焦る先の闇
(3/5)
観世音菩薩より賜った命は、この悟空という生命体の調査であった。我々と何が違い、何処が同じなのか、そして天界人を脅かし得る危険因子の有無。それを可能な限り調査せよとの事だった。
「では、悟空はそこの椅子に座って下さい」
「うん!」
悟空は私の一挙一動に興味を示してはいたが邪魔するような事は一切せず、終始私の言葉に素直に従ってくれた。しかし、ドア横の壁に寄りかかってその一部始終を見ていた金蝉童子は、私を鋭く監視している様に思えて仕方がない。
「はい、これでおしまいです。お疲れ様でした」
「えー、もう終わりー!?俺、もっとやりたいー」
外見より随分と幼い彼に思わず目を細めると、金蝉童子が腕を組んだまま鋭い目をして口を割る。
「この件の報告書が出来るまでどれくらいかかる?」
「……簡易的なものなら小一時間ほどですが、詳細は早くて明朝になります」
「……そうか。ならばここで待たせてもらう」
その言葉を聞いて、嫌な汗が伝うのがわかった。観世音菩薩からの命によるものか、金蝉童子の独断によるものなのかは解らないが、私は動向を探られているのだろう。
私の過ちを知っていれば懸念も当然だが、李塔天に見つかる事だけは何としても避けたい。
「金蝉様をこのような所でお待たせする訳には参りません。簡易報告書が出来上がり次第、お部屋にお持ち致しますので」
焦りで口調が早まってしまった気がするが、金蝉童子は私を一瞥してから悟空を連れてこの部屋を後にした。
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