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「 どうして起こしてくれなかったの! 」

昨日の夜、疲れも相俟って 知らぬ間に寝入ってしまった為にお風呂を入り損ねていた。その上今朝の寝坊、マッハでシャワーを浴びてドライヤーで髪の毛を乾かして、とやっている間に焦凍は悠々と準備を済ませていた

「 一回起きただろ。そこからもう一度寝たお前が悪い 」
「 あうう…… 」
「 先行ってるからな 」
「 薄情者っ 」

ガラガラと玄関の引き戸をひいていなくなった焦凍の姿を目に焼き付けて心の中で罵倒した

朝ご飯を食べる暇もなく、せっかく用意してくれた冬美さんに ( と言ってももう仕事に出かけた後だから家にはわたしだけだけど ) 謝りのメールを入れて、急いで着替えて髪の毛をセットする。今日はヒーロー基礎学も、体育もない。全て座学だし下ろしてていいかな、

コテで毛先だけ緩く巻いて急いで家を出た。大丈夫、遅刻ではない ぜんぜん間に合う

何時もよりはだいぶ遅くなったが、学校にはぜんぜん間に合う時間である。駅からはゆっくり坂を登っていると、見覚えのある後ろ姿が。

「 爆豪くん? おはよう 」

息を整えて話しかける。案の定話しかけんな、と罵倒されてしまうけど

「 昨日は大変だったね〜。わたしあのあとお家帰ってから寝ちゃって今朝も寝坊してさあ 」
「 うっせえ黙れカス 」
「 昨日も思ったけど爆豪くんも上鳴くんに負けず劣らずのボキャブラリーだよね 」
「 ハァ!? 」
「 黙れとカスと死ねのイメージしかないかなあ爆豪くん… あ、あとうるせえ! 」
「 ッうるせえ!! 」
「 あっはは 」

キレる爆豪くんの横で笑いながら坂を登って仲良く(?)登校した





「 ねえねえ!昨日のニュース見た? クラスのみんなが一瞬映ってたでしょう!なんか私、全然目立ってなかったよね 」
「 確かにな 」
「 あの格好じゃあ目立ちようがないもんね 」

教室に着けば焦凍は涼しい顔をして座席についていたので、間に合った!と言えば そうか、とだけ返された。そして昨日のニュースの話題に。葉隠さんを優しく擁護する尾白くんに少しほのぼのしてしまう

−− 昨日のニュース、といえばもう言うまでもない。雄英高校敵襲撃事件である。実際に被害を被ったわたしたちが、ほんの一瞬ではあるが 保護されたシーンがメディアに映っていたのだ

「 しっかしどのチャンネルもけっこーでっかく扱ってたな 吃驚したぜ 」
「 無理ないよ、プロヒーローを輩出するヒーロー科が襲われたんだから 」
「 あの時先生たちがこなかったらどうなっていたか 」
「 やめろよぉ!?! 考えただけでもチビってしまう!! 」
「 うっせぇぞぉ!!黙れカス!! 」

朝指摘した爆豪くんのボキャブラリーについてだけど相変わらずだしなんかもう口癖なんだなあ

「 けど、流石オールマイトだよなあ。あのクソ強い敵を撃退したんだから 」
「 嗚呼、驚愕に値する強さだ 」

「 みんなーー!!朝のHRが始まる私語を慎んで席に着け! 」「 ついてるだろー! 」「 ついてねえのお前だけだ! 」

相変わらずの飯田くん。確かにみんな席についてるしついてないのは飯田くんだけだった。オロオロとした口田くんと麗日さんに慰められながら座る飯田くん

「 焦凍、今日のHR誰がやるんだろうね 」
「 さあな… 多分入院中だろうから… 」

「 おはよー 」
「「 ( 相澤先生復帰早ッッッッ ) 」」

「 先生!無事だったんですね! 」

いやあれ無事っていうのかな……?
顔のほとんどが包帯でぐるぐるに覆われていて、肘も敵の個性によって崩れてしまっていたからギプスで固定されている

「 俺の安否はどうでもいい。なによりまだ、戦いは終わってねえ 」
「 戦い? 」「 まさか 」「 また敵が? 」
「 雄英体育祭が迫ってる 」

「「 ( クソ学校っぽいの来た!! ) 」」

雄英体育祭、誰もが一度は見たことがある日本のビックイベント。かつてのスポーツの祭典オリンピックに変わるものだ

「 敵に侵入されたばっかなのに体育祭なんかやって大丈夫なんですか? 」「 また襲撃されたりしたら…… 」

「 逆に開催することで雄英の危機管理対策が磐石だと示すって考えらしい。警備も例年の5倍強化するそうだ。なによりうちの体育祭は最大のチャンス。敵ごときで中止していい催しじゃねえ 」

学校っぽい行事に浮かれるクラスメイトを傍目に、この間 校長先生に言われたことを思い出した。卒業後はプロヒーローのサイドキック入りがセオリー。当然名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる

「 時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に1回、計3回だけのチャンス。ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ。その木があるなら準備を怠るな。HRは以上だ 」

それだけ行って教室から出て行った相澤先生。相澤先生が出て行った後、さらにクラスでは盛り上がりを見せる

体育祭に出る権利のないわたしにとっては、関係のない話なんだけども。





4限目、セメントス先生の授業が終わり お昼休みに入る。いつもお昼を食べてる3人に、今日は焦凍と食べるからと断りをいれた

「 何頼むの?お蕎麦? 」
「 冷たいやつ 」
「 わたしは何にしようかなあ。あ、唐揚げ定食美味しそう唐揚げ定食にしよ 」

後ろの方から飯田くんと麗日さんの声が

「 気になるの? 」
「 ……緑谷出久とオールマイト、… 」
「 なんか似てるもんね、個性。オールマイトと何か関係でもあるのかな 」
「 …… それよりお前、話ってなんだ 」
「 うん、… ご飯来てから話すね 」


唐揚げのいい匂いが鼻腔を擽る
一口噛めば 肉汁が溢れ、匂いはさらに強く。美味しい〜と幸せな気分に浸ったところで 焦凍から話の催促が来る

「 体育祭の、ことなんだけど 」
「 体育祭? 」
「 うん、そう 」

あ、この顔だと何も知らないみたいだなあ

「 炎司さんから何も聞いてないの? 」
「 …なんの話だ 」
「 わたしが、雄英高校に通うにあたって、炎司さんから出された学校側への条件は3つあったんだって。そのうちの1つが、テレビの取材とかが来る学校の行事には出させない、らしいよ。…… まあわたしの顔が割れて、意地の悪いメディアに突かれたら困るもんね。エンデヴァーとしても、雄英側としても… 」
「 …… 親父のツラなんかどうでもいいだろ。それじゃあお前は何処からもエントリーこねえだろ… 」
「 エンデヴァー事務所からは来るでしょう 」
「 ッいいのかよ 」
「 まあ、しょうがないね 」

付属の漬け物を口に含めば あまり得意じゃない紫蘇の味がした

凍てつくような焦凍の双眸

「 あなたが、この体育祭で活躍して、良いヒーローになれるならわたしはそれでいいよ 」

笑ってそう言えば、酷く悲しそうに顔を歪めた

あなたはきっと、良いヒーローになれる