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《 第11戦目 蝕喰名前 vs イレイザーヘッドの戦闘を開始する 》

「 轟、実際蝕喰ってどんくらい強えんだ? 」
「 ……… さあな 」
「 喧嘩してるからってツレねえぞ轟! 蝕喰んこと1番知ってんのお前だろ 」
「 …… 名前が実際、どれくらい強えのかは知らねえ。俺はあいつの本気を、一度も見たことがねえからな 」
「 え…… 」
「 そ、… それって名前、今までのヒーロー基礎学とかも全部全力を出し切ってなかったってこと…? 」
「 …… 本気を出してなかったとか そういうワケじゃねえんだが…… ただ、本気のあいつは確実に俺たちより強い 」
「 じゃあこの戦い、…… 」
「 蝕喰の本気が見られるってことか? 」
「 ………… 」

「 ( この場にいる俺以外の人間が あいつの本気を見れる日は、多分来ねえよ。あいつがもう1つの個性を隠してる限りは ) 」





『 お前はちょっとだけルールが異なるな。俺にこのハンドカフスをかける、もしくは 』

「 もしくは、どちらか一方が行動不能になるか、か…… 」

直前の 爆豪くんと緑谷くんの演習には鳥肌がたった。どちらも本気だった。あ、この2人 多分今この瞬間、生まれて初めて一緒に何かをなしたんだろうなあって思った、

爆豪くんにどこか引きがちでいた緑谷くんも、緑谷くんを見下し続けていた爆豪くんも、この時間だけは 2人は対等になったんだなって

どこの組みもすごかった、必死で戦ってた、… クリアできなかったペアもいるけど、2人で協力してプロヒーローと戦っていた。これが 優秀なプロヒーローの卵、か…

なんてことを考えているうちに ブザーが演習場に鳴り響いたので 急いで戦闘態勢に入る。焦凍と百ちゃんの時は少しだけ手を抜いていたみたいだけど、そうとはいかなさそうだなあ今回は

と、いうか わたしが勝つためには相澤先生を再起不能にするかハンドカフスをかけるか、か… わたしが再起不能にされたら補習決定だな

「 どこから来るかもわからないし… 抹消ヒーローイレイザーヘッド、個性を消されたら向こうに分がある 」

個性の発動条件は恐らくその目で見てる時、瞬きをする一瞬だけは個性の発動が途切れる。その一瞬が狙い目なのはわかるけど、わたしの個性じゃあそんな一瞬でカタをつけられるワケではない……

かといって スクリーンの向こう側には既に演習を終えてるクラスメイトたちがいるし、腐蝕以外の個性を使うわけにはいかないし、

「 ちょっとだけ悪戯しちゃお 」

ついこの間、先生から奪った増幅の個性で腐蝕の威力を倍増して、… そうしたらきっと先生は個性を使って個性を消して来る…… から、その前にわたしが先生の個性封印してしまおう

「 考え事か蝕喰! ずいぶん余裕そうだな 」
「 ッぐ、… 」

音もなく、どこからか現れた相澤先生に早速捕まってしまう情けない。特殊合金の捕縛紐が身体中に巻きついて、指一本動かすのでさえ一苦労

「 制限時間は30分、30分間ずっと俺に捕まってるわけにもいかないだろ 」
「 相澤先生こそ、… わたしがこの紐千切れないとお思いで? 」

この状態で30分もいるわけにはいかない、… 自由のきく右手で紐に触れる。すごい、ちょっと触れただけで一瞬で紐が腐り果てる… とても良い個性を奪ってしまったのかもしれない

「 ッ!? 」
「 驚いてます!? 炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ " 捕縛武器 " も大したことないですね! わたしの前では何の意味もない! 」
「 思ってねえよ 」
「 ッ! 」

容赦無く飛んできたナイフ、… 4戦で見せた撒菱以外にもまだ暗器が有ったのか…

避けきれなかったナイフが頬を掠める

「 わたしの反応があと0.5秒でも遅かったら死んでたんですけど…… 」

向こうはわたしが避けることも計算内なんだろうが。まだ個性を使われてない、… 紐は千切れたから使って来ることがあればそれはもう向こうが勝ちを確信した終盤、… ナイフ、撒菱、… あと他に武器は?

「 ッ 思ってた矢先から…! 」

再び投げつけられたナイフ、これくらいの火力ならわたしに届く前にナイフは腐って落ちると思っていたのに…ッ

「 抹消ヒーローッ 」

空気を切る音がして、直後、左手に痛みが走った。頬よりも深く切られた…ッ

腕に巻いていた包帯が切れてパラパラと解け床に落ちていく。火傷の跡が外気に晒されてジクジクして痛い、

ダメだ、運動能力は圧倒的に向こうの方が上。足の速さだって身のこなし方だってわたしより遥かに上回ってる。ならわたしにできることは? どうやってこのハンドカフスを先生の腕につける? 懐に入り込まないと付けられない、懐に入ったら手首を拘束されたりしない?

ダメだダメだ、まとまらない……ッ

「 どうした蝕喰、焦りが顔に出てる 」
「 ……ッ 」

わたしが逃げ続ける策はあれど、わたしが勝てる策が何も思いつかない…ッ

わたしは1人だし、誰かに助けを乞うこともできない、ダメだどうしようなにも考えられない

「 少し、話たいことがある 」
「 はなし…? 」
「 確かにお前は 特待生の名の下の入学だったが 成績は何の問題もない。合理性に欠くよ、特待生制度も… 」
「 なんの、話ですか 」
「 もしお前が一般入試で雄英に入ってたら お前の覚悟もなんか変わってたか? 」
「 は、? 」
「 他のクラスメイトと一線を置いてる。自分は他とは違う、自分じゃヒーローになれない、そう思ってるか? 」
「 ッ 」
「 どんな形であれ、雄英に入ったなら 真っ当なヒーローになる為の努力をすべきだ 」
「 真っ当なヒーローッ!? わたしが、… わたしが小さい頃に憧れてしまったヒーローに、わたしなんかがなれるわけない…ッ 」

オールマイトみたいになりたいと小さい頃に願ってしまった、でもそれが叶わないことはもう十分にわかってる、

わたしなんかがヒーローになったところで、誰かを救える日が来る訳がないんだ、

わたしは自分の個性で人を殺してしまった、それがどんな経緯であれこれからヒーローになりたいと願う人の行動ではない、許されることではない…ッ

「 この個性でもう二度と誰かを殺したくない、役になんか立てない傷付けることしかできない…… 誰も救うことなんてできない…ッ ヒーローになれないよ、先生 」

小さい頃、小さな箱の中で見る わたしの憧れていたその人は、自信に満ち溢れた表情で登場して、そして いつも変わらずこう言った

" もう大丈夫、わたしが来た " と。

「 オールマイトみたいになれないよ、…ッ 」

オールマイトみたいになれない、爆豪くんみたいに2つを守れるほど強くなんかない、… 焦凍みたく目的のために真っ直ぐ生きることができない、

わたしがここにいる価値がなにもない…

「 どうしよう、… お願い、助けて先生ッ 」





《 蝕喰名前、条件達成ならず 》

ブザーの音と共に、戦闘終了のアナウンスが流れた。スクリーンの向こう側には 辛そうな顔をした2人だけがいた、

相澤先生と、名前

結局30分間、一騎打ちで戦いまくったが 名前が相澤先生にハンドカフスをかけることはできなかった

泣いてこそはいないが、顔を歪めたまま。そんなあいつに先生は何かを言っていた

「 映像しか流れねえからなに言ってっか全然わかんなかったけどよ、… 」
「 名前さん、辛そうな顔をしてますわ… 」
「 蝕喰…… 」
「 名前… 」

名前が嘘までついて何を隠しているのかは知らねえ。いつまでもくだらねえことで喧嘩してるつもりもさらさらねえ、… けど、あいつが自分で前に進まないと何も意味がないんだ…

でも俺は絶対にあいつの味方でいて、もしあいつが間違った道に行こうとするなら俺がちゃんと正してやるから、……

「 お前の帰るところに俺がなってやるから 」