不浄なる者

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持て余しすぎる時間の中で、本来なら負傷者の治療や天界人の健康管理が軍医である私の公務にあたるのだが、この死の存在しない天界ではここを訪れる天界人も滅多に居ない。

潰し切れない暇な時間。
それが総ての価値を軽減していくようで苦痛だった。

幾日も幾日も適当な書物に目を通し、誰の出入りも無い部屋で一人だった私は、下界史を読んでいたある時ふと疑問に思ったのだ。


人と妖怪、そして我々天界人。その呼び名の違いは何なのか。


そんな疑問が思い浮かんだ私は久しぶりに清々しくなった。

これで暫くの間は暇が潰せる。



長きにわたり覗かせずにいた私の好奇心は存分に刺激され、制限される事の無い時間も手伝いのめり込んでいく。


好奇心から探究心へ。
この時ばかりは悠久の時を与えられた事に感謝した。


「近頃顔色がいいな」

「はい、おかげさまで」


公務の為に時折訪れるこの人物にそう声を掛けられ言葉を交わす。


「何よりだ。やはり以前始めたというあの研究のおかげか?」

「……研究だなんて何処からお聞きになったんですか?大袈裟ですよ。ただの暇潰しなんですから」


社交辞令と解りつつも、滅多に人の来ないこの場所にいると、それでも他人の気遣いについ嬉しくなる。


「そうか。ならば次ここへ来た時、その"暇潰し"とやらを私にも聞かせてもらいたいものだな」



そう、ただの暇潰しだった。そして、それが総ての元凶の始まりだった。




「勿論ですよ。──李塔天様」


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