふつふつと沸いてくる嫌悪感。俺の二面性を知ってるのは姉さんだけでいいのに。姉さんだけ、なのに。……何で会ったばかりのお前に言われなきゃならない。
……あの助けてやった日から、どうにもコイツは俺に付きまとってくる。理由を聞けば、探してる人がいるとか。そしてそれが、――なんとなく、俺に似てるらしい。
その言葉に、一気に不安になった俺は、更にソイツの探し人の特徴を問いただした。不安になったのは違う意味だった。別に姉さんのことを連想したわけでも、なかったのに。
―――笹谷あづさって、知らねェ?
――ソイツが言ったのは、俺が予想したのとは違う、だけど、確実に俺が知ってる人物だった。
「……お前があづさとどういう関係か知らねェけど、おれは別に怪しいモンじゃねェし、危害も加えねェって」
「異世界から来たとか言ってる時点でおかしい。上半身半裸とか更に怪しい。だいたい身分も証明できないんだろ?衣服と食料は俺が用意してやってるんだ。家族の目を盗んでまで、ね」
感謝しろ。そう言って、姉さんにバレないようこっそり洗濯した――ソイツの、オレンジの帽子を投げつけた。
「……お前さ、裏表激しーけど、結局良いやつだよな」
「馬鹿じゃないの」
「怒んなよ!……まァ、明日も待ってっからさ。じゃあな、みづめ」
結局良いやつ。それも、姉さんが言う言葉だ。
アンタに何がわかる。姉さんの知り合いだろうと何だろうと、俺はアンタを認めない。姉さんに会わせない。アンタを姉さんに――会わせていいとは、思えない。
「明日こそ消えてよ、エース」
直感は悪くない方なんだ。
アンタは俺にも、姉さんにも――良くない存在、だ。