眠れぬ夜の物語

(2/7)
『会いに来てよ』



毎夜、空に向かって念じてた。あんたがどこから見てるか知らないけど、あんたに話があるんだよ。


あんたに聞きたい事があるんだよ……。



「何が聞きてぇ?」



それは何度目の夜だったか。
月が雲に隠れていた長い夜。わたしの心の声が届いたのか、僅かに空気を巻き上げて現れたわたしの待ち人。



「……すんげー時差でございますなー」


わたしは手にしていた銃と医療器具の入ったケースを抱えたまま、目の前で笑う菩薩を見上げた。



「神様だって暇じゃねーんだよ」



身に纏った僅かな布を風に揺らしながら、そう言ってゆっくり近付いてくる菩薩。



「なら手短に聞かせてよ……」

「何だ?」



しばし訪れた沈黙。わたしはその見つめ合った間の沈黙を吹き飛ばすかの様に息を吐き出し空を仰いだ。



「わたしについて知ってる事教えてよ」

「……フン、とても一夜じゃ語れねぇな」



雲が全ての明かりを飲み込んでいる為か、菩薩の表情は解らない。だけど菩薩が顔を背けた事から、話したく無いといった意思表示なんだと思った。


「知ってんなら教えてよ……」


静かに吐き捨てた言葉に菩薩は呟く。



「知ってどうなる訳じゃねぇだろうよ」

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