壊したいんだ
(6/7)
悟浄はそれからすぐに目覚めたが、八戒は中々目を覚まさなかった。
辺りには濃い霧。
悟空も帰ってこない。
そしてわたしは三蔵の命令のもと、悟浄と二人で悟空を探しに行く事になった。
一歩踏み出せば、すぐに周囲を霧が隠してしまう。
「視界、30センチも無いじゃん」
「じゃなまえちゃんは半径30センチ以内に居てね?」
普段なら突っ込みどころだが、今は忘れてあげよう。
しかし寄り添って辺りを見渡しても、そこには霧、霧、霧、霧。人影なんて見えもしない。
二人で同時に煙草を取り出して霧の中に紫煙を撒き散らす。悟浄の煙はわたしよりずっと高い所から揺れていて、それが何だか不思議に思えた。
「何?見とれちゃった?」
「自意識過剰の男ってモテないんだよ?」
「う〜ん、厳しいねぇ」
高さの違う紫煙が絡まってひとつになる。それがとても不思議な光景に思えた。
その内辺りの霧は一段と濃くなり、隣に居る悟浄の顔さえぼやけて見える。これも清一色の仕業かもしれないと思うとゾッとする。
「悟空は何処行ったんだよっ!」
辺り一帯の捜索を終え、洞窟の入り口の前に来ると三蔵と八戒の声が聞こえる。
わたしは報告を悟浄に任せ、入り口に座り込み悟空を待った。
その内に三蔵と悟浄が出てきて何かを話していたが、わたしはただアイツの事を考えていたから話の内容は解らない。
ただ、皆アイツに苛立っていたのは確かだけど。
──その時、わたしはまたアイツの殺気を感じた。
ジリジリと傷口が疼き、異常なほどに渇いた喉からは声すら搾り取られたよう。
そのほんの一瞬、そのほんの一瞬の間にわたしはアイツに掴まった。
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