ーー 3日目
「 名前〜〜朝だよ 」
「 無゛理゛…… あと10時間寝させて 」
「 そんな寝たら1日終わるって 」
ゆさゆさと身体を揺すられてくっ付いてしまった瞼をなんとかこじ開けた。響香ちゃんがわたしを、百ちゃんが三奈ちゃんを必死で起こしていたのだ。ごめん、
目を閉じて半ば寝たまま着替えれば前後ろを逆に着てしまうし、歯磨き粉を床にぶちまけてしまったし、襖の角に小指ぶつけてのたうち回ってしまうし…
厄日だ
「 あ、男子もう来とる 意外と早いねえ 」
「 ケロ 飯田ちゃんがみんなのこと起こしたんだわきっと 」
「 やっぱ男子も補習組潰れてんね 」
百ちゃんの腕につかまりながら食堂に行けば、朝食のいい匂いがした。けど、今はその匂いがめちゃくちゃ気持ぢ悪い゛
ゆらゆらとその場から離れて、朝ごはんなんかよりも睡眠!そう思っていると横からご飯が乗ったお皿を渡された
「 むり… 」
「 食わねえとぶっ倒れんぞ 」
「 食わなくていいから寝たい 」
「 食え 」
「 ぉえ 吐いちゃう無理無理! 」
無理やり口の中に鮭の切り身を入れられた。骨はなくて食べやすいけど、そうじゃなくて…
◇
「 補習組!動き止まってるぞ! 」
「「 あ゛ぁっス!! 」」
眠たい目を擦りながら重たい身体になんとか鞭を打つ。未だ眠すぎて視界がしょぼしょぼする
結局あのあと、焦凍にされるがまま、なんとか無理やり胃の中に押し込めたけど相変わらず気持ち悪い゛
「 スイマセン…… ちょっと眠くて 」
「 昨日の補習が夜中の2時までやるとは… 」
「 瀬呂くんと上鳴くんが寝たせいで1時間延長コースだし… ぉえ 」
「 スイマセン… 」
「 朝は7時だし…… 」
「 だから言ったろキツイって。個性の強化だけじゃない。なにより期末で露呈した立ち回りの脆弱さ。お前らがなぜ他のクラスメイトたちより疲れているか、その意味をしっかり考えて動け 」
「「 ッはい 」」
目をなんとかこじ開け、のそりのそりと昨日の特訓場所に足を運ぶ
寝ればすぐに腕は回復するし、今日も今日とて自分を痛みつけてプルスウルトラ!
やる気を出して今日の目標設定。
とりあえず己の限界を知る!
そもそも、個性の強化をしてる訳だけど、腐蝕の最大火力ってどれくらいなんだろう。たくさん使えば使うほどコントロールがしにくく難しくなってくるんだけど、……
暴走してしまってみんなを巻き込んだらたまったもんじゃないし、ピクシーボブの個性で厚さ1メートルくらいの土流で壁とか作ってくれないかな、…? その壁の中で大暴れして自分の限界を知りたいかも
そう思ってすぐにピクシーボブの元へ急ぎ足で向かう。ちょっと遠目の、人目につかない森の中で土流の壁を作ってとお願いすると快く、注文通りの壁をすぐに作ってくれた
「 は〜いできた! いつでも呼んで! 」
「 ありがとうございます! 」
「 しっかし 厄介な個性ね〜! 」
「 まあ、…… ヒーロー向きではないと思いますしね、わたしの場合 」
「 ふふ、… でも使い方、しっかりマスターすればきっと強いヒーローになれるよ 」
強い、ヒーロー
思い描く強いヒーローは 当たり前のオールマイトで。わたしたちの中のヒーロー像は固定されつつある。本当の意味での強いヒーローってなんだろう
「 あなたはどうしてヒーローに? 」
「 護りたかったから。立ちはだかる悪意から自分を、家族を、周りのみんなを、」
「 …… あなたは強いヒーローだ、」
「 ヒーローやってる人なんてみんなそうよ。護りたいからヒーローやってんの。君も何か護りたいものがあるんでしょう 」
護りたいもののために、自分を犠牲にするのはわかる。護りたいから、ヒーローを目指したのもわかる、
わかる、けど
「 頑張れ、未来を担うヒーローの卵 」
わたしは ヒーローとして護りたいものを護ることを諦めてしまったんだ、
「 強いヒーローなんかになれないよ 」
◇
トントントン、
「 爆豪くん包丁使うのうまー! 以外やわあ 」
「 以外ってなんだコラッ!? 包丁に上手い下手なんてねェだろ! 」
「 でた、久しぶりに才能マン 」
「 ギャー! 蝕喰! それ人参じゃねェ! それは俺の手だ!! 辞めろ!! 」
「 ェ… めっちゃごめんめっちゃ人参だと思って掴んでたし切る気満々だった… 」
「 頼む疲れてんなら包丁持つのやめてくれ 」
「 おい腐敗女ァ!! テメェ役に立たねえんなら米でも炊いてろや! 邪魔だクソが! 」
「 辛辣…… えんえん 泣いちゃった 」
「 あー! 爆豪が蝕喰のことなーかせた! 轟にチクってやーろう! 」
「 小学生かテメェら!! 」
「 みんな元気すぎ…… 」
包丁グループを追い出されてしまったわたし ( と、上鳴くん ) は 致し方なくシクシクと飯盒チームに合流
まあ あのまま包丁握ってたら間違いなく誰かのこと刺してたな! 疲れた!
「 あ、そーいえば蝕喰よ 」
「 ん〜? なあに 」
「 よおやく轟と仲直りしたんだな! なんか安心したわ。お前らが喋ってないの違和感っつうかなんつうか 」
「 合宿始まっていつまでも喧嘩してるわけにもいかないし、もともとわたしが焦凍の機嫌損ねちゃったからわたしが悪いの。謝ったらすぐに許してくれたし、むしろ周りに迷惑かけちゃってごめんねって気持ち 」
「 人間誰でも喧嘩はするし気にすんなよ 」
冷たい水に腕を突っ込んでシャカシャカとお米を洗いながら話す。喧嘩の件は本当に周りにも気を使わせてしまってたみたいで申し訳ない、
「 花火の時はごめんなー。耳郎と切島がお前ら2人のこと面白がってよ。俺は待ってた方が良いっつったんだけど 」
「 あっはは 上鳴くん必死に弁明しすぎ! 別に良いよ。爆豪くんが穴場?に連れて行ってくれたし綺麗によく見えたし 」
「 へえ。なんか以外だな 」
「 以外? 」
「 いや、お前ら2人、元々乗り気じゃなかったし 俺らが先に行ったこと知ったらすぐに解散すんのかなって思ってたし。だから蝕喰からのメッセージ見て、俺は驚いたけど切島と耳郎は予定通りって言ってたし。え、なに お前ら2人そういう関係だったの? 」
「 ええ めちゃくちゃに誤解! 別にわたしと爆豪くん、何ともないし。わたしもわたしでお粧ししたのにこのまま帰るのはもったいないかなって思ってたら 爆豪くんが人混みの中電車なんか乗ってられっか〜!なんていって 人の少ないところまで連れていってくれたの。あ、花火綺麗だったよねえ 」
「 話逸らすなよ… いや花火は綺麗だったけど。ていうか お前、てっきり轟のこと好きなのかと思って 」
「 焦凍? まあ好きだけど別に恋愛感情はないかなあ。小さい頃から一緒にいすぎて兄妹みたいなもんだし。てか てっきりってなに 」
「 別に深い意味はないけど…… まあ俺は! お前は美人だからどっかの悪い男に誑かされねえかちょっと心配してるだけ! 男はしっかり選んで付き合えよ! 」
「 悪い男って…… あっはは 上鳴くん、わたしのお父さんみたい 」
「 じゃあお父さんって呼んでも良いぜ 」
「 はいはいお父さん 」
「 なんか適当かよ… 」
「 きっと上鳴くんがお父さんだったら、幸せだったんだろうなあって 」
「 …… 蝕喰は今、幸せじゃねえの? 」
「 ん〜? 幸せだよ〜。どんな形であれ、こうして雄英に入ってみんなと出会えて、こうやってみんなと一緒にヒーロー目指せて、今が 人生で一番幸せだよ? いつ壊れるかわからないこんな不安定な日常だけど、1秒1秒が幸せなんだ、わたしにとって 」
「 じゃあこれからもっとみんなで思い出作ろうぜ! 林間合宿終わったらクラスのみんなで花火やろう! 花火だけじゃなくて夏祭りとかもあるだろ? それに夏休み開ければ学校祭とか学校っぽい行事がまたあるし、… 確かにヒーロー科って忙しいけど、たまには息抜きだって大切だと思うし、思い出たくさん作ろう! 」
「 花火! いいねえ。見るのも嫌いじゃないけどやっぱ手持ち花火が楽しいところあるしねえ! あ、じゃあ この林間合宿が無事に終わることができたら、みんなでやろうか花火 」
「 無事に終わることができたらって… まあいろいろ死ぬかもしれねえが終わることはできんだから 終わったら花火やろうぜ 」
指切りげんまん、
嘘ついたら針千本のーます
指切った