眠れぬ夜の物語
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『お願いがあるんだよね』
『───何?おじさん』
その時手渡したのは紛れもない自分の未来。
長い長い夜に紡がれる幼いあの日の出来事。
思い出す度に清一色に撃ち抜かれた肩口が疼くから、知らぬ間に傷口を押さえてた。
鬱陶しくて仕方ない。
──旅してんのに邪魔なんだよ。
わたしがそう呟くと、菩薩は儚い笑みを向けた。
知りたかったのは、菩薩の真意。全てを知った上でわたしを助けてくれたのか。
──俺自身の罪滅ぼし。助けたかったのは俺自身。
向かい合った菩薩は伏せた目を一瞬だけ震わせ、その姿からはいつもの様な威厳も威圧感も感じられない。
「……元の世界に帰りたいか?」
「はっ?今更冗談やめてよね」
どんな理由であれ、知った上で連れ出してくれたんでしょ?
足枷だらけでゴミにさえ憧れた毎日と、泣く暇も無い程に啼いてた日々。抜け出したいと思っても、あの夜に追いかけられて、夜に見る夢が恐かった。
沢山の柵に打ち勝てなくても、自分の過ちが負ける事を必死で拒んだ。
菩薩、あんたは本当に神様だったよ。
「本当にここは"桃源郷"だよ」
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