05
テスト期間の休日返上で山の麓にある小さな墓地に足を運んだ。なんとなく、あの場所に行かないといけないと思った、本当になんとなく。
梅雨明けしたはずなのに、今日は生憎の雨模様で 激しい雨が傘を容赦なく叩きつける。泥で泥濘んだ道を一歩一歩、滑らないように進む、
お墓参り用にと持ってきた1輪の花を花生けにさすが雨ですぐに元気を失い、くたりと茎が折れてしまった
それが無性に腹立たしくて仕方がない。雨のせいで元気を失ってしまったことくらいわかっているのに、まるでお前からの花はいらないと否定されているような気がしてどうしようもなかった
花でさえも、わたしを拒むのか。お前はそうやって死んだ後も、わたしを憎み嫌うのか。死人に口なし、だから態度で示そうと言うのか、…… お前が全部悪いのに、?
さしたばかりの花の茎を勢いよく掴めばいとも簡単に朽ち果てた、ざまあみろ。お前の最後もこんな風に醜く腐って終わったんだよね、
「 久しぶり、…… 相変わらずわたしのことが憎くて嫌いみたいね 」
泥がついた靴で墓石を蹴る、何度も。馬鹿みたいに蹴って馬鹿みたいに自分の気持ちを晴らそうとした、
「 わたしもお前のことが変わらず大嫌いだよ、おとうさん 」
これはわたしの贖罪なんだ
◇
「 今日は、何の用? 」
数回訪れたことのあるバーにまた足を運び、カウンターに座っている死柄木弔を見る。今日はあの気持ち悪い手形、してないんだ
「 先生に会うからついて来い。お前の個性について先生からも聞きたいしな 」
「 せんせい? 」
「 黒霧、開け 」
「 わかりました 」
もう慣れたもので、その靄に足を突っ込む躊躇さえ無くなり 死柄木の背中を追うようにワープゲートをくぐる。すぐに靄の視界は晴れ、よくわからない研究室のような場所へたどり着いた
「 先生、」
「 やあ弔。よく来たね、それにその子もちゃんと連れて来たんだね 」
「 先生が連れて来いっつったんだろ 」
声が出るかと思った。先生、と呼ばれてる男には幾つもの管が繋がれていた。暗くてよく見えないこの部屋で、その男だけが異彩を放っていたんだ
「 君が蝕喰名前か 」
「 … あなたは、? 」
「 弔のように先生とでも呼んでくれ 」
「 …… 」
名乗れよ。
其方側にはわたしの情報はダダ漏れなくせに、此方側には自分の情報は死守しておくなんて信用されてないんだ、わたし
もっとも、信用なんていらないんだけど
「 早速だが 君のその個性を僕に見せてくれないか 名前。腐蝕じゃない、もう一つのとっても素敵な個性を 」
「 その前に一つ質問いいですか、先生。あなたはわたしのこの個性のことを、誰に聞いたんです? わたしのこの個性について、保護者代わりである人と 大事な人にしか教えていません。この秘密を共有しているのはわたしを含めて3人だけ。…… あの2人が口を滑らすとも考えにくい。だとしたら先生、あなたはどうしてわたしのこの個性を知っていたんです? 」
「 僕は君のことをなんでも知ってるよ 」
「 ッ 答えになってませんが? 」
「 そのうちわかるさ、僕がなんで君の個性について知っていたのか。でもその時、君はきっと吃驚しちゃうね 」
ははは、なんて 何も面白くないのに笑い始める先生。答えになっていない、なぜわたしの個性を知っていたのか。敵側に個性を見抜く個性を持っている人でもいるの?
厄介な個性の持ち主がいなければいいのに
「 おい先生、くだらない話はさっさと終わらせろ。早く本題に入ろうぜ 」
「 ああそうだね弔、すまない。名前、君のその個性で僕の個性を奪ってごらん 」
「 え、…… そんなことしたら無個性に 」
「 僕も君と同じ個性さ。没個性一つ無くなったくらいで慌てたりしない。さあ、個性を使ってごらん。どんな個性を奪ったっていいさ 」
個性を奪うには負荷がかかるんだ。例えば、自分の身体と相性の悪い個性を取り込んでしまえば個性をうまく操ることができなく暴走させたりしてしまう。奪った個性で自分自身をも殺してしまうことがある。ホイホイ奪えるものじゃないんだ個性は
個性の発動条件は相手に触れること
椅子に座ってる先生に近寄り、控えめに触れれば ぶわりと頭の中にその人が持つ個性の情報が入ってくる。この人、どんだけ個性を持っているの
筋肉増強の物はわたしの肉体が耐えきれなくてきっとまともに使えない、瞬間移動は既にあるからワープゲートとかそういうものもいらない。浮遊関連のものもいらないな、戦いにあったところで使えない個性なんていらない
「 あ 」
いいな、この個性
「 本当に好きなもの奪っていいんですか? 」
「 構わないさ、君のためになる個性を持っていくんだ 」
掌に意識を集中させて個性を自分に取り入れる。ぞくぞくぞく、びりびりびりと身体に悪寒に似たようなものがはしる。この感覚が苦手で仕方がない、奪ってしまった、個性を
「 君が何を僕から持ってったのかわかる日が楽しみだね。使いこなせるといいねその個性 」
「 …… お話はそれだけですか? 」
「 弔、この子を大切にするといい。この子はいずれ 君にとって掛け替えのない大切な子になるさ。手放しちゃあいけないよ 」
「 先生、俺が餓鬼嫌いなの知ってるだろ 」
「 まあそう嫌な顔をしない。この子のこの個性があればオールマイトなんてすぐに殺すことができる。この子にはそれくらいの力がある。必要に応じて、僕からもこの子に個性をいくつか与えていくつもりさ。」
「 …… 帰る。」
また会えたらいいね、なんてそんなこと思ってないくせに 先生はわたしに言ってくる。わたしが今、どんな個性を奪ったのかも全て知ってるつもりなんだろうか
" オールマイトなんてすぐに殺すことができる " " この子にはそれくらいの力がある "
怖い、わたしがまた 人を殺してしまう日が来るんじゃないかって思えば、怖くて怖くて仕方がない
殺したくない、オールマイトを。平和の象徴を殺したくなんかない、
「 …… おい先生から何の個性を盗んだ 」
「 増幅の個性。筋肉増強とかはわたしの肉体が耐えきれないし、あっても意味のない没個性なんていらないし…… 増幅の個性があればもっと強くなるかな、て思って 」
「 へえ… 」
まあ、半分嘘だけど
≪ ◇ ≫