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「 林間合宿の準備はどうよ 」
「 準備もなにも… 」
「 まあお前にとって最後のヒーローごっこになる、楽しめよ名前 」
「 わかってるよ、…… わたしの最後のヒーローごっこの時間すら邪魔しにくるんでしょう 」

−− 林間合宿前日、神野区

「 邪魔するって人聞きが悪いなァ? 迎えに行くだけだろお前のことを 」
「 名前ちゃん! わたしが絶対にお迎えに行きます! 可愛い可愛い名前ちゃん! 」
「 おいイカレ野郎黙れよ お前はお前の役割をちゃんと果たせよ 」
「 わかってます! 」

死柄木弔、黒霧、トガヒミコ、荼毘、… そして最近また新たに増えたトゥワイス、マグネ、スピナー、コンプレス…… 敵連合のメンツに囲まれるようにバーの椅子に腰をかける

酷く居心地が悪いことには変わりないが

「 合宿先、本人たちにも何も知らされてないみたいですね 」
「 数人の教師しか知らないみたいだし、探っても無駄だと思うけど 」
「 それは心配に及びませんよ蝕喰名前。我々は必ずあなたのことを迎えに行きますから 」

一生迎えに来なくていいのに。黒霧に出されたアイスティーをズズッと啜り、頬杖をつく

明日から始まる1週間の林間合宿。個性の強化合宿みたいなもので、どこで行われるか知っているのは教師の中でもごく一部。万が一の内部漏洩に備えてのことだ。当然、生徒であるわたしが知っているはずがない。なのに余裕そうなこの人達。信用すべき内通者がいるのかもしくは、そういう個性を持った人がいるのか……

どうせ、内通者が誰なのかもわたしには教えてくれないんでしょうけど

「 先生からもらった個性はどうだ? 」
「 馴染んでるよ、何回か使ってみたし。悪くはないと思う。増幅だからわたしの腐蝕と掛け合わせで使ってるだけだし周りにもバレてない 」
「 ならいいが 」

死柄木は時折、個性の心配をする。わたしが今までどれだけ必死に他の個性を隠してきたと思っているのだろう、うまく隠せるに決まっているのに

アイスティーの最後の一口を勢いよく啜って、カウンターから立ち上がると スピナーの鋭い視線が刺さった、

「 じゃあわたし、明日早いからもう帰るね 」
「 送りましょうか? 」
「 大丈夫、ありがとう黒霧。ちゃんと自分で帰れるから 」
「 名前ちゃん、帰っちゃうの? 」
「 そう、またねトガちゃん 」

あーん! もっと名前ちゃんといたいです! なんて駄々を捏ねるトガヒミコの声を聞かずに カラン、とバーのドアのベルを鳴らしてあの居心地の悪い空間を後にする、

トガヒミコと荼毘、死柄木弔に黒霧は置いといて、後の人たちの刺すような視線が痛かったなあ。雄英の餓鬼がなんでこんなところにって感じの視線。わたしだっていたくているわけじゃないし、いろいろ察するなりなんなりしてほしい

「 楽しい楽しい林間合宿、か 」

楽しい時間なんてほんのひと時、
瞬きをすれば地獄に変わる林間合宿、

「 そういえば、あの人たちの個性ってなんなんだろう 」

思えば、死柄木と黒霧の個性しか知らないなあ。トガヒミコの個性だって、荼毘の個性だってイマイチよくわかってない

て、いうか あの2人の素性もよく知らないし

「 まあ どうでもいっか。どうせ何日後かにはあの人らの個性わかるし 」
「 オイ 」
「 ッ!? 荼毘… 」

壁に背中をピタリとくっつけた荼毘。音も気配もなくわたしの後ろにいた

「 俺の個性が合図だ 」
「 荼毘の個性…? わたし知らないけど 」

徐に話し出す。いや、わたしお前の個性のことなんも知らないんだけど。眉を顰めてそういえば 目の前が一瞬にしてぶわりと青い炎に包まれた

「 ッあ!? 」

じわりと鼻の頭が焼ける、
思わず一歩背後に寄ろめいてしまってその場で尻餅をついてしまう

「 青い炎が見えたら俺の元へすぐ来い 」
「 ……… 青い炎 」

ゆらゆらと荼毘の掌から出る青い炎。

綺麗だなあ、… なんて





「 …… 死柄木、蝕喰名前に伝えなくてよかったんですか 」

今さっき、ベルの音を立てていなくなった女の名前が黒霧の口から紡がれた

荼毘が追うようにこの部屋から去っていく。アイツ、やけに名前のことを気にかけるな

「 爆豪勝己の事か? 言ってどうする 」
「 いえ、別にそういうわけでは 」
「 あの女との約束は何も破ってないだろ。轟焦凍には手を出していない、」

そう、轟焦凍 " には " 危害を加えていない。何も約束破りなことは、してないよなあ?

「 まあ名前にちょっとしたサプライズだよ。1人じゃ寂しいと思ってさ 」

そう、ちょっとしたサプライズ。1人で雄英を裏切るには寂しすぎると思って、優しい俺らからの サプライズだ

「 爆豪勝己と名前を捕まえたら撤退して良い。2人に傷はつけるなよ、大事な仲間なんだから。そして できる限りの餓鬼共を殺してこい 」