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「もう怒りました。意地でもつきまといます!」

 十一回目の今日。目の前に現れ、そしてまた私を無視したカタクリ少年の前に回り込んで、私は堂々と宣言した。
 カタクリくんとはもう目が合わない。私の発言もまるで聞こえてないかのように、気にせず歩みを進み続けられる。それにかちんとはきたものの──予測済みだったのでカタクリくんの視界を埋めるほど近距離まで接近する。
 ならばと振り向かれるのも、また回り込んで阻止する。
 ……よしっ。歩みが止まった。

 眉間の皺が不愉快そうに寄せられたのを見て、ついと笑みを浮かべてしまう。
 ……そのまま。写してほしいんだ、せめて。
 唯一私の姿を見ることが出来る、君の目に。

「……やっと、見たね」

 ふいと、視線がかち合う。
 僅かだ。指摘する前に反らされたけど、確かに目が合った。私を捉えた。それだけでなんだかひどく、安心感を覚える。
 そんなに長い間見てなかったわけじゃないのに、随分久しぶりのようだ。
 カタクリくんの瞳は、私の世界には無い色をしている。静かに燃える綺麗な色が細められるのは、現実味がない。とは思う。
 なのに。

「……君はどうか知らないけど、君のことを全然知らなくて、まったく君に慣れてない私は、君の態度にすっごくめげて落ち込んで悩まされた」

 反応はない。無視を続けるようなので、私も勝手に喋り続ける。

「たかだか夢でって腹立ってきたし、君と別に仲良いわけではないし、他人だし、関わりなくても私は困らないわけだし。そちらがその態度なら、別にいいやとも思ったよ。でも、」

 ふわり。重さも何も無いような自分の両手を、カタクリくんの頬へ添える。
 触れられはしないから、顔を包んだところでこちらに向かせることは出来ないけれど。きちんと見据えたいから、私は真っ直ぐ向き直った。自分自身からも、逃げないように。
 

「夢の中とか暗示とか、もう置いとくことにした。私は、君自身と向き合う」


 強く、強く、見つめる。
 ──これは宣言だ。
 いま、この瞬間から。私は逃げ道を失った。例え夢の中であろうと──夢だとしても──自分の発言には、出来るだけ責任を持っていたい。
 私のちっぽけなプライド。そして曲げないようにしている、性分だ。

「……勝手にしろ」
「……勝手にする!」

 その返事を聞いて、にたりと笑みがもれた。思わず息を止めてうち震えてしまいそうな歓喜をぎゅむっと、無理やり押さえつけて、ひゅん! カタクリくんの進行方向と真逆に全速力で飛んでいく。
 ──やった……やったやった……!!
 ぞくぞくする。高揚してる。
 ちょっと話せただけ。それなのに、達成感のような感覚を覚える。例えるなら、なつかない猫が逃げなくなったような。
 けれどその感覚もすぐに塗り替えられる。競りあがってきたのは、見てろよと見返したい気持ちだ。これだけで終わりにする気は毛頭無い。

 スピードを更にあげた。最初の目的は決まってる。
 トキちゃん流、戦いの心得──

 (──敵のことを知れ!)

 何事も調査は大切だ。そんなの当たり前で、大したことないじゃんって戦法だ。
 でも、全くその通りなのだ。私はそもそも、カタクリくんが何で私を避けるのかも、カタクリくん本人のことも、よく知らない。
 夢だとか、そんなものの違和感は今は置いておいて。気になるなら埋めるしかない。
 未来のカタクリさんと、今のカタクリくんとの間に感じる差はなんなのか。
 いつもと違う探索をするんだ。
 カタクリくん本人に繋がる、探索を。

「……ビンゴ!」

 だって幸い、私には手がかりがあった。
 カタクリくん本人が黙秘を続けていようと、私がこの体質である限り、まどろっこしく聴取をする必要はない。
 盗み聞きをすればいいんだ。周りからの素直な話を。……褒められたことではないのは置いといて。
 そして私は、カタクリくんが例え海賊であろうと、どんな人間関係を築いていようと、いつの時代でも絶対的にカタクリくんの情報を持っており、もたらしてくれる人を知ってる。
 海賊という単語を出したのは、カタクリくん一人じゃないのだから。この船に乗っている可能性は高かった。

「──おい、ダイフク! そりゃ隣の部屋だって言っただろうが!」

 ……うん! 昔からこわいな、ちょっぴり!
 ピエロみたいな奇抜な格好は子供時代かららしい。未来と同じようにしっかり苦労していそうな長男を見て、笑みが深まる。

 ──さあ、ここからだ!
 君を知る、夢を見よう。
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