遠い極限
(4/7)
私はまたあの画面に向かう。
私の罪により強制的に生み出された者達は、下界に落とされ闘神ナタク太子によって討伐される。それは、李塔天様の地位向上の為だけに繰り返し行われていると知る者は少ない。
そう、少ないだけで知る者は居る。
きつく唇を結び、安息など不要だと言わんばかりに画面に向かう。これが成功すれば、少なくとも李塔天様は今までの様に立ち行かなくなるはずだ。
あの方さえ足止め出来れば、あの造られた者達も、ナタク様をも解放して差し上げられる。そして、その全てを終えた暁には、私自身をも解放されるのだ。
「白羅ー!白羅は居るか?」
時間を忘れ画面に向き合っていると、いつかの様にナタク様が私を呼ぶ。どうやら下界での討伐が思ったよりも早く終わったらしい。
「はい。ここにおります」
急いで続きの間である応接室に移動する。もちろん、その時にはしっかりとあの部屋への施錠も忘れない。
「お帰りなさいませ。ご無事でなによりでございます」
「ただいま。ありがと」
少し照れくさそうにそう言ったナタク様は、ソファーにドサッと身体を預ける。そして大きく息を吐いたかと思えば、何かを思い出したかのように目を輝かせた。
「そうだ、この前言ってたアイツのことなんだけどさっ、これから城を案内しようと思うんだけど、白羅も一緒に来ないか?」
「その方とは悟空、の事でございますか?」
「なんだ、知ってたのか?」
悪戯が失敗したかのようにナタク様はがっかりした様子で、こんなにも素直な反応を見せてくれることに喜びを感じつつも、私はしっかりと警戒することだけは忘れなかった。
「観世音菩薩様と金蝉様よりご紹介に預かりました。とても素直な方でしたので、私でよろしければお供させていただきます」
「ほんとかっ!」
身を乗り出してはしゃぐナタク様に、私は一呼吸置いてから言葉を紡ぐ。
「しかし、遊んでいる所を見付かるとお咎めを受けるかもしれません」
「……まぁ、確かに」
ナタク様に水を差してしまうのが心苦しいが、なんとしてでもこれだけは避けねばならない事がある。
「なので、そこだけはお気をつけてお遊びください」
言外に、それだけに気を付ければ自由なのだと匂わせると、聡いナタク様はすぐに破顔した。
「さっすが白羅!」
この笑顔が見られるのはいつまでだろうか。いつの日にか、きっとそのお顔を曇らせてしまうであろう私が言える立場でないのは重々承知の上。それでも烏滸がましくも思ってしまうのだ。
我が主が、穏やかでいられますようにと。
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