向かって左の二人A
リドルがあの子を見つめていた時は、少しドキッとしてしまった。
あの子は、自分のものにしたい。
そんな欲が、アブラクサスの中で顔を出し始めていた。まだ話した事すら、ましてや接点すら無いというのに。
……どうかしている。
そう思っても、気づけば少女を目で追っている自分がいた。
「リドル、彼女と親しげな二人が誰か、分かるかい?」
アブラクサスがそう問えば、リドルはああ、と短く返した後に続けた。
「クロムウェルの双子だろう。男の方がクリストファー・クロムウェルで、女の方がシャーロット・クロムウェル。僕と同学年だ。」
そうか、と短く返し、アブラクサスは黙ってしまった。
リドルがチラと見ればーいや、見なくてもわかる程に、アブラクサスの雰囲気は妖しくなっていた。
「……殺人事件は起こさないでくれ。」
そう呟いたリドルに、にこり、と微笑みを向けて言った。
「はは、まさか。」
そう答えつつ、アブラクサスは考えていた。
あの双子がスリザリンや自分を警戒していたら、厄介だ。
双子が居ないタイミングを見計らわねば。
アブラクサスはそう心に決め、水の入ったゴブレットを手に取った。