09
「 どっけ邪魔だデク!!!! 」
突っ走る爆豪くんの背中を追いかけながら USJの広場まで来てみれば、いつの間に来ていたのかオールマイトがそこにいた。半身を靄の中に突っ込んだままの、
緑谷くんを無視して靄の実態部分に襲いかかる爆豪くん。ここに来る途中で話した通り、靄には絶対に実態がある。実態がなくちゃ、あの時、2人の攻撃を避けた時に危ない、なんて言葉は出てこない。爆発されたら危ないところがあるからそう言ったんだ
爆豪くんがワープゲートを抑えた、わたしはあの化け物を仕留めること、… 中指を親指で弾こうとして狙いを定めていれば、何処からともなく現れた氷がパキパキと化け物の体を覆う
「 氷結!?轟少年か! 」
「 焦凍ッ 」
「 てめーらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた 」
「 おぉら……! あれ!くそ!いいとこで 」
「 スカしてんじゃねえぞモヤモブがァ! 」
「 敵連合、……… 平和の象徴はあんたら如きに殺せはしないよ 」
「 かっちゃん……みんな!!! 」
わたしたち3人と、ここまで駆けつけて来た焦凍、そして緑谷くん。オールマイトをいれればこちら側は6人、たいして向こうは3人。数はこちらの方が圧倒しているけど…… 相手の能力が未知数だから下手に動かない方がいい…
「 黒霧は、…出入り口を抑えられた… こりゃあピンチだなあ 」
「 ッは、このうっかり野郎め…、おい腐敗女!やっぱ思った通りだ。靄状のワープゲートになれる箇所は限られてる、その靄ゲートで実態部分を覆っていたんだそうだろ!? あんとき、全身靄の物理無効人生なら危ないっつう発想はねえもんなあ? 」
「 っ 」
「 動くなあ!怪しい動きをしたと俺が判断したら、すぐ爆発してやる 」
「 ヒーローらしからぬ言動 」
「 ッせ 」
「 …さて、どうする?敵連合さん 」
「 …… 攻略された上に全員ほぼ無傷… すごいなあ最近の子供は…… 恥ずかしくなるぜ敵連合……、 脳無 」
脳無、と呼ばれた化け物は無理矢理身体を起き上がらせる。焦凍の個性で覆っていた手足がパキパキと音を立てて、もげた
「 ッ! 」
超再生!?個性を複数持っているの?
いや…、もしかしたら 誰かから、与えられている? こんなに都合のいい個性を2つ持つことなんて滅多にない、…
仮に、もし 仮に、個性を譲渡できる人間がそちら側にいたとしたならば……、
「 脳無はお前の100%にも耐えられる様に改造された超高性能サンドバック人間さ… まずは出入り口の奪還だ、行け、脳無 」
「 ッッ!!避けてッ!!!! ッあぅっ 」
恐ろしいほどの爆風、立っていることさえままならず、身体が浮きそうになる。歯を食いしばって、なんとか耐えていると、やがて白煙がはれ、ワープゲートの側には脳無がいた
「 かっちゃん!! … か、っちゃん!?避けたの!?すごい…… 」
「 ちげえ黙れカス…… 」
「 じゃあどうやって…なら、あれは… 」
「 っ!オールマイト!!! 」
爆豪くんに変わって脳無に吹き飛ばされたオールマイト、スーツが破け、体には傷がたくさんある
「 俺はオールマイト、怒ってるんだ… 同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ善し悪しが決まるこの世の中に。何が平和の象徴、所詮抑圧のための暴力装置だ。暴力は暴力しか生まないのだと、お前を殺すことで世に知らしめるのさ 」
「 めちゃくちゃだな… そういう思想犯の目は静かに燃ゆるもの、自分が楽しみたいだけだろ嘘つきめ 」
「 バレるのはや… 」
「 3対6だ 」「 靄の弱点はかっちゃんが暴いた 」「 わたしたちだってヒーロー志望、ただ護られてるわけにもいかない 」「 とんでもねえやつらだが、オレらでオールマイトのサポートをすれば撃退できる 」
「 ダメだ、逃げなさい 」
「 どうして…っ!さっきのだって、焦凍がサポートに入っていなきゃ大変なことになっていたでしょう!? 」
「 それはそれだ、蝕喰少女…… 轟少年、ありがとな…… しかし、大丈夫。プロの本気を見ていなさい 」
グッ、と親指を立てて血を吐きながらも無理して笑いを作るオールマイト。何が大丈夫?血だらけで、そんな身体であいつらと戦ったってオールマイトが危険なだけなのに…っ
「 脳無、黒霧、殺れ。俺は子供をあしらう。さあ、クリアして帰ろう 」
一斉に3人が動き出す。おそらく主犯であろう男がこちらに向かってくる
「 おいやっぱやるっきゃねぇって! 」
切島くんの言葉に、わたしを含めた4人とも戦闘態勢に入って構える
−− 刹那、オールマイトからぶわりと物凄い気迫が溢れ出す
あの脳無と真正面からの殴り合いだ。殴り合いのその風圧が凄くて、思わず顔をしかめてしまう。動くことが許されないほどの風圧がオールマイトと脳無の間で繰り広げられている
「 っぐ!? 」
「 す、すげえ… 」
「 これが、…プロ 」
「 オール、マイト…… 」
オールマイトの一方的な殴りに、反抗する隙すらなく 押されている脳無。ショック吸収は限界があるんじゃないか?というオールマイトの仮説。それを示すかの様に永遠と100%以上の力で殴り続けている
「 ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの… 敵よ、こういう言葉を知っているか?…… さらに向こうへ " Puls ultra " 」
Pulsultra、
投げ飛ばされた脳無が宙を舞い、訓練場の屋根を突き破って外へ
ただ呆然と、見ていることしかできなかったわたしたち。プロの本気を、プロとはどういう仕事をしているのかを、この目で、この身をもって、体験してしまったのだ
「 コミックかよ… ショック吸収をないことにしちまった… 究極の脳筋だぜ 」
「 デタラメな力だ… 再生が間に合わないほどのスマッシュということか… 」
「 これが トップ… 」
「 プロの世界… 」
「 やはり衰えた、全盛期なら5発も打てば十分だったのに… 300発も以上も打ってしまった。さて敵連合、お互い早めに決着をつけたいね 」
「 衰えた…?嘘だろ、… よくも俺の脳無を 」
「 どうした クリアとかなんとか言ってたな、出来るものならしてみろよ 」
いつも、テレビで見ていた様な穏やかなオールマイトじゃない。その気迫だけで足が竦んでしまう
「 俺たちの出る幕はねえみたいだな… 緑谷、ここは引いたほうがいいぜもう! かえって人質とかにされたらやべえし 」
「 緑谷くん…? 」
「 緑谷? 」
様子がおかしい緑谷くんの名前を呼んでも、一向にこちらに向かってこない。主犯格の2人はなにやら話しているみたいで、首の皮がめくれるのではないかというくらい掻きむしっていた
そうしている間に、さきほど相澤先生に倒されていた敵達が次々に復活して起き上がってくる
「 主犯格はオールマイトがなんとかしてくれる。俺たちは他の連中を助けに行こうぜ 」
「 緑谷? 」
敵を倒すために動かしていた足を止め、緑谷くんの肩をつかもうとしたその時、一瞬で緑谷くんが目の前から消えた
「 緑谷!?!? 」
「 ッ 足、折れてる…ッ 今の衝撃で…! 」
緑谷くんが個性で思いっきり跳躍し、殴りかかろうとしている
「 緑谷く… 」
−− パァン
「 、…来たか!? 」
「 ッ!? 」
「 ごめんよみんな、遅くなったね! すぐに動けるものをかき集めて来た! 」
「 1Aクラス委員長飯田天哉、ただいま戻りました! 」
声の方を見れば飯田くんがたくさんのヒーローを連れて戻って来てくれた。13号に吸われながらもワープゲートがあの男を掻っ攫って消えた
消えたその場を見つめ、拳を握る
なにもできなかった、自分は、なにもできなかった。ただ、オールマイトが戦って傷つくのを見ていただけだった、…
「 わたしも、あなたみたいに、… オールマイトみたいに強くなりたいの 」
この日、わたしたちはプロとは何か、ヒーローとはなにかを身をもって知ったのだった
≪ ◇ ≫