Luxury

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ブロロ―。


いつもの様にジープで西を目指す三蔵一行。
しかし、今日はいつもと何かが違った。悟空も悟浄も大人しい。理由は何となく解ってるんだ。茄陳の街で蜘蛛女と戦った後からだ。


あの時、朋茗という女の子が叫んでた。


『妖怪なんて大嫌い』


そして悟空と悟浄と八戒の事を妖怪だと言った蜘蛛女。


あの時の悟空、泣きそうだった。


わたしが悟空と悟浄を交互に見やり溜め息を吐いた時、悟空が呟いた。


「なまえ、俺の事、嫌……」

「馬鹿?」


悟空の言葉を遮り、わたしは思いっきり睨み付けた。


三蔵を覗いて皆が妖怪だって事はとうに知ってたよ。なんたって"西遊記"そっくりだからね。


しかし悟空は金目を曇らせたまま言葉を紡ぐ。


「恐く無いのかよ?」

「こっちはね、妖怪より恐い人間を五万と知ってるんだよ」


わたしは悟空の頭をくしゃっと撫でた後、握った拳を振り落とした。


――ゴンッ!


「いでっ!何すんだよっ」


わたしの行動に目を見開く四人。


「わたしの知ってる悟空はいつだって悟空だよ。意味解る?」


暫く考えた後、悟空は『解んねー』と眉間に皺を寄せる。


「大好きだよ。悟空」


初めて話し掛けてくれた事とか。いつも真っ直ぐな目で見てくれる所とか。人懐っこくて、相手を思いやれる所とか。

こんなわたしに『嫌い?』なんて聞いちゃう所とか。差し伸べられた手だとか。


一緒に居てくれるだけで嬉しいのに。


ちゃんとわたしの名前を呼んでくれるだけで泣く程嬉しいのに…。


嫌い?なんて聞くなよ。


わたしが今こうしていられるのが、どんなに贅沢な事か解ってんのかな?


「なまえ!」

「うわっ!」


わたしに抱き付いた悟空の目は金色で、わたしには眩しすぎる程澄んでいた。


そのまま悟浄を見上げるとにっこりと微笑んでいる。


『悟浄もだよ』と、声には出さなくても解ってくれるだろうか?



妖怪とか人間なんて狭い世界の事じゃない。

わたしをわたしと呼んでくれる、感謝しきれないこの思いを。





ブロロ―。


ジープのスピードが心なしか速くなった気がする。ミラーを覗けば八戒が目を細めている。


視線を左に移せば三蔵が、ちゃんとわたしを見てくれている。


「わたし、贅沢してんな……」


しかし、ポロリと漏らした言葉は妖怪の襲撃によって掻き消された。


「せっかくいい気分だったのにな、俺」

「邪魔すんなよーっ」

「……だったらさっさと片付けろ」

「皆さん、ちゃんとノルマは果たしましょうね」

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