Go to the West

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宿に着くと、なまえの鼻腔を血の匂いが掠める。ふとみれば悟浄の腕がパックリと裂けていたのだ。


なまえは菩薩にもらったケースと共に悟浄の前に座った。


「悟浄、嫌じゃなければ手当てするよ?」

「何言うの。もち、お願い」

「うん。じゃちょっと座って」


そう言って消毒や縫合するなまえはそこらの医者より断然上手い。


「なまえ、医者じゃ無ぇって言ってたよな?」

「うん。両親は医者だったから、後々のために毎日勉強させられてた。ま、両親が死んでからは久しぶりだし……。よし、出来た」


「久しぶりだ……し?」


なまえの消えた語尾に嫌な予感がした悟浄は聞き返した。


「……人にしたのは初めてだよ」


そう言ってなまえはバスルームに消えていった。



「なまえって一体何もん?」


悟浄の問い掛けに答えは返ってこなかった。



耳を澄ませばバスルームから水音が聞こえ、頭には在らぬ妄想がよぎる。しかしそれを掻き消しながら八戒が口を割った。


「なまえ、どこで寝てもらいましょうか?」


ベッドは四つ。ソファーも無い。必然的に一つのベッドは二人で使う事になる。


又しても良からぬ妄想に思考を乗っ取られる四人。


「じゃあ俺が……」


――スパーン!


悟浄が言い出したと同時に三蔵のハリセンが飛んでくる。


「何すんだよ糞坊主!」

「寝言は死んでから言え。エロ河童」

「まぁまぁ、落ち着いて。なまえに決めて貰えばいいじゃないですか」

「あーハラ減った……」


この緊張感の無いやり取りをしていると、いつの間にかなまえがそこに立っていた。

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