モードレッドを甘やかす

 モードレッドは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の犯人を除かなければならぬと決意した。モードレッドには理由がわからぬ。モードレッドは、円卓の騎士である。魔物を斬り、叛逆のために過ごしてきた。けれども女扱いと男扱いに対しては、人一倍に敏感であった。

「男主はどこだ!俺に毛布なんざかけやがって!」

 数分前のことだ。昼寝から目覚めたモードレッドは、自分に毛布がかかっていることに気づいた。

 人が集まるカルデアにおいて犯人候補は大勢いるため、一人に絞り込むのは難しい。ではなぜモードレッドは名指しできるのかというと、これが初犯ではないからだった。

「あ、モードレッド。起きたんだね」
「起きたんだね、じゃねーよ!毎回毎回、殺されてーのか?!」

 凄むモードレッドに、男主は持っていたバインダーで顔を隠した。

「ふわぁ」
「あくびしてんじゃねェ!!」

 鍛え上げられた豪腕から繰り出された毛布はピザのように回転し、男主の視界を覆った。しかし男主は慌てることなく、そのまま会話し始める。

「ごめんごめん、計測器の調整で眠れてなくてさ」
「……」
「モードレッド?あれ、帰った?」
「……」
「可愛い寝顔だったよ」
「テメェ殺すぞ!?」
「痛い痛い痛い!骨がえぐれる!陥没する!」

 流石英霊と言うべきか、布越しでありながら貫通しそうな指圧に男主は悲鳴を上げた。

「これに懲りたらもうやめろ。いいな?今度俺を女扱いしたら目玉にクレラント刺してやる」
「難しい話だなぁ。女扱いって言うか、好きな人を甘やかしたいだけなんだよ」
「…………やっぱ死ね」
「いたあああ!?脛は卑怯だ!!」

 卑怯呼ばわりされ、モードレッドは脛を抑える男主に飛び蹴りの助走を始めた。