見くびるんじゃねぇよ

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優しい緑色の瞳で苦笑した八戒は、綺麗な手でわたしの傷口に触れる。そして申し訳なさそうに小さな声で呟いた。


「迷惑をかけてしまいましたね……」

「ま、結果オーライじゃない?」


三蔵の名演技も見れたし、悟浄も悟空も無事だった。何より八戒が八戒で居てくれる。



「傷跡……、残ってしまうかもしれませんね……」

「いいんだよ。もう商売道具じゃないしさ」


遠くで悟浄と悟空がじゃれる声が聞こえる。三蔵は胡座をかいて新聞を読んでいるし、八戒の手が震えている事以外いつもと変わらない。


そこに風がさらさらと通り抜け一瞬の沈黙を置いていくと、八戒は静かに前を向いた。



「なまえ、聞いてくれますか?」

「何を?」



───僕の罪を、僕が愛した人の事を、僕の過去を。


ゆっくりと、ひとつずつ紡がれる遠い昨日の出来事を、静かに流れる僕となまえの時間の中に。


何も知らずに傷付いたなまえは笑って聞いてくれて、そんななまえに安らぎを感じた僕はいつの間にか心が綻んだ。


なまえが何も言わずに笑って聞いてくれるから、僕は温かい涙を隠すのが大変だったんです。






「……そっか。なまえちゃんに話したんだ」

「ええ。何も知らず巻き込まれただけなんてあんまりです。……それに、なまえには言っておきたかったんです」

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