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−−PM 0:50
「 今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった 」
あの襲撃事件から数日、今日もいつものようにランチラッシュのご飯を頂き、午後からのヒーロー基礎学の授業となった
見ることになった、ということは 通常時は違うのだろうか、特例……?
「 はい!何するんですか!? 」
瀬呂くんが元気よく手を上げて先生に質問。一体どこから出したのか、rescueと書かれたパネルを見せられる
「 災害 水難、なんでもござれ。レスキュー訓練だ 」
「 レスキュー! 」「 今回も大変そうだな 」「 バッカお前これこそヒーローの本分だぜ!腕がなるぜ! 」「 水難なら私の独壇場 ケロケロ 」
「 おい、まだ話の途中……。今回、コスチュームの着用は個人の判断で構わない 」
" 中には活動を限定するチスチュームもあるから " 、と
訓練場は少し離れたところにあるみたいで、バスでの移動らしい。先生の 訓練開始、の合図とともに自席からたち、各々がコスチュームを棚に取りに行く。コスチュームの着用は個人に任せる、と言われても多分みんな、コスチュームを着たがるんだろうなあ… かく言うわたしもそうであるし…
着替える前に下ろしていた髪の毛を、後ろで一本の三つ編みにする。レスキュー訓練となると、髪の毛が邪魔になるし いちいち気にしてしまっては時間が勿体無いし…
そして ぴっちりとしたレザースーツ ( 命名 ) に足や腕を通し、最後にジャケットを着込めば完成。やっぱり少しボディラインを浮かしすぎたかな? 恥ずかしいなあ… と、思うけども、その胸を恥ずかしがることもなく露出している百ちゃんが、微塵の恥ずかしさのカケラもなく堂々としているものだから 逆になんだか恥ずかしくなってしまった
「 百ちゃんは可愛いし背も高いし、その上スタイルもいいし… 羨ましいなあ 」
「 あら、何を言いますの名前さん。名前さんだってお綺麗ですわ! その髪の毛の艶、羨ましい限りですもん! 」
「 え〜 百ちゃんのが羨ましい限りだよ 」
「 そうだ!今度一緒にお買い物に行きましょう!わたくし、名前さんのお洋服をコーデしたいですわ! 」
目をキラキラと輝かせる百ちゃんが可愛かったので何も言うまい。お買い物の約束を2人で密かにたてたのである
バスが出ている外に行けば、峰田くんが麗日さんのお尻を見つめていたので思わず2人揃ってドン引きしてしまった。この人は本当に本能に忠実と言うかなんと言うか……
ピピーー!!
「 1Aしゅうごーう! バスの座席にスムーズにいくよう 番号順で2列に並ぼう! 」
先日、わたしが保健室にいる間にどうやら委員長が緑谷くんから飯田くんに交代したみたいで… ( わたしはハナから飯田くんに入れていたのでなんも問題もないけど ) 委員長になった飯田くんがここぞとばかりに張り切り、笛をピッピと鳴らす
ソレが面白くて笑いながら2列に並んで中に入れば そう言うパターンか!と項垂れた
「 焦凍、隣いい? 」
「 ああ…… 寝るから着いたら起こしてくれ 」
「 寝るの?訓練場までそんな遠くはないと思うけど… わかったよ 」
窓に頭をつけながら瞼を下ろす焦凍、煩くしないようにしよう
前方の、向かい合う座席の方に座っている人たちが 色々な話で盛り上がっている。わたしはすることも無いのでバスに揺れる響香ちゃんの耳のイヤフォンジャックの揺れを見て楽しんでいるのだ
「 私、思ったことをなんでも言っちゃうの。緑谷ちゃん、あなたの個性、オールマイトに似てる 」
「 へっ!? 」
梅雨ちゃんと呼んで、と言われて顔を赤くしてもじもじする緑谷くん。オールマイトに似ている、と言われて慌てだす
確かに、シンプルな増強型だしオールマイトに似てるかもしれない… もっとも、オールマイトは彼みたく怪我なんてしないけどね
「 待てよ梅雨ちゃん、オールマイトは怪我しねえぞ! 似て非なるアレだぜ! 」
切島くん!握手! 解釈(?)が全く一緒だよオールマイトは怪我しないもんね!
「 しっかし、… 増強型のシンプルな個性はいいよな派手でできることも多い。… まあ、派手で強えつったらやっぱ轟と爆豪だな! 」
「 爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそう 」
間髪入れずに梅雨ちゃん ( そう呼んでと言われてしまった ) が突っ込みを入れる。そのツッコミが的確すぎて思わずケラケラと笑ってしまう
「 あっはは 確かに 」
「 ンだとコラァ!?出すわ!! 」
「 ほら 」
「 るっせえ!!つか何笑いながら同調してんだよ腐敗女!!ぶっ殺すぞ! 」
「 ボキャブラリー殺すぞしか無いの? 」
「 ンだと!? 」
ぐるりと物凄い顔で後ろに振り向いてくる爆豪くん。いや凄い顔。若干響香ちゃんが通路に引き気味である
「 この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるってすげえよ 」
「 クソっ…下水…ッ! 」
「 てめえのボキャブラリーはなんだこの殺すぞ!! 」
「 爆豪くんのボキャブラリーの薄さ 」
クソを下水で煮込んだような性格、て言葉選びのセンスが抜群の上鳴くんに、座布団を10枚はあげたい気分。笑いすぎて若干過呼吸気味になってしまってしんどい
「 低俗な会話ですこと… 」
「 でもこうゆうの好きだわたし! 」
「 名前めちゃくちゃに笑うじゃん。アンタ ツボ浅いんだね 」
「 いや待って クソを下水で煮込むは誰でも笑うでしょう 」
響香ちゃんに突っ込まれたが クソを下水で煮込むは誰でも笑うでしょ
そんなことで盛り上がっていると、相澤先生からもう着くと言われ、再び気を入れ直す
◇
バスから降りて辺りを見渡すと、特徴あるヒーローがわたしたちを待っていた
「 みなさん、待ってましたよ 」
スペースヒーロー13号。主に災害救助などを行なっているヒーローだ。その個性、ブラックホールを活かして 色々なものをチリにし、救助するという
「 早速中に入りましょう 」
「「 よろしくお願いします! 」」
開かれた自動ドア。倒壊した建物や水場、ドーム状に囲まれた施設だって、中には色々ある
「 すっげえ…… USJかよ 」
「 水難事故、土砂災害、火災、暴風雨、エトセトラ…… あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も " ウソの 災害や 事故ルーム " 略してUSJ! 」
「「 ( 本当にUSJだった…! ) 」」
本当にUSJだったよ、と全員が心の中で突っ込みを入れてしまう
「 えー、それでは 始める前に お小言を1つ2つ3つ4つ5つ6つ…… 皆さんご存知とは思いますが、僕の個性はブラックホール。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます。しかし、簡単に人を殺せる力です。みんなの中にもそう言う個性がいるでしょう 」
チラリ、とマスクの中が光ってこちらを見たような気がした
−− スペースヒーロー13号、
オールマイトとは違う意味で、わたしは彼に憧れを抱いていた。さっき、彼が言ったように、彼の個性だって簡単に人を殺してしまう個性。だけど、自分の個性を上手に使って人を助けるために活かしている。わたしが、憧れる個性の使い方をするヒーローの1人だった
「 超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しくすることで一見成り立っているようにも見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる行き過ぎた個性を持っていることを忘れないでください。相澤さんの体力テストで自身が秘めている力を知り、オールマイトの対人戦闘訓練で ソレを人に向ける危うさを体験したと思います。この授業では心機一転、人命のために個性をどう活用するかを学んで行きましょう。君たちの力は人を傷つけるためにあるのでは無い、助けるためにあるのだと言うことを心して帰ってくださいな…。以上、ご静聴ありがとうございました 」
「 素敵ー! 」「 13号ー! 」などの声が飛び交い、拍手が訓練場に鳴り響く
やっぱり13号は素敵な方だな、そう再認識せざるを得なかった。わたしもきっと、この個性を上手に使えるようになれば、彼みたいに……
「 よおし、そんじゃまずは… 」
ビリビリパチパチ、と訓練場の明かりが火を放つ。噴水のあたりからぶわりと黒い靄が渦巻き始めた
背筋が冷えた、よくわからないけど 変な汗が、脂汗が額を滲ませた
「 ひと塊りになって全員動くな!! 」
「「 !? 」」
「 13号、生徒を守れ 」
黒い靄の中からゾロゾロとたくさんの人が出てくる。あの靄はワープゲート…?
「 なんだありゃ!?また入試んときみたいにもう始まってるパターン!? 」
「 動くな!!! あれは…… 敵だ 」
「「 !?!? 」」
黄色いアイゴーグルを装着した相澤先生、嗚呼 彼もれっきとしたヒーローなのだと思い知る
−− それは、命を救う訓練の時に現れた…
≪ ◇ ≫