05


「 え、えええ お祭り? 」

核の周りに張り巡らされた瀬呂くんの個性。確かに核には近づけないと思うけど

「 ッシャア!来い!!! 」

やる気満々の切島くん、瀬呂くんに聞こえない様に溜息をつく

砂藤くんの… なんだったっけ シュガー、…? とりあえず、砂藤くんの個性は切島くんとのタイマン向けかな、… 口田くんの個性がいまいち把握できていない今下手に動くのは愚策かなあ

わたしの個性を下手に使ったらこの瀬呂くんが張り巡らせてくれたテープが腐って切れちゃう…

「 ってなんでそのテープが短冊みたいにバラバラに切れちゃってるの!?切島くん! 」
「 いや、悪いなんかテンション上がっちまって硬化したまま瀬呂のやつ触れちまって… 悪いって瀬呂! 」
「 切島〜〜!?せっかく俺が核のこと守ってたのに何してんだよ! 」
「 悪いって!! 」
「 とりあえず貼り直す? あ、やだ 時間ないしそろそろヒーローが来ちゃうよ 」
「「 いやいや蝕喰、もう来てるけど 」」
「 え 」

入り口に背を向けて2人と話してるわたしからは完全に死角だった。2人は入り口を指差しながら、確かにそう言った

「 え、わっア!? 」

振り向こうとした瞬間、襟を掴まれて自分の身体が宙に舞ったことに気がついた。ふわりとしたその感覚がぞわぞわと背筋を擽る

砂藤くんに投げ飛ばされたのだ、

「 蝕喰! クソ!砂藤よくも蝕喰を! 」

いいぞ切島くん!仕返ししてやれ!3対2、数はこっちの方が有利なんだし!

なんて宙に舞いながら気持ちだけ応戦していれば、瀬呂くんのテープがわたしと砂藤くんに巻き付いた

「 はい確保〜〜! 」
「 クソー!瀬呂! 」
「 ォワーー!?!? 瀬呂!てめぇ!男らしくねえぞこんなん!! 砂藤の拘束解け!! 」
「 いやいや、俺たちは防衛する敵サイドなんだから… あ、蝕喰大丈夫だったか? 」
「 瀬呂くんありがとう… 空中で体勢整えるの苦手だったからすごく助かったよ 」

シュルシュルと体に巻き付いたテープを解きながらお礼を言う。その間も、相変わらず切島くんは 男らしくない、だの 仕切り直しだ、だの 騒いでいるが 瀬呂くんは全く聞き入れていない

拘束されてる砂藤くんを他所に、きゃんきゃん口論を辞めない切島くん瀬呂くん

「 さて、と… あとは口田くんだけだけど… 」

その肝心な口田くんはどこにいるんだろう… きっと砂藤くんは、対切島くん用の囮だったんだろうなあ、なんて思いながら核の方を見れば 恥ずかしそうに口田くんが核に触れていた

《 ヒーローチーム!WINNNNNN!!! 》

「 〜〜〜!! 」
「 っ!口田ァ!?!? 」
「 やられたー!! 」

3人揃って頭を抱えて膝から崩れ落ちた、
いや、ギャグか

「 まって!もう!切島くんが男気ないとかアホなこと言うから!バカ! 」
「 ちょ、バ!? 俺のせいかよ!? んなこと言ったってテープで拘束なんて男気ねぇだろ! つか蝕喰意外と口悪いな!? 」
「 いや、もうこの際男気どうのは問題じゃなかったよ切島… 」
「 瀬呂くんの言う通りです… 」

3人醜く床におでこをつけながら反省している。砂藤くんの笑い声が聞こえたので後でシメようと思った


「 お疲れさん! 緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし、真剣に取り組んだ。初めての訓練にしてちゃ、みんな上出来だったぜ! 」
「 相澤先生の後にこんな真っ当な授業…… なんだか拍子抜けというか… 」
「 真っ当な授業もまた私たちの自由さ! それじゃ、私は緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室にお戻りぃぃいい! 」

何をそんなに急いでいるのか、… 土煙を出しながら激ダッシュで帰っていくオールマイトの後ろ姿を見つめながら、本日何度目かの溜息を吐く

あの戦闘訓練は本当に頂けないでしょう… いやわたしが協力プレイ向いてないだけだけど…

どのみち1番最初に吹っ飛ばされてしまった自分の不甲斐なさに呆れてしまった。敵に背を向けない、基本中の基本だ。ああもう、もっと頑張らないと…

「 名前、」
「 ? お疲れ、どうしたの 」
「 頬に擦り傷出来てるぞ 」
「 え、やだ 本当? 」

生憎鏡がないので自分では確認できないし… そう思っていると、徐に焦凍の冷たい右手が、何時ものように頬に触れた。傷口から少し血が出ていたのか、親指で何度か強く擦られる

「 いた、いたた…… ねえ ちょっと力強いけど 」
「 血が固まって取れねえ 」
「 後で水で洗い流すよ 」
「 そうか 」
「 うん、ありがとう 」

少し眉間にシワを寄せていたが、大丈夫な旨を伝えると すん、とした真顔に戻った。多分焦凍、そんな真面目な顔してるから クラスのみんなから一線引かれてると思うけど…、と 声には出さずに 男子更衣室に消えていく焦凍に手を振る

完全に消えたのを見て、わたしも重たい足取りで女子更衣室を開ければ、すでに着替え始めていたクラスメイトたちがニヤニヤとこちらを見ていた

「 な、なに…? 」
「 見ちゃった〜〜! 」
「 名前さん!轟さんとはどういうご関係でありますの!? 」

ニヤニヤする三奈ちゃんに百ちゃん。麗日さんもわたしを微笑ましい眼差しで見てくる

「 焦凍との関係…? 」
「 キャー!名前で呼んでるの!? 」
「 お二人はおつきあいをされてますの!? 」
「 そういえばウチ、昨日名前と轟が一緒に帰ってんの見たよ 」
「 キャーー!やっぱりそういう関係!? 」

女子だ……!
そういう匂いがプンプンするお話に食いつくなんてさすが女子だ……!!

「 わたしと焦凍は付き合ってないよ。幼馴染なの、小さい頃からの 」
「 ちぇ〜 なあんだ!つまんなーい! 」
「 三奈ちゃん…… 」

一気につまらなくなったのか、三奈ちゃんはブーブー言いながら着替えを始める

他のみんなも着替え始めているが、麗日さんだけは最後まで微笑ましい眼差しでわたしを見ていた。すごい、むず痒い…





「 ごめん、先生に呼ばれてるから 焦凍、先に帰ってて 」
「 待ってるけど… 」
「 多分、個性のことで話長くなるから先帰ってて! 」

戦闘訓練を終えて、あの地獄のような着替えも無事になんとか乗り越えて、帰ろうとしたところで 朝、相澤先生に呼ばれていたことを思い出した

不服そうにする焦凍を教室に残して、カバンを持って校長室まで。話が長くなる、なんて自分で言ったが憂鬱で仕方がない

嗚呼、校長先生にお会いするのは初めてだな、緊張する

制服を整えて、二回ノック

「 ヒーロー科1年A組蝕喰名前です 」

中から「 空いてるよ〜〜 」なんていう呑気な声が聞こえて少しだけ拍子抜け。扉を開いて中に足を踏み込めば、そこには相澤先生と、良いベストをきたネズミがいた。おそらく校長先生だろう…

「 やあ、初めまして蝕喰さん! 校長の根津だよ よろしくね 」
「 よろしく、お願いします 」
「 立ち話もなんだし座って!相澤くん、蝕喰さんにもお茶を入れてあげて 」
「 お気遣いなく…… 」

そう言ったものの、茶柱が立ったお茶を用意されてしまった…

「 さて、もう少しで体育祭があるの、知ってるよね?君も我が校の体育祭を見たことがあるかい? 」
「 あります、毎年中継されていますし… 」
「 君の雄英入学に当たって、エンデヴァーの方から3つの条件を出されていたんだ、知ってるかい? 」
「 ……いえ、そこら辺は炎司さんが学校側と話し合っていたので… 」
「 ひとつ、ヒーロー科に籍を置く以上、普通の生徒同様ヒーローの資格を取らせ、同様に扱うこと。ふたつ、3年間 エンデヴァーの息子である轟焦凍と同じクラスで過ごさせること。そしてみっつ、テレビの取材等がくる学校行事には参加させないこと、… 」
「 、… 今日、呼び出したのはそれをわざわざ伝えるため、ですか? 」
「 君には悪いと思ってる。ただ君の過去の罪が消えるわけではない。テレビとかに映ってしまって、掘り返されてしまうのも嫌だろう?君にとっても、… 」
「 ……… ほんとうに、監視なんですね。生きづらい世界だなあ… 」
「 …… 雄英の保護下にいる以上、エンデヴァーと約束した以上、必ず我々教師が君のことを守ると約束するし、他の生徒と同様に扱うことも約束するよ… 」
「 ッ失礼します 」

出されたお茶に口をつけず、カバンの紐を乱暴に掴んで 音を立てて扉を閉めた、

長い廊下が嫌で嫌で、
無意識に走り出していた

手の震えが止まらない、
息が上手く吸えない、
涙を堪えきれない、

「 ふ、…ぅう…… 」

わたしより危険な個性の人だって、たくさんたくさんいるのに、…

さっきのあの言い方、炎司さんから約束をされなければ、他の生徒と同じようには扱わなかったってこと?

どうしてわたしだけ、こんな監視されないといけないの…? 昔に犯した罪は消えない? 誰も、助けてくれなかったのに、都合のいいこと言わないで、……

わたしは、わたしが、なりたいと思うヒーローになっちゃいけないの?

「 ッなん、でぇ…… 」