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ーー 翌日
「 あー! 轟! なんでいんの? 」
緑谷の見舞いのために落ち着かねえ身体をなんとか落ち着かせて病院に来れば 馬鹿でかい声の切島に話しかけられた
「 お前こそ 」それはこっちのセリフだ、そう思い聞き返す。" 家でじっとしてらんねえっつうか " と、珍しく弱気な切島。
嗚呼、思うことはみんな一緒だろう
「 …… そうか、俺もだ 」
緑谷や他に入院してるクラスメイトのことが心配で、攫われた名前と爆豪のことを考えたくなくて、黙っているだけじゃこの気持ちをどうすることもできねえ
だから 少しでも気を晴らそうとこうやって、ここまで来ちまった
「 轟、悪い 」
「 …… なんのことだ。俺は切島に謝られるような覚えなんざねえが 」
「 いや、… 蝕喰の、ことで 」
「 名前…? 」
名前のことでも謝れる覚えはねえが
「 あの時、俺、蝕喰の近くにいたんだ…ッ 」
「 …… 」
「 あんな近くに居たっつうのに 蝕喰のこと、護りきれなかった…ッ すまねえ轟ッ 」
" あんな近くに居たのに "
『 なあ おい、轟焦凍。良かったのか? 名前の大事な手を離して 』
『 またね、』
『 ッ名前!!!! 』
「 …… 切島だけのせいじゃねえ 」
『 絶対憧れたヒーローになりたい。』
「 … それに あんな近くに居たのに護れなかったのは、俺もだ 」
掴み損ねた爆豪のことだって、
離しちまった名前の手だって、
後もう少し、もう少しだけ手を伸ばしていれば 届く距離にいたんだ、
「 切島だけの、せいじゃねえよ 」
◇
「 … なあアレって 」
「 八百万、… と オールマイトに警察? 」
「 んの話してんだ…? 」
盗み聞きっつうのは趣味じゃねえが、この際しょうがねえ。警察が来てるということは 八百万になんらかの協力を求めているのか、… それとも、なんらかの証拠を掴んだというのか…
轟と2人、泥棒よろしくスタイルでバレねえよう 会話を盗み聞く。ボソボソと、断片的に、微かに聞こえる
「 クッソ、もう少し大きく喋ってくれ 」
「 大事なところが聞こえねえ… 」
「 B、…… 泡瀬さ、……していただき、敵の… に発信器を取り付け…… こ、… その信号を受信す、デバ…… です。捜査にお、… ください 」
発信機、取り付け? 信号を受信?
なんの話だ、… B組の泡瀬って… なんの個性だ? あわせ、泡瀬……
だめだ、まとまらねえ…
「 ありがとう八百万少女! 」
クソ、オールマイトのお礼が聞こえたところであんま意味がねえ…! 八百万、もう少しでかい声で喋ってくれ…!
「 発信機を受信するデバイス、…… 」
「 デバイス? 」
「 発信機を取り付けた相手がどこにいるかわかるもんだ。八百万はそれを敵の1人に付けたってよ 」
「 なるほどなあ…… よくあんな途切れ途切れの単語からわかったな轟 」
「 少し考えりゃわかんだろ 」
「 ッぐ、… 」
言い方には気をつけろ轟…!!
でも、そのデバイスがあれば爆豪や蝕喰のいるアジトがわかるってことだろ? そんならそのデバイスを八百万にもう一回作ってもらって、…
「 あとは私たちに任せなさい! 」
「 ッやべ 隠れろ! 」
オールマイトと警察が八百万に頭を下げ、こちらを振り向く。間一髪のところでなんとか身を隠し、見つからずにやり過ごす
俺たちとは反対方向に2人が帰って行くのを見てホッと安堵する。
「 轟、」
「 ああ、八百万に聞いてみよう 」
俺が言うまでもなく、轟も同じ考えだった。やっぱりこいつも、爆豪を、蝕喰を助けたいんだよな。こいつだって 悔しいはずだよな、
一か八か。八百万に断られればその先には進めねえし、かと言って 八百万が快くいいですよっつって受け入れてくれる勝算も無い。
「 八百万にデバイスを作ってもらって、俺たちの手で あいつらを助けに行こう。まだ、手の届くところにいるんだ 」
「 ああ…… 打算もねえが、このまま あいつら2人がいつまでも敵に捕らえられて無傷でいられる確証もねえからな 」
2人で意を決して八百万の病室に乗り込む。頭に巻かれた包帯があの日の惨状さを酷く物語っている。八百万だって、敵に襲われて瀕死の重傷を負った身。でも、八百万にしか頼めねえことなんだ、
「 よお、八百万 」
「 ! 切島さん、… 轟さんまで…! どうしましたのこんなところで? 」
「 怪我は大丈夫か? 」
「 ええ。幸い頭が少し切れていただけですわ。こんなに包帯を巻かれましたがそこまで重傷じゃありませんもの。明日にでも退院できる身ですわ 」
「 そうか、… よかった 」
「 そ、それでよ、八百万。お前にお願い事があるんだ 」
「 お願い事…? 」
茶を濁す訳でもないが、言いづれえ。
一個人の感情で動いていい問題じゃないからこそ、言いづれえ……
俺が受信機を作ってくれと言い淀んでいると轟は何の躊躇いもなく口を開いた。
「 さっき オールマイトと警察に捜査のためにと渡していた受信デバイスを作って欲しい 」
「 受信機を、作って欲しい? 」
「 ああ、頼む 」
「 理由は言わなくてもわかるだろう 」
轟の芯のある言い方。動揺したのか、八百万が目を見開いて、ぽかんと口を開けた。そうして数秒、言ってる意味を理解した八百万は苦虫を潰したような顔で「 …ッ 少し、考えさせてください 」と小声で漏らした
「 ッ! その受信機があれば 爆豪も、蝕喰だって助けることができるかも知んねえんだ! なあ八百万、頼むよ。お前だって悔しいだろ、心配だろ!? 蝕喰と仲が良かったお前なら 心配してないはずねえよな!? 」
「 わたしだって! わたし、わたしだって 名前さんのことも 爆豪さんのことも、みんなのこと 心配ですわ、… 当たり前ですわ…… でもッ 」
「 悪い八百万。でも、わかってくれ 」
八百万は轟を信頼している。だけどそれとこれは別の話だったか……
俺たちは自ら、敵陣に突っ込んで命を無駄にするのと同じようなものだし、敵に危害を加えられてる八百万が その辛さ、痛みを一番わかってるつもりだろうし…
すぐに答えを出してくれねえことくらい、わかってたよ
「 すぐに、お答えすることができませんわ。すみません 轟さん、切島さん… 」
「 … わかった、考えるだけ考えてくれ八百万 」
「 明日、… 明日の夜までに頼む 」
今日1日、安静にな。それだけ伝えて 重たい空気が流れた病室から出る。
「 八百万、どうかな 」
「 …… さあな。でも結局は、あいつ次第だから俺たちがどうこう言ってもしょうがねえよ 」
≪ ◇ ≫