01
真っ赤なネクタイが印象的な真新しい制服に身を包んで 少し短めのスカートの裾をひらりと翻しその場で一回転。スカートの下から覗く血色の悪い白い脚がなんとも言えない。かと言って、太ももあたりまで覆うようなニーハイソックスや それよりも少し短いハイソックスは好まない。踝より少し長めの、それでも脹脛は隠れない程度の黒色のソックスを履く
和室にはアンバランスな洋風のドレッサーの前に腰を下ろし、綺麗に毛先を巻くために 癖のついた髪の毛をストレートのコテでまっすぐ伸ばしていたところで、襖の向こうから「 入るぞ 」と、少し遠慮がちな声が聞こえる
そんな遠慮がちな声とは裏腹に、わたしが返事をする前よりも早く引かれた襖の向こうには、白と赤のツートンカラーがとてもよく似合うあなたが立っていた
「 どうしたの? 」
熱く熱したコテを危なくないように机の上に置いて、あなたの方へ振り向けば わたしの前までズカズカと歩いてきた
「 …… おれは、」
自身の左の手のひらを見つめ、そして強く握りしめて何かを覚悟したかのように 色の違う双眸でわたしを見る
「 戦闘において絶対に左を使わない。左を使わないで お母さんの右だけで1位になることで、アイツを完全否定する 」
あまりにも真っ直ぐな双眸でわたしのことを見るものだから おもわず笑ってしまった
「 なれるよ、… あなたなら、絶対 」
立っているあなたを下から見上げるように笑いかければ、冷たい右手でわたしの頬を優しく撫でながら あなたも目を細めて笑った
「 お前のことも、俺が必ず守る 」
そう言って、するりと冷たい手が頬から離れたと思えば その手はそのまま熱したコテを握り、優しい手先でわたしの毛先を緩く巻いていく。時折首筋に触れる手が擽ったくて クスクス笑ってしまう。そうして数分、全体が上手に巻けたところでコテの電源を落とす
「 ありがとう、焦凍 」
「 ……美人だな、お前 」
「 え、… なあに、どうしたの急に 」
なんの前置きもなく、急にわたしのことを美人だと褒め称えてくる焦凍に困惑してしまう。あなたもだいぶ整った顔をしてますよ、なんて脳内で思いつつ 笑って誤魔化す
もう仕事に出かけてしまった冬美さんに 2人揃って制服を着た写真を送るために、顔を近づけて自撮りをする。相変わらず笑うことを知らないのか、いつもと変わらない無表情で写真に写る焦凍
「 焦凍くんは笑う努力をしようね 」
「 ? 」
「 冬美さんからなんて返信来るかな 」
「 その写真、俺にも送ってくれ 」
「 はあい 」
焦凍とのトーク画面を開いて、要望通りにさっき撮った写真を送る。送り終えたのを確認し、そして最後にもう一度、姿見で自分を確認。鏡に向かって作り笑いを。深く息を吸う。うん、大丈夫… 変じゃない。大丈夫、大丈夫… 上手に取り繕えてる
スクールバックよりリュック派。冬美さんが入学祝い、と言って買ってくれたリュックの紐を掴んで背負い、いざ 出陣
2人仲良く肩を並べて、重くも軽くもない足取りで玄関まで。
置いてある茶色いローファーに足を通せば、どこからどう見ても、正真正銘の雄英高校に通う女子高生だ。引き戸式の玄関を出て空を見上げる。昨日までの降っていた雨が嘘のような 雲ひとつない、光が眩いほどの晴天
「 あのね、」
わたしの歩幅に合わせて歩いてくれる焦凍の制服の裾を掴んで止まる
さっき、わたしに真剣な顔で伝えてくれたあなたに、今度はわたしが伝える番だ
「 わたしも、絶対憧れたヒーローになりたい。だから、あのね、わたし 頑張るから…… 」
ぎゅ、と強く握りしめた裾が少しだけシワついてしまった。新しい、制服なのに、ごめんね
「 … 名前なら なれる、絶対に 」
さっきわたしが言ったように、わたしにそう返してくれた。それだけで、嬉しかった
「 ありがとう、焦凍 」
かみさま、
わたし、頑張って人並みの人生を歩むから、
だからどうか、憧れたヒーローに近づくことができますように…
≪ ◇ ≫