眠れぬ夜の物語
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「何だ、それならもう大丈夫だよ」
わたしがそう答えると、八戒は一段と表情を歪に崩す。
「でも傷跡が残っ………」
「八戒っ」
わたしは八戒を真っ直ぐ見据え、大きく息を吸い込んだ。
「誰かさんの言葉を借りるなら、見くびるんじゃねえよって感じ?」
少し意地悪に八戒を見やりそう言うと、八戒は目を丸くして笑った。しかしその柔らかな空気は直ぐに流れて沈黙を置いていく。そしてその沈黙は八戒によってゆっくりと破られた。
「……まだ夜は眠れませんか?」
煙草に伸ばした手が思わず止まる。
「……ごめん」
僅かに震える声でそう呟くと、八戒はにっこり笑った。
「いいんですよ」
──まだまだ旅は始まったばかりですから、ゆっくり眠れる場所を探して下さい。
「ありがとう……。でも、これを言う為にわざわざ?」
すっかり冷めたお茶に落としていた視線を八戒に向けると、八戒は目を細めながら頷いた。
「皆さんの体調管理も保父さんの役目ですからね」
そう立ち上がった八戒は上品に欠伸をしながらベッドへ潜り込んだ。
そしてそれに倣うようにわたしもベッドに潜り込み、ゆっくりと目を閉じてみる。
真っ暗闇。
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