Good Night
(5/7)
──あいつがあんな無防備な顔を向けるから気が抜けちまったんだろうか。
倒れ込む俺を支えたあいつは震えていたってのに、手当てをしている時の手には安心感さえ覚えた。
「……んぞ、……三蔵っ」
朦朧としていた意識を呼び起こすように、目を開ければ隣でなまえが俺を呼んでいた。
静かに周りを見渡せばどこかの宿らしく、外はもう日が暮れていたが、目が覚めれば覚めるほど安物のベットの感触が痛覚を刺激する。
「三蔵、……大丈夫?」
「当然だ」
良かったと、今にも椅子からずり落ちそうなほど脱力したなまえを見て、こいつより先に逝ってたまるかと思った。
「三蔵……ごめん……」
あれだけの事で責任を感じてるようじゃ、先が思いやられる。
「黙れ。貸しがひとつ増えただけだろうが」
「……どこの世界でも借りばっかりだ」
「フン。死ぬまでに返せ」
俺がそう言うと、目を見開き直ぐに俯くお前に、手を伸ばしたくても、この傷の痛みが躊躇わせる。
癒せるのか、忘れさせられるのかと、嫌に現実味を帯びてくるこいつの痛みは、今言った言葉を解ってくれてんのか。
「なまえ、手を貸せ」
未だ俯いたままだったなまえをわざわざ手伝わせて身体を起こし、そのままなまえの腕を掴み取ると、咄嗟のことに驚いたのかなまえは遠慮がちに俺を見た。
「フン。……知ったことか」
「……えっ?」
何を投げ掛けても返って来ねぇなら、奪い取ってやるまでだ。
なまえの唇を強引に引き寄せ、傷の痛みが解らなくなるまで舌を絡ませた。
不思議な事に、熱くなるほど頭の中は冷静になっていき、静まり返った部屋に漏れる吐息に満たされていく。
「んっ……三……蔵っ」
なまえは苦しげに顔を離し俺を睨み付ける。そして呆れるほど解りきった質問を浴びせてきた。
「……いきなり何?」
「したかったからしたまでだ。悪いか?」
「ふざけん……」
「ふざけてんのはお前だろうが」
ごちゃごちゃしてて解り難いんだよ。だからこそ迷い躊躇ってきたが、もうてめぇの事なんて知ったこっちゃねぇ。
「さっきの貸し、今すぐ返せ」
「はっ?何言って……」
「黙れ。てめぇが俺に返事するだけでチャラにしてやるって言ってんだ」
「だからなんなの?」
「……好きなんだよ」
一生、置いて行ったりしてやらねぇよ。
どんな答えでも、返ってくるまで離しはしない。そう無言でなまえを見据えた。
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