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「 名前 風呂空いたぞ。……名前? 」
何度呼びかけても返事がねえから部屋の扉を開ければ、名前は布団の上で毛布も掛けず、寝息をたてて寝ていた
まあ今日は色々あって疲れたからな、
「 風邪、引くぞ 」
4月と言えど夜は相変わらず冷える。首元まで毛布をかけてやれば苦しそうに眉を顰めた。
−− そうえいば、
もう名前がウチに来て10年以上経つが、来た頃はいつも夜中に魘されていたなと思い出す
真っ白な肌にアッシュグレーの髪の毛、額に滲んだ汗に、髪の毛が所々張り付いている
整った顔、
絵に描いた人形のような容姿、
昔から綺麗だった、こいつは
『 だいじょうぶ? 』
同じ歳くらいの女の子が 傘もささずに小さな身体を凍えさせて公園のベンチに座っていた。お母さんと手を繋いで買い物に行った帰り道、何気無しに通った公園にお前はいた
『 だいじょうぶ、? ひとりなの? 』
自分が差していた傘にいれてやれば しくしくと静かに泣き出す。俺が泣いたとき、お母さんはいつも手を繋いで抱きしめてくれることを思い出して手を握ろうとした
『 っだめ! 』
『 ? 』
『 わたしの手に、触っちゃだめ! 』
『 こせい? 』
『 わたしの手に触ったら死んじゃうの… 個性、じょうずに使えないの…… 』
翡翠色の双眸から零す涙が、まるで宝石のようにキラキラ輝いていた
あ、綺麗だなあ、そう思った
目を閉じれば、昨日のことのように鮮明に覚えている。今思えば多分、同じような歳の友達が欲しかっただけだったんだと思う
半ば無理やり、俺のそばに置いておくと勝手に決めて、こいつの気持ちなんか何も考えずに、… それでも、焦凍のためならば、といつも言ってくれていた
俺が憧れたヒーローに、こいつも憧れて、一緒にヒーローになりたいと願って、… 雄英のヒーロー科に入って2人で頑張ろう、そんなことを言って
穴が空くほど魅入っていれば、視線に気がついたのか否か、ゆっくりと瞼を開き始めた
「 ……、しょうと? 」
「 目、覚めたか? 」
未だ半開きの目。いつもの癖で名前の頬に触れた途端、ぼろぼろと大粒の涙を零し始めた
俺が、綺麗だと思った翡翠色の瞳
「 どうした? 」
「 ゆめを、みたの 」
「 夢? 」
「 わたしを1人置いて、焦凍までいなくなってしまう夢 」
「 お前を置いていなくならねえよ 」
「 ほんとう? 」
「 俺がいなくなったらお前、ずっと泣き続けるだろう。だから置いていけねえよ 」
親指で唇に触れる。ふにふにとした感触、
「 俺はお前を残して死なねえ。俺が死ぬときはお前が死ぬときだ 」
約束だ、
≪ ◇ ≫