残るは虚無
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「……やめてよ」
俯きながら呟いたなまえは顔を歪ませ、床の一点だけを見ている。
「……どいつもこいつも汚いんだよ」
なまえは頭や手足、首筋にまで爪を立て、それは徐々に皮膚を削り取って血を滲ませる。
妖怪に噛みつかれた首筋の包帯も朱に染まった。
「おまえっ、何してやがるっ!」
なまえの異様な行動により少し冷静さを取り戻した三蔵が駆け寄り、なまえの手を掴み取った瞬間……。
「触るなっ!触るな触るなっ!」
差し伸べる手を自ら振り払い、なまえは必死で自我を保とうとしていた。
「落ち着けっ!」
踏み込まれれば遠ざかってしまうと痛いほど知っていたのに、初めから境界線を引いておけば良かったのに……。
相容る事を拒むなまえを三蔵は振り解けない程強く抱き締めた。
「……やめてよ。わたしの事、何にも知らないで触らないでよ……」
周りは全部敵に見えた。いや、正確には敵だった。
いつからか……。
甘える事を忘れ媚びる事を覚え、心を通わせる事を忘れ体を交える事を覚えた。
思いやりや優しさ、ましては愛など微塵も無い。
「……蟲が這い回るんだよ」
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