08


「 名前お帰り! ご飯できてるよ 」
「 冬美さん、ただいま。食欲なくて具合悪いから部屋戻るね…… ごめんね、せっかく作ってくれたのに 」
「 え 大丈夫? 薬だけ飲んでおこう? 」
「 大丈夫! 心配かけるねごめんね 」

疲労しきった重たい身体を引きずって自室まで行く。制服も脱がずに布団の上に倒れこむ、疲れたんだ…

『 どうしよう、… お願い、助けて先生ッ 』

「 なんであんなこと言ったんだろう… 」

あの時の相澤先生、驚いた顔してたなあ… いきなりあんなこと言えば誰でも驚くか……

何に対しての助けてだったんだろう、…? 自分でさえわからないのに 先生はもっとわからなかったんだろうなあ…

「 … 馬鹿らしい 」

わたしは勝手にわたしのやり方で生きる。それが全部正しい道じゃないことくらいわかってるけど、わたしはわたしのやり方で守ると決めた。たとえわたしがそれで悪になったと、しても…

悪になったとしても…?
あれ、それって 悪なのかな?

わたしにはそれしか選択肢がなかった… わたしには正しい選択肢はそれしかなかったから悪なんかじゃない? でも世間一般的に見ればそれは悪になるわけで、…?

あれ…… ねえ、待って

悪って、なんだ?





「 名前〜〜ッ! 」
「 わっ、ぷ! おはよう三奈ちゃ…ッ!? 」

後ろに重みを感じて振り向けば 恐ろしいほど涙で顔面を濡らした三奈ちゃんがいた

「 ど、どうしたのッ!? 怪我したの!? 」
「 名前〜〜 女の子2人で仲良くお留守番しようね〜〜! えぐ、…ッ 」
「 お留守…? あ〜 林間合宿の話? 」
「 補習は林間合宿行けないよ〜ッ 」

わんわん! 教室のど真ん中で泣く三奈ちゃんの周りに不合格 ( と思われる者 ) たちがわんさか集まってきた

切島くん、砂藤くん、上鳴くん、三奈ちゃん、そしてわたしに、瀬呂くん

「 みんな…ッ 合宿の、…… 土産話、… 楽しみにしてるから…ッ 」
「 まだわからないよ! どんでん返しがあるかもしれないよ!? 」
「 よせ緑谷、…… それ、口にしたらなくなるパターンだ 」
「 フラグ…! 」
「 試験で赤点とったら合宿に行けず補習地獄… そして俺たちは実技クリアならず…! これでまだわからんなら貴様の偏差値は猿以下だ〜〜〜〜ッ!! 」
「 ィギィヤァァァアアッ! 」
「 うぅ… 」

目潰しされてる緑谷くんをみてしまってわたしも目が痛い目潰しされた気分だ…!

「 落ち着け長えよ! それに、わかんねえのは俺もさ。峰田のおかげでクリアしたけど寝てただけだし 」
「 瀬呂くんめちゃくちゃさっきまで他人事だったよね?? 口に出したらなくなるパターンだとか言って他人事だったよね!? メンタルどうなってんの…… 」
「 とにかく! 採点基準が明かされてねえ以上は 」
「 同情するならなんかもういろいろくれー!!!! 」

ガラララ

「 予鈴がなったら席につけ 」

シーーン

「 おはよう。今回の期末テストだが残念ながら赤点が出た。… したがって 林間合宿は全員行きます 」
「「 どんでん返しきたッッ 」」
「 いっていいんスか俺ら!? 」
「 ほんとにぃ〜? 」
「 ああ、赤点者だが筆記の方は0。実技で 切島、上鳴、芦戸、砂藤、蝕喰…、あと 瀬呂が赤点だ 」
「 いぃっ!? やっぱり… 確かにクリアしたら合格とは言ってなかったもんなぁ 」

いややっぱり赤点なんじゃん瀬呂くんも

「 今回の試験、我々敵側は生徒に勝ち筋を残しつつどう課題と向き合うかみるように動いていた。でなければ課題云々の前に詰むやつばっかだったろうからな 」
「 本気で叩き潰すとおっしゃっていたのは!? 」
「 追い込むためさ。そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点取った奴こそここで力をつけてもらわないといかん。合理的虚偽ってやつさ 」
「「 合理的虚偽〜〜!?!? 」」
「 しかし2度も虚偽を生じられると信頼に揺るぎが生じるかと!? 」
「 わはぁ、水差す飯田くん 」
「 確かにな、省みるよ。ただ、全部嘘ってわけではない。赤点は赤点だ。お前らには別途で補習時間を設けてる。ぶっちゃけ学校に残ってよりの補習よりキツイからな 」

林間合宿での赤点補習… なんだろう。時間外補習ってことだし戦闘? やっぱり実技でクリアならなかったからまた戦闘訓練かなあ…?

ともあれ筆記は赤点0人だったのよかった。実技で引っかかった人たち、割と筆記も危なかったメンツだからなあ…

「 話は以上だ。蝕喰、ちょっと話がある 」
「 え、… あ はい 」

椅子を乱暴に引いて廊下に出て行く相澤先生の後を追いかけた。急に名前を呼ばれてしまったからびっくりした……

なんだろう、話。実技演習の時のかな…

相澤先生の後ろをついて行けば入ったのは談話室。中にはポットや冷蔵庫、毛布などここだけで生活できそうな日用品がたくさん揃っていた

ソファに座れと促され居心地の悪いまま座っていると 紅茶が出された。飲めということか?

「 え、いや… わたし1限目英語が… 」
「 1限目はマイクの授業だろ? アイツには予め言ってあるから気にするな 」
「 はあ…… 」
「 さて、話だが… 」

鋭い眼光で見つめられて思わず肩を揺らしてしまった、その目、嫌だなあ

「 実技の時の話ですか? 」
「 概ね 」
「 あの時は気が動転してました、あんな姿見せてしまってすみません… 」
「 いや、それについてはいい。蝕喰もまだ15の子供だからな 」
「 … まあ、」

確かに15の子供ではあるが…、

「 で、本題だ。俺のコレを個性で腐らせた時、なんて言ったか覚えてるか? 」
「 … 大したことないですね、… え、そのことについて怒ってます?ごめんなさ 」
「 違う。その前 」
「 ……? 炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ " 捕縛武器 " も大したことない? 」
「 その前、」
「 えっと、……? 」
「 覚えてねえか… まあいい。お前は開口一番、" 驚きました? " って、俺に言ったな? 」
「 え、あ、… 確かに、驚きました? て聞きました、… 少し驚いた顔をしていたのがアイゴーグルの下から見えたので… 赤い目、見開いて吃驚してましたよね? 」
「 なんで俺が驚いたと思った? 」
「 なんでって、特殊合金の縄をわたしの個性でダメにされたからでは? 」
「 そこは計算内だった。お前が本気でその個性を使って来るなら人1人くらい殺せる。アレだってすぐに使い物にならなくなるとわかっていたからな 」
「 え、…… じゃあなんで 」
「 お前は今確かに言ったよな? アイゴーグルの下から俺の " 赤い目 " が見えたって 」
「 あ、……… 」
「 俺はあの時確かに個性を使っていた。が、なんでお前は個性を使えた? 」

わたしは確かにあの実技で少し悪戯をしてやろうと思って個性を使おうと思ってた、それは確かだった…。けど、結局使う暇なんてなかったと思ってた

無意識に、出してしまっていた……? 自分の身に危険を感じたってこと? あそこで? 勝手に個性が発動した? わたしの意思とは関係なく……?

「 だんまりか? … じゃあ質問を変えよう。蝕喰、腐蝕以外の個性を持っているな? 」

あ、バレる…

「 …… この部屋には監視カメラも、盗聴器も何もない。この部屋には今俺と蝕喰だけだ。校長も呼んでない。この意味がわかるか? 」

どうしよう、バレた、どうしよう……
本格的に軟禁される? 炎司さんに怒られる、? 敵側と繋がってるのも芋づる式にバレたりする? あ、どうしよう…

「 蝕喰、落ち着け。」
「 それを知って、… わたしをどうするの… 」
「 別にどうもしないさ… 隠してたのには何か訳がある。他の誰かに言うつもりもねえ 」
「 せんせい、… 」
「 特待生制度は合理性に欠く… お前も普通のヒーロー科の一員だ。他の奴らと違う扱いをする気なんてサラサラない。入学した時のお前の目は 確かにヒーローを目指す者の目だった。他の奴らとなんら遜色は無かった、…… 」
「 ッ 」
「 俺はお前にも、立派なヒーローになって欲しいと思ってるよ 」