08
『 ヒーローになって、……ッ 』
わたしの頭を泣きながら撫でた彼女が、最後にそう言ってわたしの前から永遠と姿を消した光景をなぜだか思い出してしまった
◇
国内最高峰のセキュリティーを誇る雄英、そんなセキュリティーをすり抜けていとも簡単に侵入してきた敵たちに わたしたちはどうすることもできずに固まってしまう
「 やはり先日のはクソ共の仕業だったか 」
「 はあ!?敵!?バカだろ! ヒーローの学校に乗り込んでくるなんてアホすぎる! 」「 先生、侵入者用センサーは? 」「 もちろんありますが…… 」
動揺するわたしたち。先日のは、ということはこの前のセキュリティ突破事件の話か… 噂によれば扉が粉々に崩れ落ちていたらしい、ということは相手側にそういう個性の人がいるのか…?
「 …現れたのはここだけか、学校全体か…… なんにせよ、センサーが反応しねえなら向こう側にそういうコトができる奴がいるってことだ。校舎と離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間割、…… 馬鹿だが阿呆じゃねえ。これはなんらかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ 」
「 13号避難開始!学校に電話試せ。センサー対策が頭にある敵だ、電波系のやつが妨害してる可能性がある。上鳴、お前も個性で連絡試せ 」
「 ッす 」
一芸だけじゃヒーローは務まらねえ、カッコよくそう言った先生が敵たちの方へ飛び込んでいく。次々と捕縛し、倒していく。パンチ、捕縛紐、足…… 多勢に無勢、体全体を使って、敵と戦う
13号の誘導のもと、1つしかない出入り口に真っ先に向かっていく
「 させませんよ 」
ぶわり、と先ほど この多くの敵たちをここまで運んできたであろうワープゲートの個性の持ち主が私たちを足止めする。また、嫌な汗が額を伝った
「 初めまして、我々は敵連合。僭越ながら、この度 ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴 オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして 」
「 は、…? 」
「 本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはずですが…、変更があったのでしょうか。まあそれとは関係なくわたしの役目は 」
耳を劈く爆発音、
「 その前に、俺たちに殺られることは考えなかったのか 」
「 っ あぶないあぶない… そう、生徒と言えど 優秀な金の卵… 」
「 だめだ、どきなさい2人とも! 」
「 私の役目は 貴方方を散らして嬲り殺す 」
「 ッ!? 」
靄の範囲が広がり、あっという間にわたしたちを飲み込んでいく。近くにいたはずの焦凍の腕をつかもうとしたが、その手は虚しく宙を掴んだだけだった。そして 薄暗い靄で視界が阻まれて、何が何だか理解できないまま、突如として光が目に差し込んだ
「 わ、っア!? 」
宙に放り出され、浮遊感に襲われ、身体が落下していくように感じた。眩しさから閉じでいた目を無理やり開くと、そこにはホールにいたはずの大量の敵が。空中でなんとか体制を直して無事に着地をする
「 蝕喰!? 」
「 ッチ腐敗女避けろ! 」
瞬間、息つく間もなく敵に容赦無く襲われた。攻撃を避けている暇もない。そのまま床に手をつけ、個性を使ってコンクリートの床を腐らせると、足場が脆くなっているせいで向かってきた敵が1つ下の階へ落ちていく。打ち所が悪かったのか、目を回して倒れ込んだまま
「 いきなり攻撃はずるくない……? 」
「 うぉー!お前の個性、そんな使い道もあんのか凄えな!? 」
「 言ってる場合かクソが!! このカス共さっさと片付けんぞ! 」
どうやら一緒に飛ばされてきたであろう2人はよりにもよって血気盛んなこの2人のようで。まいったなあ、と 己の身の安全だけを祈り、わたしも攻撃に参加した
「 女だ!女を狙えー!! 」
男2人、女1人、どう考えても標的は1番弱そうなわたしだよなあ、
一歩前に出て、彼ら2人とよく距離を置く
そして 少し力を込めればぶわり、と体を覆うように個性が出る。考えなしに手を突っ込んできた敵の1人が、腕に浮かび上がってきた黒い痣を抑えてその場に蹲る
「 ッ!?なんだコレは!? 」
「 考えなしに突っ込んでくるの、命知らずって感じで嫌いじゃないよ… わたしの身体から1メートル圏内はもう誰も入れないよ。考えなしにこの黒い靄に身体突っ込めば、瞬く間に腐り果てて死ぬけど 」
個性の使いすぎの代償として、わたしの身体にも黒い痣が所々浮き上がってくる。わたしの場合は別に腐らないし、死なないのだけれど
「 ッ! 」
脂汗を浮かべて、生唾を飲む敵たち。1番弱そうな女を殺せなくて残念だったね。中指を親指で弾けば わたしの個性が空気砲の如く相手目指して飛んでいく。飛び道具も欲しいなあ、なんて思って練習した甲斐があったものだ
「 ッは、なんだよ戦えんじゃねえか腐敗女 」
「 蝕喰めちゃくちゃ強えじゃん!ッしゃ!俺らもやるぞ爆豪! 」
「 ッるせぇ命令すんなクソ雑魚!! 」
◇
「 死ねーッッッ!! 」
爆発音とともに聞こえてきた暴言。全員まとめてボコボコにしたところで 先ほど同様に床を腐らせて、全員1つ下の階まで落とす。当分は目が覚めないだろう
「 これで全部か? 弱えな! よし、早くみんなを助けにいこうぜ。俺らが此処にいることからして、みんなUSJにいるだろうし… 」
「 そうだね、… おそらくこの中でカタをつけたいんだと思うよ、相手も… 」
「 だよな、…… それに、俺たちが先走ったせいで13号先生が後手に回った、先生があの靄吸っちまえばこんなことになっていなかったんだ…… 男として責任取らなきゃ! 」
「 行きてえなら1人で行け。俺はあのワープゲートぶっ殺す 」
「 はぁ!? 此の期に及んでそんな餓鬼みてえなこと… それにあいつの攻撃は 」
「 っせえ!! あのゲート野郎は敵の出入り口だぞ、いざって時逃げ出せねけよう元を絞めとくんだよ、靄の対策もねえわけじゃねえ 」
「 ちょっと2人とも今争ってる場合じゃ… 」
「 ペチャクチャ喋りやがって!その油断が 」
BOOOOM
「 つーか、俺らに当てられたのがこんな三下なら大概大丈夫だろ 」
「 ( 凄え反応… ) つーかそんな冷静な感じだったっけお前…… もっとこう 」
「 死ねえ!死ねえ!て感じ? 」
「 そうそう 」
「 俺はいつでも冷静だこのクソ髪野郎! クソ腐敗女!!! 」
「 ああ、そっちだ 」
「 ッけ、じゃあな 行っちまえ! 」
「 待て待て! ダチを信じる、男らしいぜ爆豪!のったよお前に!! 」
「 ちょ、ちょっと待って 」
「 ぁア!? 」
冗談はさておき、ズンズンと進んでいく爆豪くんと切島くんを制止させる
「 オールマイトを殺す、って言ってた。初見だと精鋭を揃えて数で圧倒してくると思ったの。だけど、違うよね?戦ってわかった、この人たち、わたしたち用の駒かな? … ただ個性を持て余したチンピラの寄せ集めだと思わない…? 」
わたしがあの場で見た限り、本当にやばそうなのはほんの数人。もちろん爆豪くんが言うワープ野郎もその1人だけど、…
「 オールマイトを殺せる算段が整ってるから 来たんじゃないかな… わざわざ駒まで使って 」
おそらく、考えたくはないけどこの雄英高校の中に誰か内通者がいる。いくらこの前のセキュリティー突破が彼らの仕業だとして、クラスの時間割を盗むのなんてほぼ無理に等しい話だ、
と、なると 誰かがこの人たちとつながっていて 情報を流したとしか考えられない
「 オールマイトが今この場にいないのにも関わらず、わたしたちに容赦無く襲いかかってきた…… 相澤先生だって、1人であんな人数を相手にするのにもいずれ終わりが来る。爆豪くんの言う通り、ワープの元を捕縛するのが正しい判断だとは思う 」
「 ンなことわかってんだよ 」
「 ワープには実態がある、」
「 ソコを捕まえりゃいいだろ。さっさと行くぞクソが 」
大股でこの倒壊ゾーンから遠ざかる爆豪くん。入試1位なだけあって、彼の判断力は凄いな
「 と、いうより 爆豪くんってあんな冷静なキャラだったっけ大丈夫?もっと死ね死ね言われると思ってたけど 」
「 俺もそう思うぜ蝕喰…… 」
≪ ◇ ≫