Good Night
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十分程走っただろうか。次第に妖怪達の気配が感じられるようになり、三蔵は銃を構え辺りを見渡すと、なまえは必死に林の中を駆け回っているところだった。
「こら待て!死にてーのか!」
「煩いっ!じゃー諦めろ!」
あらかたなまえを人質にでもして経文を奪うつもりなのだろう。あちこち怪我をしてはいるが、どうやらなまえは無事のようだ。
小さな安堵に大きな溜め息を吐きながら、三蔵はなまえの側に駆け寄り妖怪達に銃を放つ。
──ガウン!ガウン!
「さ、三蔵っ!」
余程極限状態だったのか、なまえは一掃された妖怪達を前に、突如として現れた三蔵に何とも無防備な顔を向ける。
「お前……なんて面してやがる」
「だって……弾は切れるし……死ぬかと思ったし……」
身体中には妖怪達の爪痕が痛々しいが、それでも痛いなどとは口にしないなまえはそこまで言うと俯いた。
「フン、死ぬのがそんなに恐いならもっと精進するんだな」
「……違うよ馬鹿」
置いて行かれると思ったんだよ……。そう静かに言い放ったなまえが背を向けた時だった。急所を僅かに外れたのか、一匹の妖怪が最期の力を振り絞りなまえ目掛けて小刀を投げ付けようと腕を振り上げた。
「なまえ……っ!」
三蔵の声がして振り返ったなまえの耳には、何かがザクッと皮膚に刺さる音がはっきりと聞こえ、突然前のめりに倒れ込んだ三蔵に恐る恐る手を伸ばす。
「三……蔵?……三蔵!」
「煩ぇ……傷に……障る……だろうが」
ふと三蔵の背を見れば小刀が突き刺さり、みるみると法衣を真っ赤に染めていく。
「……庇った……の?」
「調子に……乗んな……。身体が勝手に……動いただけだ……」
ハッとし小刀を投げ付けたとみられる妖怪に目をやれば、既に息絶えていたが、三蔵の傷口から溢れる血液になまえの不安は煽られた。
「三蔵、とりあえず応急処置する。……少し我慢して」
こんな時に医療ケースを忘れてくるなんて……。
なまえは携帯用にと腰に付けていた医療ポーチをまさぐり、必死で今出来る限りの事をする。
止血剤や抗生剤など、少ない手持ちの中で最善の処置をと、なまえは過去に得た知識をフルに働かせた。
「とりあえず……よし。三蔵、大丈夫?」
「……当たり前だろ……が」
その後、なまえは三蔵を支えながらなんとかジープまで辿り着くと、異変に気付いた八戒が直ぐさま近くの町までジープを走らせた。
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