13
−− 体育祭当日
「 送ってくれて、ありがとう。ここからちゃんと観てるからね 」
わたし用に設置された観客ルームまで送ってくれた焦凍に激励を入れれば、下に俯いたまま 返事をして来た
「 … わたしは、」
この間のことがあってから、特にこれといって変わったことは無かった。と、言えば嘘になるけど クラスメイトたちはなにも変わらずに接してくれたし、いつものようにただただ時間だけが過ぎていった。変わったことといえば 時々すれ違う他学科の人たちがわたしを見てひそひそと噂をするぐらいだ
「 わたしは、みんなが憧れるような、わたしが憧れたヒーローになることは諦めたけど… 焦凍はみんなが憧れるヒーローになれるし、ナンバーワンヒーローにだって なれるよ、絶対。」
「 この体育祭で、1位になって、強くなる。だから 観ててくれ、絶対に負けない 」
「 …うん、ちゃんと 観てるよ 」
身体が千切れるんじゃないかってくらい強く抱きしめられる。わたしも彼の背中に手を回して、ありったけの力で抱きしめ返す
頑張って来た人に、頑張れなんて言うのは失礼だから、絶対に言わない。頑張ってるの、知ってるから
「 あなたのことを、応援しているから 」
◇
音を立ててしまった扉の向こう側を見つめる。応援しているからと言って笑った顔が頭から離れねえ。生徒は各クラス控え室で待機するように、そのアナウンスを聴いて重たい足を控室まで向ける
『 わたしは、みんなが憧れるような、わたしが憧れたヒーローになることは諦めたけど 』
小さい頃から、たった2人で、毎日泣きながら吐きながら喚きながら寄り添ってきた。俺もお前もオールマイトのようなヒーローに憧れて、オールマイトのようになりたいと願って、一緒に乗り越えてきた
誰よりも強くてかっこいいヒーローになりたい
その気持ちはなんも変わんねえのに、…
「 あ、轟さん…! あの、」
「 八百万… 名前のことか? 」
「 あ、… 」
「 体育祭には来ている。昼にでも会いに行ってやってくれ。きっとあいつもお前らに会えた方が嬉しいと思うし 」
「 っありがとうございます… 」
控え室に入ればもう全員揃っていた。よく目立つ緑頭を見つけて、そいつの名を呼んだ
「 緑谷 」
びくりと肩を震わせた
「 客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思ってる 」
騒めき立つ周囲を気にする必要もない
「 オールマイトに目をかけられてるよな 」
図星なのか否か、あからさまな動揺を見せる。こいつの過去に何があるのかは知らねえ、ただ俺は、
「 まあ別にそこは詮索するつもりはねえが…… お前には勝つぞ 」
お前にも勝たなくちゃいけねえから、
「 ぼ、僕も…! 」
冷や汗を滝のように垂らしながら、ぎこちない様子で、それでいて目には確かな意思を持って 口を開く
「 ……と、轟くんが、… なにを思って僕に勝つのかは分からないし、客観的に見ても実力は君の方が…… 上だと思う… でも! み、皆んな目標があって全力で向かってるんだ… 他の皆んなもトップを狙ってる! 僕も、遅れを取るわけには行かないんだ…!! 」
「 だから僕も、本気で取りに行くッ 」
◇
《 雄英体育祭! ヒーローの卵達が我こそはと凌ぎを削る年に一度の大バトル! どくせあれだろうこいつらだろ〜〜!? 敵の襲撃を受けたにも関わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新生! 1年A組だろ〜〜!? 》
プレゼントマイクの煽りアナウンスとともにクラスメイト20人が神妙な面持ちで入場してくるのが映った。飯田くんを先頭として。その中にはよく目立つ焦凍の姿ももちろんあった
A組に引き続き、ヒーロー科B組、普通科C.D.E組、サポート科F.G.H組、経営科I.J.K組。全11クラスの入場を終え、この体育祭についてのルールや概要が説明される
《 選手宣誓!選手代表、1A爆豪勝己! 》
「 爆豪くんが選手宣誓するんだ… 俺が一位になるとか言いそうだなあ、この人 」
《 せんせー、俺が一位になる 》
本当に言ったけどこの人、… 爆豪くんの選手宣誓に思わずドン引きしてしまう
会場も微妙な雰囲気になったところで1種目目 障害物競争が始まる。ルールは簡単、約4キロもあるスタジアムの外周を沿ってとにかくゴールすればいいだけ。個性を使うのも有り。ただし、公平を期すためにヒーロー科のコスチューム着用のみ不可、いたってシンプルで簡単なルールである。まあ、その種目の名前にもなっている通り、" 障害物 " 競争なのでただのかけっことは訳が違うのだが
ミッドナイトの説明が終わり、それぞれゲート前の入り口に集まる。テレビ越しでもわかるぎゅうぎゅうさ…
ゲート前にはすべての生徒が集結し、我先にと前へ前へ集まる。焦凍は何処にいるんだろう、目をよく凝らして画面を見つめていればプレゼントマイク ( と、相澤先生 ) の実況解説が始まる
《 さぁて実況してくぜえ! 解説アーユーレディ!? ミイラマーン! 》
《 無理やり呼んだんだろうが 》
《 早速だがミイラマン! 序盤の見所は!? 》
《 今だよ 》
相澤先生のその言葉とともに合図が鳴り響き、一斉にスタートしだす、はずなのだが。ぎゅうぎゅうに押し固められていたせいで中々動き出せない生徒達
−− パリパリパリ
《 スタート地点が最初の篩だ 》
氷が出現し、足元を凍らせた。反応できなかった一般生徒達はその場で身動きを封じられる。言うまでもない、焦凍の個性だ。1人悠々と先走り、単独トップで走る
これを予測していたのか否か、A組の面々は次々に焦凍の背中を追って行く。爆豪くんを筆頭に百ちゃん、切島くん、青山くん…… そして、峰田くんまでもが
と、そこで峰田くんが言葉通り何かに投げ飛ばされて宙に舞う
《 さーあ!いきなり障害物だあ! まずは手始め、ロボインフェルノ! 》
「 これが…… 」
ロボインフェルノ、クラスのみんなが言っていた一般入試用のロボ、
「 でもこれも、敵じゃあないね 」
再び氷を使ってロボの動きを封じこむ。微妙なバランスのところで凍らせたのがなんとも彼らしい。自分1人、下の空洞の中を通ってまたもや1人単独トップ。焦凍が作り出したその空洞の中を通って先へ進もうと考えている人は浅はか。次の瞬間、ロボは音を立てて崩れ落ち、空洞さえも塞がれてしまった
《 1A轟! 攻略と妨害を一度にィ! こいつは痺れる! すげえな一抜けだ! 》
ロボインフェルノの倒壊で下敷きになってしまった人が見えた、あの赤い頭はおそらく切島くん。でも彼の個性ならあまり問題はないのかな
《 1A 切島が潰されてたあァァァァ!!大丈夫かよ! 》
プレゼントマイクは相変わらず楽しそうに実況するなあ
切島くんの個性は " 硬化 "。体を硬化することが出来る。使い方によっては近距離戦では無敵と言える個性。実際、どの位硬いのかは不明だけど 今こうやって、ロボの下敷きになってもほぼ無傷、コンクリートよりも硬いのでは?
切島くんが呼吸を整えているところで、隣のロボの山もグラグラとぐらつき始めた。中から出てきたのは この間、A組に乗り込んできたB組の、…
《 鉄哲も潰されてた〜!? ウケる!! てかアレだな! お前ら似た者同士だなオイ!! 》
てつてつてつてつくん(?)
見た限り、彼の個性は切島くんの個性の鉄バージョン、みたいな感じ。似た者同士だなあ
2人が謎の共鳴をしているところで、爆豪くんと瀬呂くん、そして常闇くんがロボの上から第一関門を難なく突破して行く
障害物競走第一関門、ロボインフェルノ
現在一位 : 1A 轟焦凍
≪ ◇ ≫