眠れぬ夜の物語

(3/7)
忘れる為に聞くのか?

断ち切る為に聞くのか?

頼むから、思い出させんじゃねぇ。




葉の擦れる音がやけに耳障りで、過去に呑まれてしまいそうな夜に、なまえは俯いて言葉を紡いだ。



「あんたの真意を教えてよ……」

「それ以上は、言うな」


たまらず上空を見上げれば、雲間から月が顔を出し啼いているようで、嫌でもあの夜を思い出す。

知らなかったんだろ?必死だったんだろ?必要とされて、嬉しかったんだよな……?



「わたしが……」

「煩ぇんだよ!」



五百年もの時を経ても、お前はまた同じ事を言うのか。この何にも出来ない俺に、あの時と同じ様に……。


「……忘れろよ」



それは紛れも無く自分に向けた言葉。今もあの夜の出来事を繰り返してる様で、無意識の内に拳が震えている俺自身への言葉。


「忘れんのと無かった事にすんのは違うじゃん……」


独り言の様にそう漏らしたなまえ。



「勘違いしないでよ?確かに今更真実を知ったってどうなる訳もない。だから、菩薩の真意が知りたいんだ……」




重なって見えたお前の最期は、俺のただの現実逃避なのか?



ここに居るのはあの時のあのお前じゃなく、"なまえ"なんだよな?

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